夫と義母に「あらぬ男性関係」を疑われた妻
【あらぬ話をでっち上げられ離婚を強要。8年間我慢したけれどもう限界。慰謝料請求で訴えました】
あかりさん(34)は、結婚して間もなく妊娠しました。しかし、勝気なあかりさんに対し、同居していた夫の母が何かと強く当たり、あかりさんのあらぬ男性関係までを疑い、家を出るよう促されました。
夫までもが母親に同調し、あかりさんはやむなく実家に戻ることになります。夫はあかりさんの浮気を疑い、離婚を申し出るも、あかりさんは生まれた長男のためにも結婚の継続を望みました。
その後夫から月々の養育費は支払われたものの、健康保険証の交付に協力しないばかりか、ついには「生まれた長男はおれの子どもではない」とまで言い出す始末。その後夫からの嫌がらせはさらにエスカレートします。
毎日のようにあかりさんの実家へ電話をし、あかりさんのことばかりか、両親や兄弟の悪口までを執拗に繰り返しました。さらに、嫌がらせの内容を記したハガキや手紙を勤務先にまで送りつけることもありました。
その間に夫は別の女性と同棲を始め、子どもをもうけています。その女性までもが悪口の電話に加担していました。
さらには、盗んでもない実印をあかりさんが盗んだかのようにでっち上げて裁判を起こされます。また、言いがかりとしか思えないような理由であかりさんの両親までも訴えるありさま。長男のためにと8年余りの間にわたって結婚の継続を望んできたあかりさんもさすがに疲れ果て、離婚と慰謝料の支払を求めて、逆に夫を訴えました。
モラルハラスメントこそ証拠を残すことが重要になる
◆「モラルハラスメント」は離婚理由になるか
モラルハラスメント(モラハラ)とは、殴る・蹴るといった肉体的な暴力ではなく、発言や行動、態度などで相手を精神的に追い込む嫌がらせのことです。常に嫌なことを言われ続けたり、理由もなく無視され続けたり、趣味や相手の考えを尊重しなかったり、人前で笑い者にしたり、相手が病気のときに冷たく接したりなどの行為がなされることです。
モラハラは、肉体的な暴力はないことから、一見単なる普通の夫婦げんかなどと思われてしまうことがあります。そのため、夫婦げんかの際の発言でも許されるレベルの話ではないということを明らかにする必要があります。
たとえば、人格非難、威圧的な発言や態度などが明確になることなどです。これらの発言や態度などの行為が継続してある場合には、「婚姻を継続しがたい重大な理由」があると判断される可能性があります。
◆何が証拠となるか・証拠の収集方法
仮に、モラハラによって、夫婦関係の継続が困難な状況に陥っている事情があったとしても、そのことを裁判上認めてもらうためには、離婚を求める側が証拠を提出する必要があります。
モラハラの事実やその経緯などについては、言った・言わないの水掛け論になり、請求する(離婚したい)側に不利な状況となる可能性が考えられます。
そこで、相手から浴びせられた暴言を録音したものや相手が物にあたっている様子を撮影したもの、相手のSNS、書面、手紙、メールなどやモラハラを受けたことを記録した日記やメモ、家族や知人に相談したメールなどを集めるようにしてください。
◆事例に対するコメント
あかりさんの夫は、あかりさんの実家へ毎日のように電話をし、あかりさんや両親や兄弟の悪口を執拗に繰り返し、挙げ句の果て嫌がらせの内容を記した手紙などを勤務先まで送付したり、言いがかりとしかいえない裁判を起こしたりなどして、あかりさんを精神的に追い詰めていますので、悪質なモラハラにあたるといえます。
また、夫は、不貞行為により、ほかの女性と子どもまでもうけていますので、婚姻関係が破綻しているといえるでしょう。そのため、あかりさんが起こした離婚訴訟は認められる可能性は高いです。ちなみに、あかりさんの場合と似た実際の裁判例では、慰謝料請求が認められています。
西村 隆志
西村隆志法律事務所 弁護士/事業承継士/上級相続診断士