相続が発生した際、被相続人と相続人である子どもが同居をしていた場合、離れて暮らすきょうだいと、トラブルに発展するケースが多くあります。そこで本記事では、きょうだい間でトラブルになりがちな遺産分割について詳しく解説します。※本記事はCST法律事務所 ・細越善斉弁護士による書き下ろしです。

きょうだいで「平等」に相続をしたいと考えていたが…

相続が発生した際、親とその子どもの家族が同居していた場合、遠くに住むきょうだいともめてしまうことがあります。具体的な事例を紹介します。

 

Aさんは、母の財産を相続することになりました。父は3年前に他界していたため、相続人は姉(長女)とAさん(長男)の2人だけでした。父の死後は、姉夫婦が実家で母の面倒を見ていました。遺言書はありません。

 

Aさんは、姉と2人で平等に相続をしたいと考えていました。しかし、Aさんの姉が作成した母の遺産目録を見ると、預金が生前母から聞いていた額の半分以下に減っていました。もしかすると、姉に対して生前贈与があったか、ことによると姉夫婦が勝手に使ってしまったのかもしれません。いずれにせよ、不公平であるとAさんは感じました。

 

このような場合は、どのように遺産分割協議を進めればいいのでしょうか。

 

姉を疑う弟
姉を疑う弟

同居相続人は「遺産を多く取得できるはず」と考える⁉

被相続人と同居していた相続人と、同居していなかった相続人とは、なぜもめてしまうのでしょうか。筆者が取り扱った過去の案件から分析すると、以下の理由が考えられます。

 

① 同居側は寄与分を主張する

 

同居していた相続人は、自分ばかりが被相続人の面倒を見ていたとの思いが強く、遺産分割の際「寄与分としてその点が考慮されるべきであり、遺産を多く取得できるはずだ」と考えていることが少なくありません。この寄与分の有無をめぐり、非同居相続人との間で話合いがつかないケースが多いように感じます。

 

しかし、裁判所で寄与分が認められるケースは限定的であり、加えて、認められる金額や割合もそれほど多額になりません。

 

② 非同居側は生前贈与や使い込み、遺産隠しを疑う

 

同居していなかった相続人は、同居相続人が被相続人を抱き込んで、生前贈与を行わせているのではないか、もしくは被相続人の預貯金を自分のために勝手に使ってしまっているのではないかといったことを考えます。

 

さらには、被相続人の財産を事実上支配し、非同居相続人に隠して、遺産分割の対象にならないようにしているのではないか、と疑うこともあり得ます。

 

そのため、同居相続人から開示された遺産目録では納得せず、財産調査を行ったうえで、生前贈与の有無や使途不明金を徹底的に追及することもあります。このような事情から、「争続(争いになる相続)」に発展してしまうことが多いのではないかと考えられます。

 

③ 遺言内容が極端に同居側に有利な内容となっている

 

遺言の内容が、同居相続人と非同居相続人とで異なるケース(同居側が極端に有利な内容となっているなど)があります。その場合、「同居相続人が被相続人を抱き込んで、本人の意思ではないのに書かせたのではないか」もしくは、「遺言作成時に被相続人は認知症だったので、自分で遺言を作成することはできなかったはずだ」などと非同居人が主張し、遺言の有効性をめぐり争いになることがあります。

 

このように、同居の有無で、お互いに不平等だと感じることが多い結果、争続が発生してしまうのではないでしょうか。

争続における遺産分割は「早めの調停」が吉

同居相続人と非同居相続人との間では、類型的に争続になりやすいということは前述のとおりですが、そのような場合、遺産分割をどのように進めていけばよいのでしょうか。

 

まず、相続財産の名義変更や解約などの相続手続を行う場合、全相続人が署名捺印をした「遺産分割協議書」と、各相続人の「印鑑証明書」が必要となります。そのため相続手続を行うためには、感情的な対立がある場合でも、同居相続人と非同居相続人との間で遺産分割協議を成立させたうえで、遺産分割協議書を作成する必要があるため、一方から他方に対し、遺産分割協議の申入れを行うのが第一歩です。

 

申入れの仕方は、手紙やメール、もしくは電話など、どんな方法でも構いません。しかし、同居相続人と非同居相続人の場合など感情的な対立が予想されるケースで、電話だけでは感情的な話に終始してしまいがちです。まずメールや書面等で申入れを行い、分割方法等についての希望を伝えるのがよいのではないでしょうか(ちなみに、弁護士から遺産分割協議の申入れを行う場合には、証拠化のためにも、書面にて申入れをするのが通常です)。

 

そして、相手方より遺産分割についての意向が示され、話合いにより解決できそうであれば協議の成立を目指し、難しそうであれば調停を申し立てます。調停も不成立となれば審判に移行し、裁判所の判断により遺産分割の内容が決定されることになります。

 

以上の流れは、相続人の属性を問わない、通常の遺産分割の進め方です。しかし、同居相続人と非同居相続人との間で遺産分割を行う場合は、上記のとおり、類型的に「争続」になりやすいため、話合いでの解決が難しいケースが多いので、協議での解決に固執することなく、早めの調停申立てをおすすめします。そのほうが、最終的な解決までの時間も早くなることが多いです。

 

いずれにしても、相手方の回答次第で、その後の遺産分割をどのように進めていくのかを検討しましょう。そのあたりは相続紛争の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

細越 善斉

CST法律事務所 

代表

 

本稿執筆者 岸田康雄氏登壇セミナー
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※掲載された内容はすべて架空の事例です。

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