「自分の利益」を大切にする中国人から見た、「日本の異常」

「ながら起業」を提唱する中国人キャリアウーマンの小野りつ子氏が、会社にしがみつき続ける「雇われ人根性」から脱却し、自立した働き方をするための具体策を提案します。※本連載は『ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、改編したものです。

他人の目立つ行動を許さず、互いに監視し合っている

「しがみつき」の要因は日本の企業体制にあると思いますが、それを増長させている背景には、義務教育のあり方が関係していると考えられます。中国でもほかの国でも義務教育はあるのですが、日本の義務教育は集団での行動を重視し、過度の協調性を求めるところに、他国よりも強い傾向があるように感じます。

 

日本は集団主義で、欧米は個人主義だとよく言われています。「最近の日本は個人主義だ」という意見もありますが、私から見るとやはり集団主義です。日本では目立つ行動をしないことが善とされているので、小学校であまりにも手を挙げすぎると「ほかの子が当たらないから」と釘を刺されたりします。中国ではいちばん手を挙げる子供が褒められるので、大きな違いです。

 

自分が目立たないだけならともかく、他人の目立つ行動も許さず、互いに監視し合っているような同調圧力を感じます。まるで中国の文化大革命の頃のようです。

「連帯責任」という世界でも稀な考え方

私は、「連帯責任」という言葉を日本で初めて知りました。日本でマンションやアパートを借りようと思っても、連帯保証人が必要だと不動産会社に言われて貸してもらえなかったという話もよく聞きました。

 

私たち外国人の場合は、すでに就職先が決まっていればその企業が保証人になってくれるのですが、そうでない場合は日本に親戚も友人もいないのなら借りられないのです。保証人がいても、外国人だからという理由で断られることもあります。

 

なぜ連帯保証人が必要なのかと聞くと、「入居者が何か問題を起こしたら、その保証人が責任を負わなければならない」と説明されて驚きました。アパートを借りるときだけではなく、金融機関に借金するときも連帯保証人が必要です。もし個人レベルで起業した会社が倒産したら本人だけではなく、連帯保証人に累が及ぶようになっています。

 

これは世界的に見てもまれなルールです。一人が悪いとチーム全体、あるいは組織全体を罰する。これでは個人が萎縮してしまい、何もできなくなるのは無理もありません。

 

これらが顕著なのが日本の部活動だと思います。最近は幾分かましになってきているとはいえ、例えば高校の野球部で飲酒や喫煙をした選手がいたら、チーム全体で責任を取るために出場を辞退したりすることがあります。問題を起こした選手を罰したら十分だと思うのですが、問題を起こしていない選手まで巻き込まれてしまうのが疑問です。

 

こういう環境を通して、日本の集団は形作られていくのだろうと思います。特に体育会系の部活では上下関係がしっかりしていて、それは社会人になってからも続きます。目上の人に対する礼儀や、周りに迷惑をかけないように集団で行動する姿勢は、日本ならではの美徳と言えるでしょう。

小学校から「軍事訓練」のある中国の事情は?

中国では学生時代の上下関係はほとんどないので、同じ学校の出身者でも「先輩」「後輩」と呼び合ったりしません。ですので、同じ会社の中で、出身校同士で派閥をつくるような日本の風土は特異に感じました。

 

部活だけではなく、整列させて「前へならえ」「右向け右」「休め」のような行動を徹底するのも、集団化をより強固にさせているでしょう。運動会の組み体操はその最たる例かもしれません。

 

日本でも「組体操」は社会問題になっているが…
日本でも「組体操」は社会問題になっているが…

 

中国でも、小学校の頃から軍事訓練があり、毎週国旗敬礼を行うなど、集団行動があります。それは愛国・愛党精神を植え付けるという目的のためです。それでも日本のように「みんなと同じ行動を取らなければ」という思考にならないのは、中国では集団は共産党しかないからです。それ以外では個人で生き残るために必死であり、ほかの人の責任を取るなんて考えられません。

「事不関己、高高掛起」…中国人はサッカーが苦手

また、一般的に中国人は自分に利益があるかどうかを判断基準にしていて、集団より個人への評価を重視している「利己主義」です。

 

中国語で「事不関己、高高掛起」という言葉があります。「自分と関わりがないことには無関心である」という意味です。言い換えれば、自分にとって利益があれば関心を持ちます。

 

中国ではサッカーやバスケットボールのような集団スポーツがあまり強くないのは、サッカーならすべての選手が自分でゴールを入れようとして、フロントの選手にボールを渡さないからです。ボールを渡してほかの選手が入れたらその人の評価になるので、渡そうとしない。これでは、チームプレイなどできません。また、監督に言われたことを最初は実行しますが、何回やっても効果がないと、簡単に諦める傾向があります。

 

だから、中国では卓球やバドミントンのような個人競技が強くて、団体競技は弱いのです。個人競技は勝ったらすべて自分の評価になるので、みな懸命に取り組むというわけです。

日本人は「自分の意見」が言えなくなっている

もちろん、連帯責任には良い部分もあります。お互いの行動を制約できる反面、チーム全体のまとまりはよくなります。一方で、責任の所在はあいまいになり、みんなと一緒に行動するのでスピードが落ちます。

 

さらに、集団行動に慣れると、どこに行くのにも集団でなくては不安になるようです。前からよく言われていますが、日本人は海外旅行に行くときに旅行会社が主催するツアーに参加する人が圧倒的に多い傾向があります。

 

一方、中国人は基本的に集団行動が苦手なので、今は日本政府が中国からの来日個人旅行ビザを解禁しておらず団体旅行が多いですが、今後は個人旅行客が主流になるでしょう。

 

日本のように子供の頃から集団行動が基本にあると、周りの目をうかがうようになり、自分の意見を言えないようになります。それがしがみつき社員を生む原因になっているのではないでしょうか。

 

 

小野 りつ子

インダストロン株式会社

コンサルタント

 

インダストロン株式会社 コンサルタント

電気機器業種大手一部上場企業でグローバル事業シニアマネージャーを務め、中国子会社の買収や海外会社のM&A、事業提携等の業務をこなしつつ、夫が起業したインダストロン株式会社のコンサルタントを務める。
1994年に中国北京大学を卒業後、中国郵政省国家公務員として、全国ネットワークバンキングプロジェクト(現・銀聯カードのシステム基盤)に参画。来日後は住友金属、デロイトトーマツコンサルティング他において、オープン系システムの構築、日系企業の海外進出ビジネスコンサルティングに携わる。2010年には当時所属会社のグローバルビジネス推進への貢献により全社特別賞を受賞した。
会社で安定的な収入を得ながら起業で戦略的なキャリアを構築するという自らの働き方を「ながら起業」と命名。自由度の高い次世代の働き方として、提唱と普及に努めている。

著者紹介

連載中国人キャリアウーマンが語る「日本の会社員が世界で通用しない理由」

ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方

ながら起業 明日クビになっても大丈夫な働き方

小野 りつ子

幻冬舎メディアコンサルティング

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