2020年「ユーロ圏経済」1%成長を予測…年後半に追加緩和も

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●実質GDPは、2020年が前年比+1.0%、2021年は同+1.2%と、緩慢なペースの成長を予想。
●2020年後半に追加緩和の可能性、ドイツ10年国債利回りは景気の持ち直しから緩やかに上昇。
●政治面ではドイツの連立崩壊リスクが後退、ただイタリアの連立崩壊リスクが浮上し、注意が必要。

実質GDPは、2020年が前年比+1.0%、2021年は同+1.2%と、緩慢なペースの成長を予想

ユーロ圏の景気は足元で軟調に推移しています。主な要因は輸出環境の悪化で、国別ではアジア向け、セクターでは自動車、金属の輸出減少が顕著となっています。ただ、2019年12月に米中両国が貿易協議で第1段階の合意に至り、英国の下院総選挙で保守党が勝利したことで、市場の先行き不透明感は払拭されつつあります。2020年初めにかけては、世界景気の持ち直しを背景に、ユーロ圏では製造業の生産活動と輸出の安定が見込まれます。

 

ただ、世界経済の回復にそれほど力強さはない見通しで、輸出の急速な回復は難しいと思われます。そのため、ユーロ圏の成長ペースは、非常に緩慢なものになるとみられ、弊社はユーロ圏の実質GDP成長率について、2020年は前年比+1.0%、2021年は同+1.2%を予想しています(図表1)。なお、ユーロ圏の財政政策は、やや拡張的なスタンスが続き、後述の緩和的な金融政策とともに、2020年以降の景気を支えると考えます。

2020年後半に追加緩和の可能性、ドイツ10年国債利回りは景気の持ち直しから緩やかに上昇

ユーロ圏の金融政策について、欧州中央銀行(ECB)は、2019年9月の理事会で、預金ファシリティ金利をマイナス0.4%からマイナス0.5%へ引き下げ、量的緩和の再開(2019年11月より月額200億ユーロのペースで国債などを購入)も決定しました。2020年後半には、低成長、低インフレを背景に、預金ファシリティ金利のマイナス0.6%への引き下げと、状況次第で量的緩和の拡大(月額300億ユーロ)も決定される可能性があるとみています。

 

ドイツ10年国債利回りについては、景気底入れ期待が利回りの押し上げ要因となる一方、ECBの緩和的な政策スタンスが利回り上昇を抑制する形となり、2020年入り後はしばらく一進一退の推移が続くと予想します。年後半には、緩和的な金融政策と、やや拡張的な財政政策によって、景気の持ち直しが継続し、ドイツ10年国債利回りは緩やかに水準を切り上げる展開が見込まれます(図表2)。

政治面ではドイツの連立崩壊リスクが後退、ただイタリアの連立崩壊リスクが浮上し、注意が必要

政治動向に目を向けると、ドイツでは2019年11月30日に「社会民主党(SPD)」の党首選が行われ、メルケル首相が所属する「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」との連立に懐疑的なワルターボーヤンス氏とエスケン氏が共同党首に選出されました。この結果、メルケル政権の存続に不透明感が強まりましたが、12月6日に行われたSPDの党大会で、連立維持の方針が示唆されたため、当面の政権崩壊リスクは後退しました。

 

一方、イタリアでは「五つ星運動」と「民主党」の連立政権が崩壊するリスクが浮上しています。五つ星運動が財政改革の柱としてきた議員数削減案について、これを阻止する動きが議会で強まり、削減の是非を問う国民投票が実施される公算が大きくなりました。国民投票前に総選挙が実施されれば、大型減税を主張する「同盟」が勝利し、財政を巡って欧州連合(EU)と対立する恐れがあるため、今後のイタリアの政局には注意が必要です。

 

(注)2019年12月16日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ユーロ圏経済の見通し (注)2019年12月16日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)データは2015年1月から2019年11月までが実績値。2020年1月から12月までのレンジは2019年12月18日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。太線は予想レンジの上限と下限。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]ドイツ10年国債利回りの予想レンジ (注)データは2015年1月から2019年11月までが実績値。2020年1月から12月までのレンジは2019年12月18日時点の三井住友DSアセットマネジメントによる予想。太線は予想レンジの上限と下限。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年「ユーロ圏経済」1%成長を予測…年後半に追加緩和も』を参照)。

 

 

(2019年12月25日)

 

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、三井住友DSアセットマネジメント、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料は三井住友DSアセットマネジメントが信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