国内案件「1000億円超」続出、ソフトバンクが主役に
上場企業が義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介大手のストライク(M&A Online)が集計した。
取引金額が1000億円を超える大型M&Aはクロスボーダー(国際間)案件を中心に22件あり、件数は前年(20件)と大差なかったものの、その内容に大きな変化が見られた。国内企業間で1000億円を超える大型案件は前年1件に過ぎなかったのに対し、2019年の場合は9件に急増した。
金額ランキング上位には国内案件が並んだ。2位の昭和電工に続き、3~4位はソフトバンク絡み。ソフトバンクはポータルサイト大手のヤフー(現Zホールディングス)を子会社化(19年6月)し、次にそのヤフーは衣料通販サイト大手のZOZOを子会社化(同年11月)した。ヤフーと無料通話アプリ大手のLINEは19年11月、20年10月に経営統合することで基本合意した。ソフトバンクが昨年のM&A市場で主役を演じたといえそうだ。
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ユニゾは従業員買収の「奇策」
ホンダはショーワなど自動車部品メーカー3社をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化することを決めたが、このうち2社は買付金額が1000億円を超える。ホンダは日立製作所と双方の系列部品メーカーを経営統合することになっており、TOBはその一環。
TOBで最も注目されたのは不動産・ホテル業のユニゾホールディングス。同社は昨年12月、従業員による買収(EBO=エンプロイー・バイアウト)を実施して非公開化すると発表した。従業員と米投資ファンドのローン・スターが出資する新会社がユニゾにTOBを行い、全株取得を目指すもので、買付代金は1700億円超。別の米投資会社によるTOBに対抗する“奇策”だが、EBOは上場企業初とされる。
同じく昨年12月、東芝グループの半導体製造装置メーカー、ニューフレアテクノロジーに対するHOYAのTOB計画発表は、親子上場解消を目的に東芝のTOBが進行中だっただけに物議をかもした。東芝側のTOBが成立し、HOYAは計画倒れの結末を迎えた。
100億円超は68件…目立つ「豪」と「医薬」
取引金額が100億円を超えるM&A総数68件で、前年より8件増えた。68件中、クロスボーダー案件は40件と約6割を占めている。また、対象企業の国籍では豪州の台頭が目立つ。100億円超のM&Aで豪州案件は7件(売却1件含む)を数え、全体の1割強にあたる。人口増などを背景に市場拡大が見込まれるオセアニア地域での事業基盤を強化する動きとみられる。
業種別では製薬関連のM&Aが活発化している。アステラス製薬が遺伝子治療分野強化に向けて米バイオ企業のオーデンテス・セラピューティクスを3200億円で買収を決めたのをはじめ、大日本住友製薬、旭化成、富士フイルムホールディングスが米欧企業を相手に大型M&Aを相次ぎ発表した。アジアでは、大正製薬ホールディングがベトナムの医薬品会社を取り込んだ。
2019年のM&A総数は08年以来の高水準を記録した。取引金額は8兆1201億円と08年当時の1.6倍に膨らんだ。18年は武田薬品工業がアイルランドの製薬大手シャイアーを6兆円以上で、16年にはソフトバンクが英半導体設計会社アームを約3兆3000億円で買収し、取引金額を13兆~12兆円台に押し上げたが、こうした要素を考慮すれば、金額面でも過去最高圏内にあるといえよう。
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