高齢化が進み、「結婚をしない」という選択肢が当たり前になるなか、社会の構造が大きく変化しています。それに伴い、不動産投資の進め方のセオリーが変わりつつあるのです。本記事では不動産会社で資産コンサルタントとして活躍する髙木弘美氏に、出口戦略を考えたこれからの不動産投資について解説いただきます。

「単身者世帯の増加」と「結婚しない理由」

少子高齢化が問題になるなか、女性の社会進出、晩婚化などを背景に、婚姻率が低下しています。それに伴い、今後、日本では単身世帯の人が増えていくことも見込まれています。

 

国勢調査によれば、2015年の全国の単独世帯は、約1,842万世帯(34.6%)でした。2000年の国勢調査では、約1,291万世帯(27.9%)、2005年約1,445万世帯(29.5%)、2010年約1,678万世帯(32.4%)と推移しているため、単独世帯がかなりのスピードで増加していることがわかります。

 

この傾向は今後も続くでしょう。2018年の国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年の単独世帯数は約1,994万世帯となり、これは全世帯の約39.4%に達します。ここまで単独世帯が増加している一番の原因は、50歳時未婚率が上昇しているためでしょう。同研究所の「人口統計資料集(2017)」によると1990年の50歳時未婚率は男性5.57%、女性4.33%でした。

*晩婚化・非婚化やライフスタイルの多様化など現状を鑑みて、政府は50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を指す「生涯未婚率」を「50歳時未婚率」に表現を変更した。

 

ところが、この未婚割合は2015年では男性23.37%、女性14.06%と男女ともに大幅に増加しているのです。上昇のきっかけの一つは男女雇用機会均等法の制定ではないかといわれています。男女の賃金格差が縮まり、男性に頼らず自立できる女性が増え、結婚することのメリットを疑問視する女性が増えたのでしょうか。また男性については生涯未婚率が女性より高い傾向にありますが、女性にくらべて男性の方が再婚を繰り返しているためという見方もあるようです。

 

単身者の増加の理由はいろいろな見解があるようですが、こうした傾向はまだまだ続くと予想されていますので、今後は単身者向けの不動産がますます投資対象として注目を浴びるといえそうです。

高齢単身者向け不動産投資のメリットとデメリット

総人口が減少するなかで単独世帯が増加すればファミリー世帯は減少し、不動産投資においてもファミリー向け物件の需要は減少していくでしょう。一方、高齢者の増加に伴い、高齢単身者向け物件の需要は増加すると見込まれています。

 

高齢単身者を対象とした1Rや1Kの不動産投資では比較的長期的な安定した入居が期待できます。一方、高齢者対象のファミリー向け物件では配偶者の死亡や介護を理由に退去されるリスクが高くなるという見方もできるでしょう。

 

年金を受け取っている世代は、解雇や倒産のリスクもある現役世代よりも安定した収入があり、家賃回収が不能になるリスクが低いといえます。最大のデメリットは、「高齢単身者が病気になる」「要介護状態になる」「孤独死する」とった高齢単身者特有のリスクです。オーナーの多くが、この点を不安に感じています。

 

そのため高齢単身者向け不動産の需要が増えていく可能性が高いにもかかわらず、高齢単身者を入居審査で除外しているケースも少なくありませんでした。しかしリスクやデメリットへの対策が万全にできれば、競合するライバルも少なく大きなチャンスといえるでしょう。

 

ライバルの少ないうちに高齢者を取り込む
ライバルの少ないうちに高齢者を取り込む

高齢単身者向け不動産投資のポイント

高齢単身者向け不動産投資のポイントを具体的に見ていきましょう。立地や間取り、設備、サービスが重要なポイントといえるでしょう。立地の面では、対象者人口が多く空室リスクも少ない東京を中心とした首都圏が投資初心者にも安心できておすすめです。交通アクセスが良い駅近物件ともなれば、車での移動は不要になります。高齢ドライバーによる事故が大きな社会問題になっていますが、そのようなリスクを心配する必要もなくなります。

 

また間取りについては、ファミリー向けの3LDKのような広いタイプは必要なく1Rや1Kで十分です。ただ広さは25平方メートル以上の少し広めのワンルームが好まれるでしょう。若いころと違い年齢を重ねているだけに荷物も多くなりがちですし、ある程度の広さがあった方が落ち着くという高齢者も多いはずです。

 

内装や設備はバリアフリーのようなリノベーションを行っておきましょう。段差をなくし水回りを使いやすくするだけでもかなり暮らしやすくなり、付加価値が高まります。高齢単身者の最大の懸念は健康問題です。例えば見守りセンサーや24時間対応のコールセンターなどと提携しておくと事故の発生を未然に防ぐことができ、安心できる住環境を提供することができるでしょう。

 

不幸にも孤独死が発生した場合に備えて原状回復や家賃の損失補填をしてくれる保険に加入しておくこともおすすめです。高齢単身者の賃貸市場は、今後急拡大が見込まれる市場といわれています。いろいろと気を回すことが多く大変かもしれませんが、リノベーション専門の不動産会社の助けも借りながら取り組めば大きなチャンスとなるのではないでしょうか。

 

本連載は、リズム株式会社が発信する「不動産コラム」の記事を転載・再編集したものです。

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