世界を代表する観光都市になった「京都」だが…
前回、東京五輪が行われた1964年に日本を訪れた外国人の数はどれくらいか、ご存じだろうか。その数、352,832人。その後、100万人を超えたのは1977年、500万人を超えたのが2002年である。
2003年、国土交通省が中心となって訪日外国人の誘致活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」がスタートし、ビザの緩和などを受けて、外国人観光客は急増。2013年に1,000万人を、2016年には2,000万人を突破した。昨年は、日韓問題もあり伸び率は鈍化したものの、今年、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人という目標を掲げ、観光立国になることを目指している。
ちなみに外国人観光客が一番多い国はフランスで、その数は年間約8,600万人(2018年度)。以降、8,000万人台のスペイン、7,000万人台のアメリカ、6,000万人代の中国、イタリアと続く。10年後、日本はこれらの国と肩を並べようとしているのだ。
日本において、外国人観光客増加の牽引役となっている街のひとつが、京都。いわずと知れた、日本を代表する観光都市である。京都を訪れる外国人観光客は宿泊者数換算で、2013年に100万人を超え、2018年には約450万人(前年比127.7%)と過去最高を記録した。 世界の旅行市場に影響力を持つとされる米国の旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」の読者アンケートで7年連続ベスト10入りを果たすなど、いまや、世界の旅行者が憧れる観光地といってもいいだろう。
一方で、問題も山積している。街の規模以上に観光客が押し寄せる、いわゆるオーバーツーリズムが起き、交通渋滞や騒音、地域住民とのトラブルなどが増えている。あまりの混雑ぶりに国内観光客の京都離れが加速しているともいわれており、早急の対策が不可欠な状況だ。
このように諸問題はあるにせよ、投資家の間でも京都は注目の的となっている。そこで今回は、投資対象としての京都について考えていく。
「人口減少」と「都心回帰」が進む京都
京都市は京都府南部に位置する市で、人口は1,465,701人(2020年1月推計)。人口100万人を超えたのは1932年(昭和7年)で、戦争の影響で一時100万人を割るが、1947年には再び100万人都市となり、現在に至る。
京都は11の行政区で構成されているが、それぞれの区を簡単に見ていこう。
[北区]
金閣寺や大徳寺、上賀茂神社といった寺社のほか、立命館大学、佛教大学、京都産業大学など、いくつかの大学がある。
[上京区]
市の中心部に位置し、京都御所や北野天満宮などの名所のほか、京都府立医科大学や同志社大学などがある。
[左京区]
京都市の東北部に位置し、平安神宮や下鴨神社などの寺社のほか、京都大学や京都府立大学、京都精華大学などの大学がある。
[中京区]
京都市役所のある区。二条城やなどの名所のほか、花園大学などの大学がある。
[東山区]
清水寺や三十三間堂、八坂神社などの寺社のほか、京都女子大学などの大学がある
「下京区」
「京都」駅があり、四条烏丸から四条河原町までは京都市有数の繁華街を形成しているほか、龍谷大学大宮学舎がある。
[南区]
京都のなかでは名所・旧跡は少ないエリアだが、SGホールディングスやワコール、任天堂など、大企業の本社が多い。
[右京区]
嵐山や嵯峨野があり、11区のなかで面積は最大。龍安寺や天龍寺などの名所のほか、京都外国語大学などの大学がある。
[伏見区]
伏見稲荷大社などの名所のほか、京都教育大学などの大学がある。京セラなど、本社を置く上場企業も多い。
[山科区]
三方を山並に囲まれた盆地で、毘沙門堂などの名所のほか、京都橘大学、京都薬科大学がある。
[西京区]
山科区と同時に誕生した、京都市で最も新しい区のひとつ。京都市立芸術大学などの大学がある。
それぞれの区の人口動態を見てみる(図表1)。人口は、伏見区が一番多く28万人強、続いて右京区の20万人強と続く。人口密度で見ると、市の中心部を形成する上京区、中京区、下京区の3区が1万人/km2を上回り、京都市における人口密集地域となる。
また総人口に占める65歳以上の割合=高齢化率は市全体で27.5%(2017年度)だが、最も高いのは東山区で、山科区、北区の順になっている。これらの区で高齢化率が高いのは、都心回帰の動きによるもの。働き盛り世代は下京区など中心部に流入し、一方で高齢者層はその周辺の東山区などへと流出しているのだ。
次に京都の世帯について見ていこう(図表2)。単身者世帯が一番多いのは、下京区で3世帯に2世帯は単身者という状況で、上京区、東山区、中京区と続く。ただし、東山区は前述の通り高齢化率の高い区であり、高齢者の単身者世帯を除いて見てみると、下京区、上京区、中京区の順になる。
続いて、将来の人口推計を見てみよう(図表3)。2015年の人口を100とした際、京都市全体では、2030年に93.1、2040年に85.7と人口減少が続く推測。行政区ごとに見てみると、11区のなかで下京区の2040年の人口推計値が、対2015年で108.1、中京区が106.2と、人口増加が予測されている。黄色~橙で10%以上、緑~黄緑0~10%の人口増加率を表し、青系色で人口減少を表す将来人口推移のメッシュ分析で見てみても(図表4)、京都駅から見て北西エリアで人口増加が顕著で、京都において今後も都心回帰の流れは続くと見られている。
京都の住民は、10人に1人は学生
このように、京都では人口の減少トレンド、都心回帰の流れは今後も続くとされている。それでも京都は投資対象として見たとき、魅力が大きい。それは大学の数によるものである。京都は観光地としてのイメージが強いが、一方で学生の街としての側面をもつ。
全国の政令都市と比較すると(図表5)、京都の特異性が際立つ。東京は別格として、京都には39もの大学があり(短期大学含む)、14万人もの学生が学んでいる。総人口に占める学生の割合は、東京よりも高く10%。住民の10人に1人は学生という街なのである。
京都の学生の約7割は近畿圏の高校出身で、残り3割は地方の高校出身といわれているから、絶対的に4万人ほどの需要は見込めるというわけである。
しかし昨今は大学・短期大学での定員割れ(入学定員充足率が100%未満)が問題になっているとおり、若者をターゲットにした不動産投資は厳しいという向きもある。しかし全国的に見ても、京都の大学は,志願倍率・入学定員充足率ともに高い水準にある。学生においても「京都ブランド」は顕在なのだろう。京都で学びたいという学生は、今後も国内外、一定数は確保できるだろう。安定的なニーズが見込める京都の不動産は、今後も有望と考えられるのだ。