渋谷勤務の会社員が使える、13の「途中始発駅」
2020年がスタートして間もないが、すでに満員電車でヘトヘトになっている会社員も多いのではないだろうか。都心勤務の場合、通勤地獄から解放されるための方法は大きく2つある。ひとつが「会社の近くに住む」こと。もうひとつが「始発駅に住む」ことだ。前者であれば、そもそも電車に乗る必要がなくなる。しかし会社の近く=都心となり、家賃を考えると実現はなかなか難しい。後者であれば「座って通勤する」ことができるが、始発駅は大抵都心から遠く離れていることが多く、通勤時間がネックになる。
そのなかで注目したいのが「途中始発駅」だ。これは路線の始発・終着駅ではなく、途中から始発となる駅である。始発・終着駅を利用するよりも目的地までの所要時間が短くなるため、居住地選びの際には有力な候補地となるだろう。
居住地選びの条件は、大きく家賃、交通利便性、生活利便性の3つあるが、そのうち交通利便性において「座って通勤できること」を必須条件に掲げ、会社員にとって住みやすい駅(街)を考えていこう。
今回想定したのは、大規模な再開発が進む渋谷勤務の会社員。選択肢となる路線は、東急東横線、田園都市線、京王井の頭線、東京メトロ副都心線、半蔵門線、銀座線、JR山手線、埼京線、湘南新宿ラインの9路線となる。路線ごとに、平日7~8時台の途中始発駅を見ていこう。
■東急東横線
「横浜」と「渋谷」を結ぶ東急東横線は、「渋谷」から先は東京メトロ副都心線に、「横浜」から先は横浜高速鉄道みなとみらい線に乗り入れ「元町・中華街」に至る。横浜方面の始発は通常「元町・中華街」だが、途中始発駅となるのが「武蔵小杉」と「菊名」である。「武蔵小杉」は7時台に2本の各駅停車の始発電車があり、「渋谷」までの所要時間は26分、「菊名」は7時台8時台それぞれ4本の各駅停車の始発電車があり、「渋谷」までは36分。電車本数に4倍の差があるので、東横線で途中始発を選ぶのであれば「菊名」に軍配があがる。
■東急田園都市線
「中央林間」と「渋谷」を結ぶ東急田園都市線は、「渋谷」から先は東京メトロ半蔵門線に乗り入れる。「中央林間」方面の途中始発駅は「長津田」の一択となる。平日7~8時台には21本もの始発電車があり、急行を利用すれば37分ほどで「渋谷」に到着となる。ちなみに「中央林間」~「渋谷」の通勤時間帯の所要時間は47分(朝8時台、急行利用の場合)で、7~8時台の電車本数は26分。「長津田」は、始発駅と同等か、それ以上の利便性があるといえるだろう。
■京王電鉄井の頭線
「吉祥寺」と「渋谷」を結ぶ京王井の頭線の途中始発駅には「富士見ヶ丘」がある。7~8時台に16本の各駅停車の始発電車があり、「渋谷」までの所要時間は23分。一方、始発駅の「吉祥寺」から「渋谷」までの平日通勤時間帯の所要時間も23分(急行利用時)であり、井の頭線において途中始発駅のメリットはほとんどないといえる。
■東京メトロ半蔵門線
「渋谷」と「押上」を結ぶ東京メトロ半蔵門線は、「渋谷」で東急田園都市線、「押上」で東武伊勢崎線に接続する。途中始発駅となるのは「清澄白河」で、通勤時間帯に9本の始発電車がある。「渋谷」までは25分ほどだ。
■東京メトロ副都心線
「和光市」と「渋谷」を結ぶ東京メトロ副都心線。「和光市」から先は東武東上線と直通運転を行っているが、通勤時間帯では18本の電車が「和光市」を始発としている。通勤急行であれば34分で「渋谷」。途中「池袋」や「新宿三丁目」を通るなど、交通利便性の高い駅である。
■東京メトロ銀座線
「渋谷」駅が移設し話の東京メトロ銀座線は、「渋谷」と「浅草」を結ぶ。途中の「上野」では通勤時間帯に13本の始発電車があり、所要時間は30分ほどとなる。
■JR山手線
都心をぐるりと一周する山手線だが、「大崎」始発「渋谷」方面に向かう電車が7時台に7本あり、所要時間は10分。隠れた途中始発駅である。
■JR埼京線
