「国際金融市場」の潮流~2019年の総括と2020年の展望

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●2019年は金融相場が米中対立の影響を緩和、株式などのパフォーマンスは極めて良好なものに。
●2020年も緩和的な金融環境がリスク資産の追い風に、投資マネーの利回り選好は継続を予想。
●ただ、過度に緩和的となれば相場過熱のリスクも、米中協議や米大統領選挙とともに注意が必要。

2019年は金融相場が米中対立の影響を緩和、株式などのパフォーマンスは極めて良好なものに

2019年の国際金融市場は、2018年に引き続き、米中貿易摩擦問題の影響を大きく受ける展開となりました。5月以降、米中の対立が一段と激しくなると、株式などリスク資産の価格下落が目立ちました。しかしながら、その後、米国やユーロ圏をはじめとする多くの国や地域で金融緩和が実施されると、景気や企業業績の見通しが悪化するなかでも、株式の相対的な魅力が高まり、株価が上昇する「金融相場」が形成されるに至りました。

 

このような緩和的な金融環境のなか、9月以降、米中貿易協議の進展期待が高まったことで、市場は総じてリスクオン(選好)の動きが強まりました。その結果、2019年の国際金融市場では、株式、リート、ハイイールド債券のパフォーマンスが極めて良好なものとなり、コモディティや国債も堅調に推移しました(図表1)。金融相場が、米中対立の悪影響を相当程度、和らげたと推測されます。

2020年も緩和的な金融環境がリスク資産の追い風に、投資マネーの利回り選好は継続を予想

次に、2020年の国際金融市場を展望します。現在の相場環境は、金融市場に余剰資金があふれる「流動性相場」であり、そこに金融相場が形成されている状況です。2020年も、この環境は変わらず、株式などリスク資産にとっては、強い追い風になると思われます。なお、2020年は多くの主要国で経済成長が緩やかなものにとどまる見通しで、低成長、低インフレ、低金利を背景に、投資マネーの利回り選好は継続すると予想されます。

 

また、ドル円については、年間の値幅が年々縮小しつつありますが、その傾向に著変はないとみています。その他、中東情勢については、米国が原油の純輸出国になったことで、原油価格の変動を通じた金融市場へ影響力は、過去に比べ低下する可能性が高いと考えています。また、新興国経済については、米国の利上げはしばらく先になるとみられることから、資金流出に直面するリスクは抑制されていると思われます。

ただ、過度に緩和的となれば相場過熱のリスクも、米中協議や米大統領選挙とともに注意が必要

2020年は、引き続き米中貿易協議の行方を見守る必要がある一方、時間の経過とともに米大統領選挙への関心も高まると思われます。米大統領選挙は候補が絞られるまで、しばらく材料待ちとなるため、目先、注目度の高い米中協議について、今後の想定される展開を図表2にまとめました。協議がゆっくりと進展する場合、相場が強気過ぎず、弱気過ぎず、ちょうどよい加減の「適温相場」が新たに形成されることも想定されます。

 

ただ、現状の流動性相場における金融相場に、適温相場まで重なる状況となれば、相場過熱への警戒も大切です。過度に緩和的な金融環境のもと、株価や物価に強い上昇圧力が加われば、市場が主要国の利上げを織り込み、世界的な長期金利の急騰、株式やリート、ハイイールド債券の価格下落という流れにつながる恐れもあります。2020年は、米中協議や米大統領選挙の行方のみならず、相場過熱のリスクにも配慮しておいた方がよいと考えます。

 

(注)世界国債、世界投資適格社債、米国ハイイールド債券、世界ハイイールド債券はICE BofAメリルリンチ・グローバルの指数。コモディティはロイター/ジェフリーズ国際商品先物指数。米国リートはFTSE/NAREITオールエクイティリート指数。世界リートはS&P世界リート指数。先進国株式はMSCI先進国株価指数。新興国株式はMSCI新興国株価指数。コモディティは米ドル建てリターン、その他は現地通貨建てトータルリターン。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]:2019年主要アセットクラスのパフォーマンス (注)世界国債、世界投資適格社債、米国ハイイールド債券、世界ハイイールド債券はICE BofAメリルリンチ・グローバルの指数。コモディティはロイター/ジェフリーズ国際商品先物指数。米国リートはFTSE/NAREITオールエクイティリート指数。世界リートはS&P世界リート指数。先進国株式はMSCI先進国株価指数。新興国株式はMSCI新興国株価指数。コモディティは米ドル建てリターン、その他は現地通貨建てトータルリターン。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。 (出所)各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米中貿易協議の想定される今後の展開 (注)個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
(出所)各種報道を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「国際金融市場」の潮流~2019年の総括と2020年の展望』を参照)。

 

 

(2019年12月27日)

 

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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