「ユニクロ」や「無印良品」が海外でも受け入れられるワケ

「ながら起業」を提唱する中国人キャリアウーマンの小野りつ子氏が、会社にしがみつき続ける「雇われ人根性」から脱却し、自立した働き方をするための具体策を提案します。※本連載は『ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、改編したものです。

日本のビジネスマンは、海外でビジネスをしていない?

日本のビジネスマンは、なぜ海外では通用しないのか。よく議論されていますが、IT業界に限って言うなら、そもそも日本のビジネスマンは海外でビジネスをしていません。だから、海外で通用する・しない以前の話かと思います。IT業界では、中国やインドに進出してもそこで日本向けの製品を作っている場合が多いのです。

 

ITソフトウェアの企業の場合、ほとんどがオフショアリング(企業が開発業務の一部または全部を海外に移管・委託すること)です。上流工程では日本のSE(システムエンジニア)を使って要件定義、設計、開発をしますが、下流工程のコーディング、テストは人件費が安い中国や東南アジアなどの開発拠点に任せています。

 

現地の管理も日本でのやり方を通すので、海外のビジネスのノウハウを学ぶ必要はありません。現地の日本人の管理者は毎週本社に報告するための資料を作るのが主な業務で、現地の社員と話すときは通訳を使い、3~4年間駐在しても、現地の言葉を習得することもなく、日本に帰国するという具合です。

 

これは日本の商習慣にしがみついている企業が、日本の生活スタイルにしがみついている社員を海外に輸出しているだけなので、グローバル化の要素は一切ありません。せっかく海外で生活するチャンスに恵まれたのなら、日本人村から一歩外に出て現地の人と触れ合ったほうが、今後の人生には必ず役に立つのではないかと思います。

ユニクロや無印良品の「グローバル化」が成功する理由

そのような状況なので、IT業界はグローバル企業の最先端というイメージがあるかもしれませんが、実際は大企業でも世界的に見れば成功しているとは言えません。少なくとも中国では成功していない、とはっきり言えるでしょう。今まではそれでもやってこられたかもしれませんが、今は中国やインドの人件費も高くなってきて、日本人の人件費のほうが安くなっていると言われています。

 

もし日本で日本国内でしか流通しない製品を作るようになったら、それこそガラパゴス化がさらに進むだけなので、あまり将来性のある業界のように感じません。

 

もちろん、現地で日本製の製品を販売したり、お店を開いている企業は、現地に派遣された社員が四苦八苦しながら現地に根付くよう力を尽くしているのだと思います。

 

「ユニクロ」のファーストリテイリングや「無印良品」の良品計画のように、海外で受け入れられている企業も多数あります。そういう企業では、現地の人とコミュニケーションを取りながら受け入れてもらう戦略を立てているので、グローバル化を意識しなくても、自然と外向きの思考になるのでしょう。

 

日本は少子高齢化が進んでいるので、どの企業も海外に出ていかないとやっていけないのは明白です。そのためにも「しがみつき体質」から脱却しておかないと、海外に派遣されて何も刺激を受けないまま帰国することになるのではないでしょうか。それは無難な生き方かもしれませんが、人間性の豊かな味のある人間にはなれません。

 

様々な色の文化に、受け入れてもらうためには?
様々な色の文化に、受け入れてもらうには?

外国人社員にも染み込んでしまう「日本流の働き方」

日本にいると外国人にも「しがみつき思考」が染み付いてしまうのか、と思った経験があります。私の勤めている企業で、外国から来た女性社員がこっそり残業をしていることが判明しました。

 

前述したように日本人は残業を好みますが、働き方改革の関係で大企業は残業にかなり厳しくなってきています(関連記事『夢も個性もなくなり、自尊心は崩壊…「日本の会社」という魔窟』参照)。それでも月40時間までの残業は認められているので、毎月上限の時間を彼女は申請していました。

 

しかし、彼女が担当している業務はどう考えても残業しなくてもできる仕事です。しかも、彼女が遅くまで残っている姿を誰も見たことがない。調べてみると、彼女は始業時間より2時間も前に会社に来ていたのです。彼女以外は誰も会社にいないので、彼女が本当に仕事をしているのかどうかも分からない状況でした。「こういう残業代泥棒もあるのだな」と驚きました。

 

彼女は私以上に長く日本の企業に勤めているので、日本企業の悪いところが体に染みついてしまったのかもしれません。外国人は決められた時間内で仕事をし、なるべく残業しないのが一般的なので、珍しいケースだと思いました。

 

けれども、同時に彼女がなぜそんなことをしているのかも、私には分かります。彼女は何ヵ国語も話せるほど語学は堪能なのですが、任される仕事はアシスタント的な仕事ばかりです。それだと仕事にやりがいを感じられず、「お金さえ稼げればいい」という発想になっても仕方ないでしょう。

海外に比べると、日本の女性の社会進出は遅れている

日本では外国人の能力を評価せずに実力よりも低レベルの仕事を任せるので、外国人は失望して外資系の企業に移るという話は珍しくありません。対外国人だけの話ではなく、女性や若い人の中にも性別や年齢を理由に同じ待遇を受けている人は大勢います。

 

かくいう私も、中国人でありなおかつ女性だからという理由で、これ以上の出世の道はないと、会社でハッキリと言われたことがあります。会社で実績を築いていても、中国人女性だからという理由だけで裁量権のある幹部にはなれないというのです。

 

確かに、最近は日本でもCEOに外国人が登用されるケースが増えていますが、それはあくまでも白人男性。欧米では実力さえあればアジア系の男性でも女性でも企業の幹部になれるので、大違いだと感じました。

