「ながら起業」を提唱する中国人キャリアウーマンの小野りつ子氏が、会社にしがみつき続ける「雇われ人根性」から脱却し、自立した働き方をするための具体策を提案します。※本連載は『ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、改編したものです。

「僕は、将来は社長に…」!?

しがみつき社員になってしまう背景には、親の姿勢も関係していると感じます。

 

私の娘が小学校に通っていた頃、10歳で「2分の1成人式」を学校で行うことになり、保護者として参加しました。その式では、一人ひとりが将来の夢を語る時間がありました。一人ずつ立ち上がって発言していたのですが、ある男の子は立ち上がると「僕は、将来は社長に気に入られる社員になりたいです!」と堂々と言ったのです。

 

「社長に気に入られる社員になりたいです!」(拍手)
「社長に気に入られる社員になりたいです!」(拍手)

 

最初は冗談を言っているのかと思いましたが、周りの大人たちは笑うどころか拍手しているのです。しかも、そんな発言をしたのはその男の子だけではなく、ほかにも5、6人いました。私は、その子供たちの親御さんの顔を見ました。すると、恥ずかしそうにしているそぶりもなく、満足げな表情だったのです。私は思わず主人と顔を見合わせました。

 

子供が自発的にそのような夢を持つようになったとは考えられません。おそらく家庭で親がそう言い聞かせているのでしょう。それも、「会社員」と答えるのならまだ分かるのですが、「社長に気に入られる」という前提が付く段階で、その子の親は会社でどのように振る舞っているのかが目に見えるようでした。

 

間違いなく、その親御さんたちはしがみつき社員でしょう。しかも、その思考を子供にまで植え付けているのです。「子供の頃からしがみつき社員を育てているなんて」と、暗澹(あんたん)たる思いになりました。

「アジアの子供が将来就きたい仕事」調査

アデコは2015年に、「アジアの子供が将来就きたい仕事」という調査をしました。対象は日本の6~15歳の子供たちと、韓国、香港、台湾、シンガポール、タイ、ベトナムの7~14歳の子供たち。

 

なんと日本の男女総合では、「会社員」が1位。次いで、2位は先生、3位は医者となったのです。会社員がランクイン(しかも1位!)しているのは日本だけでした。男女別だと、男子の1位は会社員、2位はサッカー選手、3位は公務員。女子は1位がパティシエ、2位は先生、3位は会社員です。

 

これはいったいどういうことでしょう。子供たちは「パイロットになりたい」「歌手になりたい」といった、手が届かない夢を語ることが多いものです。そして、一部の人はその夢を実現させるために努力を重ねます。

 

会社員は手が届かない夢なのでしょうか? ほかの人以上に努力をしないとなれない職業なのでしょうか? 日本では、子供でさえ自由な夢を見られなくなっているのかと、悲しい気分になります。

 

対して、中国の子供の夢はハッキリしていて、「老板(社長)」です。それも、自分で会社を作りたいと考えるのが一般的です。パティシエやサッカー選手と比べると、現実的な夢かもしれません。それでも、自分の力で一から切り開きたいという思いは根底にあります。

 

日本では先が見えなくて将来が不安定な時代だからこそ、安定した職業について苦労してほしくないという親心があるから、子供にもそう言い聞かせているのでしょう。自分は夢を諦めたから、「やりたい仕事をできるなんて、世の中はそんなに甘くないよ」と諭しているのかもしれません。それは子供の可能性の芽を摘み取っているようなものです。

 

 

小野 りつ子

インダストロン株式会社

コンサルタント

ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方

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小野 りつ子

幻冬舎メディアコンサルティング

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