年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、子どもがいない夫婦と義姉の間で起きた相続トラブルについて、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

義父の相続で見せた、2人の伯母の強欲な素顔

A子さんとBさんは、結婚して20年が経っていました。2人に子どもはいません。結婚当初は、自然と子どもはできるだろうと考えていたそうです。しかし結婚して数年経ち、なかなか子どもができないことから病院へ行ったところ、2人とも子どもができにくい体質であることがわかりました。

 

治療をすれば、妊娠の確率は高くなる――。医者にそう言われたあと、夫婦で今後のことを話し合いました。Bさんには、不妊治療を続けて精神的に疲弊した友人夫婦がいました。そのこともあり、無理に子どもを考えなくてもいい、という決断を2人で下したのでした。

 

このことがきっかけとなり、夫婦仲はさらに強くなり、20年の結婚生活は楽しい事ばかりだったとA子さんはいいます。

 

「ただ問題をあげるとすれば、親戚づきあいですね」とA子さん。問題というのは、Bさんの姉のことでした。Bさんは5人兄弟の末っ子。上に、2人の兄と、2人の姉がいました。そのなかで、2人の姉とBさんは、ほとんど付き合いがありませんでした。きっかけは、10年前におきた、義父の相続だったそうです。

 

義父が亡くなったとき、義母はすでに亡くなっていたので、相続人は5人の子どもたちでした。義父はビジネスを起こし、成功していたこともあり、遺産は、貯金や不動産を合わせて数億円になったと聞いています。そして義父が残した遺言には、晩年、なにかと面倒を見てくれたBさんに1,000万円ほど多く残し、あとは4人で平等に分割するように、と書かれていました。そこに待ったをかけたのが、2人の姉です。

 

義姉①「そんなの不公平よ! Bがそんなにもらえるなんて」

 

義姉②「Bには子どもがいないんだから、そんなにお金、必要ないじゃない!」

 

そのようなことを言って、遺産分割はなかなか進みませんでした。「大きなお金が絡むことだから、何か、問題は起こると思っていたけどね」と、当時を振り返るBさん。何よりも許せなかったのが、2人の姉が、A子さんとBさんの間に子どもがいないことを、まるで悪いことであるかのように言ったことでした。

 

最終的に、遺産分割は義父の遺言書の通りに行われましたが、これがきっかけとなり、Bさんと2人の姉とは疎遠になったのです。

 

「私も2人には頭にきました。子どものいないことを、散々なじられましたから。意地が汚いところもちょっと……」とA子さん。そんな二人に、突然、不幸が訪れます。Bさんが亡くなったのです。

Bさんの遺産を嗅ぎつけて!? 2人の義姉から連絡が

Bさんは半年前にがんと宣告され、闘病生活を送っていたのです。50歳を前にした若すぎる死でした。心づもりしていたので取り乱すことはなかったA子さんでしたが、生涯のパートナーとの別れは、想像以上に辛いものでした。しかし、そうは言っていられません。A子さんは確信していました。近いうちに、2人の義姉から連絡が来ると。

 

Bさんの葬儀が終わったある日のこと。A子さんの予想通り、2人の義姉から連絡がありました。そして週末に、A子さんの自宅に来ることになったのです。

 

義姉①「少しは落ち着いた?」

 

A子さん「すみません、葬儀の時はバタバタしていたので、ろくに話をすることもできずに」

 

義姉②「いいのよ。それよりも、話をしたかったの、A子さんと」

 

A子さん「わたしも、みなさんと、お話ししないと、と思っていました」

 

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