 

私は自分から「この事業を私に任せてください」と手を挙げるのですが、同じく中国人女性だからという理由で任せてもらえないこともありました。実力が伴っていないからダメだというのなら分かるのですが、人種と性別を理由にされたらどうしようもありません。

 

長年にわたってこうしたことが積み重なるにつれ、私は徐々に会社の中だけの世界に行き詰まりを感じるようになり、外の世界に目を向けなければと思うようになりました。客観的に見ても、海外に比べると日本の女性の社会進出は遅れていると思います。

 

かといって、社会の構造を変えるのはそう簡単ではありません。皆さんの中でももし今いる会社で昇進が頭打ちになったと感じている方がいたら、会社以外にもやりがいを見つけたほうがいいのではないでしょうか。結局、自分の身は自分で守るしかないと思うのです。

それでも日本では「定年」まで勤めるほうが安泰かも?

海外では転職は気軽にできますが、日本ではまだそこまでにはなっていません。確かに、若い世代を中心に転職という選択肢がメジャーになりつつありますが、「今の会社で働き続けるのはツラいけれど、転職は怖い」と考えている人は、いまだ大勢いるのではないでしょうか。

 

私は日本に来てからも経験を積むために4社で勤めてきましたが、それ以上転職するのは難しいと主人から言われました。日本では一つの会社で10年、20年勤めるのが当たり前なので、5、6年で転職するのはかえってマイナスになると、そのとき初めて知りました。

 

しかも、30代後半になってからの転職はなお難しいと聞き、「経験を積んでいる世代がいちばん市場で求められているはずなのになぜ?」と不思議に思いました。

 

転職回数が3社以上になると「転職が多すぎるのは、性格に問題があるのでは?」「すぐにうちの会社も辞めてしまうかも」と思われて採用されないといいます。転職回数よりもその人が今までの会社で何をしてきたかが重要だと思うのですが、終身雇用の弊害がまだ根強く残っているのだと感じます。だからといって、転職したら今までの生活がすべてリセットできるわけではありません。

 

私も4社勤めてみて感じたのは、どこの企業でも日本ならではの慣習や独特の文化、暗黙のルールなどがあり、それほど状況は変わりません。女性だから出世は難しいというのはどこの企業でも同じでしょうし、20代、30代が役員になることは日本の企業ではほぼあり得ないと思います。外資系企業や若手が経営しているベンチャー企業に転職しない限り、今の状況をリセットできないでしょう。

 

今の企業では身に付けられないスキルを身に付けたい、将来独立するための勉強をしたい、といったポジティブな理由があるのなら転職すべきですが、今の会社にそれほど不満がないのなら、そのまま定年まで勤めるほうが安泰なのかもしれません。

日本人の勤勉さは「世界一」だが…

とはいえ、定年後にバラ色の人生が待っているとは限りません。定年までずっと会社にしがみついて生きてきたビジネスマンが、定年後に何もすることがなくて途方に暮れるという話をよく聞きます。

 

「定年退職したら好きなだけ旅行に行こう」「毎日、趣味に没頭しよう」と思っていても、たいていそういう生活は半年も経たないうちに飽きてしまいます。日本人は基本的に働くのが好きで、働くことにいちばん生きがいを感じるのではないでしょうか。日本人の勤勉さは世界一だと思います。

 

そのため、定年後に再雇用制度などを利用して、再び会社勤めを始める方も多いようです。しかし現役のように働けるわけではなく給料もかなり減るので、満足できないという話もよく聞きます。会社員生活の最後がそんな感じでは、あまりにも寂しいと感じます。

 

今の会社に定年まで勤めていてもいいと思いますが、会社や仕事にしがみついているのなら、その思考は早めにリセットすべきです。与えられた環境で与えられた仕事をしているだけでは、どうしてもしがみつき思考になります。

 

例えば、ガーデニングが趣味なら、農業に取り組むのも一つの方法です。市民農園を借りて野菜をつくってみて、うまくいったら規模を広げて野菜を販売するのです。仲間と一緒にやってみるのもいいでしょう。

 

会社以外の別の居場所を見つけるということは「別の生き方」を見つけることにもなります。人生の選択肢は一つではありません。選択肢が多いほうがより豊かな人生を送れますし、自分の可能性も広がります。毎日、会社と自宅の往復にウンザリしているのなら、生き方の選択肢を増やしてみてはいかがでしょうか。

 

 

小野 りつ子

インダストロン株式会社

コンサルタント

 

インダストロン株式会社 コンサルタント

電気機器業種大手一部上場企業でグローバル事業シニアマネージャーを務め、中国子会社の買収や海外会社のM&A、事業提携等の業務をこなしつつ、夫が起業したインダストロン株式会社のコンサルタントを務める。
1994年に中国北京大学を卒業後、中国郵政省国家公務員として、全国ネットワークバンキングプロジェクト(現・銀聯カードのシステム基盤)に参画。来日後は住友金属、デロイトトーマツコンサルティング他において、オープン系システムの構築、日系企業の海外進出ビジネスコンサルティングに携わる。2010年には当時所属会社のグローバルビジネス推進への貢献により全社特別賞を受賞した。
会社で安定的な収入を得ながら起業で戦略的なキャリアを構築するという自らの働き方を「ながら起業」と命名。自由度の高い次世代の働き方として、提唱と普及に努めている。

著者紹介

連載中国人キャリアウーマンが語る「日本の会社員が世界で通用しない理由」

ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方

ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方

小野 りつ子

幻冬舎メディアコンサルティング

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