ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

インド中銀の政策金利発表から、「様子見」の決断に至った背景は主に2つ述べられています。1つ目は、過去の経済政策の効果、2つ目はインフレ率動向です。特にインフレ率は10月の消費者物価指数(CPI) が前年同月比4.62%と、インド中銀のインフレ目標の4%を超えています。ただ、インフレ率上昇が一時的と判断されれば、再び金融緩和に向かう可能性もあると見ています。

インド中銀:市場予想に反し政策金利を据え置き、インフレ加速受け

インド準備銀行(中央銀行)は2019年12月5日の金融政策決定会合で市場予想に反し、政策金利(レポレート)を5.15%で据え置くことを決定しました(図表1参照)。市場では大半が6会合連続となる利下げを予測していました。

 

日次、期間:2016年12月5日~2019年12月5日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]インド政策金利の推移 日次、期間:2016年12月5日~2019年12月5日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

なお、インド中銀はインド経済の成長見通しを、10月時点の6.1%から、今回5.0%に下方修正しましたが、インド中銀は据え置きの理由として、インド政府の最近の景気対策や、これまでの利下げの効果を見極めることなどをあげています。

どこに注目すべきか:インド中銀、玉ネギ価格、消費者マインド

インド中銀の政策金利発表から、「様子見」の決断に至った背景は主に2つが述べられています。1つ目は、過去の経済政策の効果、2つ目はインフレ率動向です。特にインフレ率は10月の消費者物価指数(CPI) が前年同月比4.62%と、インド中銀のインフレ目標の4%を超えています(図表2参照)。ただ、インフレ率上昇が一時的と判断されれば、再び金融緩和に向かう可能性もあると見ています。

 

月次、期間:2014年12月~2019年10月、CPI,コアCPIは前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]インド消費者物価指数(CPI)と主な構成指数の推移 月次、期間:2014年12月~2019年10月、CPI,コアCPIは前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

一般に、金融政策決定会合で市場予想に反する決断が示されることは比較的珍しいですが、インド中銀の場合、年6回の定例会合(15年は2回多かった)のうち、概ね年に2~3回程度、少なくとも1回は市場予想と異なる結果がここ数年示されています。市場予想泣かせの面は感じられます。

 

しかし、予想の当たり外れよりも、大切なのは背景でしょう。今日のヘッドライン19年11月8日号で指摘したように、インドの成長と、金融セクターの安定性に懸念は見られます。今回インド中銀が成長見通しを引き下げたように、インドの景気回復の鈍化は懸念材料です。

 

それでも据え置きとしたのは、インフレ率上昇の懸念が高まっているためでしょう。12月12日公表予定のインド11月のCPIは前年比で約5.3%が市場予想となっており、10月から加速が見込まれています。

 

インドのインフレ率上昇の背景は食料品、とりわけ玉ネギ価格が急上昇しています(図表2参照)。

 

インド料理ではカレーからアチャール(玉ネギの漬物)まで玉ネギは欠かせない材料です。国民に身近な穀物だけに、インドは世界最大級の玉ネギの輸出国ですが、現状では国産玉ネギの輸出禁止にまで追い込まれています。

 

ここで玉ネギの価格をもう一度見直すと、周期的に大きな変動となっていますが、これはモンスーンの影響で玉ネギの生産が左右されるからです。今年は大雨で不作でした。

 

これだけであれば、価格上昇は一時的な気候要因で片付けられそうです。気になるのは消費者コンフィデンスの低下です。インド中銀が公表する同指数はCPI(玉ネギ価格)上昇に伴い急低下しており景気に悪影響を与えています。

 

このような事情を反映してか、今回の据え置きに対し株式市場等の反応は冷静で、為替市場でもルピーが落ち着いています。利下げ再開は価格動向を見てからと思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド中銀の政策金利、「様子見」の決断に至った2つの背景』を参照)。

 

 

(2019年12月6日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録