「中古物件」よりも出口戦略が難しい「新築物件」
不動産投資では月々の家賃収入を確実に得ることが大切ですが、将来の出口戦略も考えておかなければなりません。なぜなら客付けに成功し、きちんと家賃を得られたとしても最後の売却価格が見込みよりも大幅に下がってしまってトータルで赤字になったり、期待したほどの資産が残せなかったりすることもあり得るからです。
売却せず、持ち続けたとしても「突発的に現金が必要になる」「不動産を入れ替える」などしたとき資産価値が高いほうが有利でしょう。
保有する投資用不動産の出口戦略は、大きく分けて「売却する」「自分や家族の住居とする」「投資不動産として持ち続けて子孫に相続させる」の3つです。日本の不動産市場は新築信仰が根強く、新築物件はそのポテンシャル以上に高い価格で販売されてきました。また建築会社の利益分や広告宣伝費などが販売価格に上乗せされるので、中古物件に比べて割高になりがちです。
購入した直後から新築物件も中古になります。当初上乗せされていた分が一気になくなるので売却しようとしても大幅に値下がりしてしまうのです。確かに新築物件は、空室率が低くなりやすいというメリットがありますが、購入価格が高いので、その分利回りは低くなりがちです。結果的に投資金額を回収できるまでの期間は中古物件よりも長くなる傾向にありますので、新築物件は中古物件に比べると売却には不向きだということがいえるでしょう。
不動産の売却時に発生する税金
物件の出口戦略を決めるためには、売却時にかかる税金のことも把握しておかなければなりません。売却時にかかる税金は、譲渡所得税・印紙税・登録免許税です。譲渡所得税は、物件の売却時に発生した譲渡所得に対して課税されます。計算式は以下の通りです。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)
税額=課税譲渡所得×税率(所得税・住民税)
譲渡収入金額は物件の売却金額のため、分かりやすいでしょう。しかし取得費の計算では物件購入費用に購入時の費用を足し、さらに所有期間中の建物や設備の減価償却費を控除します。また売却にかかった手数料や広告宣伝費などは譲渡費用に含まれるので注意が必要です。なお税率は譲渡した年の1月1日現在に所有期間が5年以下か5年超かで異なります。5年以下は短期譲渡所得として税率が39.63%、5年超は長期譲渡所得として税率が20.315%です。(復興所得税を含む)
印紙税と登録免許税は、印紙税が譲渡契約に関する契約書に貼り付ける印紙代、登録免許税は名義変更に必要になります。印紙税は物件の売却価格によって変わり、例えば2020年3月31日までに作成した契約書で金額が1,000万~5,000万円以下なら1万円、5,000万~1億円以下なら3万円です。(軽減後の金額)登録免許税は固定資産税評価額×1.5%(2021年3月31日まで)で計算されます。
物件は「出口戦略」を意識して購入する
売却を意識した物件購入のポイントですが、新築物件よりも中古物件が有利になる傾向であるということは上述のとおりです。また投資用の市場と居住用の市場の2つがあることも意識しましょう。投資用市場では、投資家の目線で物件に魅力があるかどうかで決まります。過去の空室率や利回り、物件のエリアなどが重要なポイントになるでしょう。
物件のエリアでみると、やはり都心のような首都圏の物件は、地方に比べると有利になります。なぜなら利回りが低くなっても空室リスクは低く安全性が高いからです。収益が出ている物件のオーナーチェンジであれば、物件の種別に関わらずニーズがあるでしょう。一方、居住用の市場で売却する場合、実需があることが大切なので、こちらについても人口が増えている首都圏エリアの物件が有利になるでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」によると、2040年における全国の単身者世帯は39.3%となっております。そのため将来的には1Rや1Kに対する需要がますます増えていくと考えられます。
一人暮らしは生活に便利なところが好まれます。「駅に近い」「スーパーに近い」「病院に近い」といった条件がそろった都心の物件は、投資用としても住居用としてもニーズが高まるでしょう。そのような物件は入居者の入れ替わりはあるとしても、空室リスクが低く不動産投資の対象としては安定した物件だといえるでしょう。
不動産投資において出口戦略は購入前にある程度は立てておいた方がよいでしょう。なぜなら、いくらで売却できるかの前に、売れる物件であることの方が重要だからです。ある程度物件が決まったら将来の売却時にかかる税金もしっかりと把握し、シミュレーションを立てながら戦略的に取り組むことが大切です。