「大崎」と「大宮」を結ぶ埼京線だが、8時台に1本だけ、「武蔵浦和」始発で「渋谷」にアクセスできる電車(東京高速鉄道りんかい線直通「新木場」行き)がある。所要時間は38分。
■JR湘南新宿ライン
「新宿」を経由し、東海道線、横須賀線、高崎線、宇都宮線が相互運転直通運転するJR湘南新宿ライン。中距離列車が多いなか、「大船」始発電車が3本ある。「渋谷」までは47分。
■西武池袋線、東武東上線、東武伊勢崎線
渋谷にアクセスする路線のなかで、副都心線は「小竹向原」で西武池袋線に、「和光市」で東武東上線に乗り入れる。西武池袋線の途中始発駅である「石神井公園」には、「渋谷」にアクセスできる始発電車が3本あり、所要時間は39分。また東武東上線の途中始駅「志木」でも3本の始発電車が「渋谷」にアクセスでき、所要時間は45分となる。
半蔵門線は「押上」で東武伊勢崎線に乗り入れ、「東武動物公園」では8時台に「渋谷」にアクセスできる2本の始発電車がある。しかし所要時間は93分、到着は10時を超えるので、通勤目的での利用は難しいだろう。
「長津田」と「和光市」…生活利便性が高い街は?
ここまでで13の途中始発駅が出てきたが、次にそれぞれ駅周辺の賃料相場を見てみよう(図表1)。当然、都心から離れれば離れるほど、家賃相場は下がる。「東武動物公園」の家賃相場は2万円台と、家賃を切り詰めたい会社員にとっては魅力的かもしれないが、座ることにこだわり通勤時間90分越えというのは、現実的ではない。
通勤時間帯の始発本数が10本を超え、途中始発駅としての利便性が高いのは「長津田」「和光市」「富士見ヶ丘」「上野」の4駅。しかし前述の通り「富士見ヶ丘」は途中始発駅としての優位性が弱い。
残る3駅の「渋谷」までの所要時間はいずれも30分台だが、山手線駅でもある「上野」の平均家賃の高さは、居住地選びの際にネックとなるだろう。ここで「上野」は除外し、「長津田」と「和光市」の生活利便性を見ていこう。
一人暮らしのライフスタイルを考えて、駅10分圏内の①コンビニエンスストア ②スーパー ③ドラッグストア ④ファストフード・ファミリーレストランの数から、生活利便性を比較する(図表2)。
「長津田」駅は神奈川県横浜市緑区にあり、東急田園都市線のほか、JR横浜線が乗り入れる。駅周辺に商業の集積は見られるものの規模は大きくない。駅の北口には大きなバスターミナルがあり、京都や名古屋方面に向かう夜行バスも発着する。また再開発の一環で28階建てのマンション「マークワンタワー長津田」が作られ、比較的規模の大きな「マルエツ長津田駅前店」が入る。スーパーの少ない長津田では重宝するだろう。
一方「和光市」駅は埼玉県和光市にあり、東京メトロ副都心線のほか、有楽町線、東武東上線も乗り入れる。最短「池袋」に13分、「新宿三丁目」に20分、「渋谷」に25分と、交通利便性の高さが魅力だ。そんな「和光市」で賃貸物件を探すのであれば、区画整備事業が完了し、商業の集積も進む南口がおすすめだ。「イトーヨーカドー和光店」の入る「和光ショッピングプラザ 」や、「サミットストアシーアイハイツ和光店」の入る「シーアイハイツショッピングセンター」など商業ビルが建ち、郵便局・金融機関のほか、飲食店も多く点在する。駅前で生活に必要なひと通りのものは揃うだろう。
スーパーや飲食チェーンの数の比較にしても、「和光市」の利便性は際立っている。さらに駅周辺の家賃相場の比較においても、「長津田」6.15万円に対して、「和光市」5.93万円と、コスト面でも「和光市」に軍配があがる。
以上のように、家賃、交通利便性、生活利便性の3つの要素から、渋谷勤務の会社員が「座って通勤できる住みやすい街」として「和光市」の優位性が抜き出ているといえるだろう。ただしダイヤ改正などで、途中始発駅の利便性は大きく変わる可能性がある。そのあたりも気を付けて、居住地選びの参考にしていただきたい。