加速する「親子上場解消」…今後も減少傾向は続くのか?

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●日本でよくみられる親子上場には、親会社と子会社少数株主との間の利益相反という問題がある。

●親子上場は企業統治上問題との指摘もあり企業側が解消に動くなか、数は着実に減少している。

●親子上場は減少継続へ、解消の際、子会社価格が市場を上回ることもあり多くの投資家が注目。

日本でよくみられる親子上場には、親会社と子会社少数株主との間の利益相反という問題がある

親子上場とは、親会社とその子会社が、ともに株式を上場していることをいいます。日本ではよくみられる形態ですが、海外では多くありません。実際、経済産業省の資料によれば、親子上場企業数(親会社が子会社の株式を50%以上保有)が市場に占める割合は、2018年12月時点で、日本が6.1%、フランスが2.2%、ドイツが2.1%、米国が0.5%、英国が0.0%となっています。

 

親子上場には、例えば、社内の新規事業を分離し、子会社として上場させ、成長を促すという利点もあります。ただその一方で、親会社と、子会社の少数株主との間には、利益相反の関係が発生します。親会社は、子会社の総株主議決権の過半数を有し、子会社の財務および事業の方針について、決定を支配しています。そのため、親会社の利益が優先され、その結果、子会社の少数株主の利益が損なわれる恐れがあります。

親子上場は企業統治上問題との指摘もあり企業側が解消に動くなか、数は着実に減少している

親子上場について、海外投資家からは、親会社が支配的な立場を利用することもあり、企業統治(コーポレート・ガバナンス)上、問題があるとの声も聞かれます。このような状況下、企業側にも、親子上場の解消によって、コーポレート・ガバナンスを強化し、経営効率を高めようとする動きが顕著にみられるようになり、近年、親子上場の数は着実に減ってきています。

 

親子上場の解消について、最近の動きをまとめたものが図表1です。ホンダは2019年10月、ケーヒンなど3社の完全子会社化を発表しました。その後は、日立の完全子会社である日立オートモティブシステムズが、この3社を吸収合併することになります。このような動きは、単なる親子上場の解消ではなく、自動運転や電動化など次世代の潮流を見据え、主力部品での国際競争力強化を目的とする、異業種間の連携といえます。

親子上場は減少継続へ、解消の際、子会社価格が市場を上回ることもあり多くの投資家が注目

なお、政府や証券取引所も、親子上場の見直しを促す動きを強めています。政府は2019年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」のなかで、親子上場の問題を取り上げ、上場子会社のガバナンスのあり方を示す指針などを公表しました。これを受けて、東京証券取引所は同年11月、上場子会社の親会社からの独立性を高めるため、上場制度に関する規則を改定すると発表しました。

 

現時点で親子上場となっている主な企業は図表2の通りです。大きな流れとして、今後も親子上場の解消が続く可能性は高いと思われます。なお、親子上場の解消方法としては、株式公開買い付け(TOB)などを通じた完全子会社化による上場廃止や、他社への売却があります。いずれの場合でも、子会社の価格が市場価格を上回ることがあるため、多くの投資家が親子上場解消の動きに注目しています。

 

(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]最近の親子上場解消の動き (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)2020年1月22日時点で子会社の時価総額の大きい順。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]主な親子上場企業 (注)2020年1月22日時点で子会社の時価総額の大きい順。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『加速する「親子上場解消」…今後も減少傾向は続くのか?』を参照)。

 

 

(2020年1月23日)

 

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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