何かと張り合う「長男の妻」と「次男の妻」
相続トラブルに発展するケースとして、相続人ではない第三者が登場するパターンがあります。今回ご紹介するのは、そのような家族の話です。
登場するのは、父、母、長男、次男の4人家族です。元々、仲のいい家族でしたが、二人の子どもの結婚を境に変化がありました。
二人の兄弟は3歳の年の差がありましたが、結婚したのはちょうど同じタイミング。先に次男が、その半年後に長男が結婚しました。次男が結婚式を挙げたのは、都内でも有名な老舗のホテル。家族や友人のほかにも、次男の勤める会社関係の人たちも招待した、豪華な結婚式でした。そこには、まだ籍は入れていませんでしたが、現在の長男の妻も招待されていました。
次男の結婚式の半年後に予定されていた長男の結婚式は、身内だけのアットホームな式にしよう決まっていました。しかし盛大な披露宴に触発されたのでしょうか、急遽、次男の結婚式のような式にしたいと、長男の妻は言ってきたのです。
「一生に一度のことなんだから、思い出に残る式にしたいじゃない」
妻の意向に、長男も「君が望むなら」と路線変更。都内でも人気の高い、外資系のラグジュアリーホテルで結婚式を挙げることになったのです。式本番の半年前の予定変更に、バタバタしましたが、無事、結婚式は成功しました。
しかし、この一件以来、何かと長男の妻と次男の妻が張り合うようになったのです。しかも、二人の兄弟の子どもの誕生も、ちょうど同じタイミング。結婚から2年後に、お互い第一子が生まれ、さらにその3年後には第二子が生まれました。
そうなると、今度は子育てで妻同士が張り合うように。
長男の妻 「〇〇ちゃん(次男の第1子)、中学受験とか、するの?」
次男の妻 「▲▲(都内でも有名な私立中学校)とか目指してるの。◎◎(長男の第1子)ちゃんは、中学受験どうするの?」
長男の妻 「うちは■■(都内でも有名な私立中学校)とか、いいなあと思って」
子どもの習い事、中学校受験など、ことあるごとにお互い、張り合うような会話がされました。表面上は仲良く話すのですが、その裏では……
長男の妻 「▲▲だって、無理に決まっているじゃない」
次男の妻 「■■なんて、レベルが低いわね~」
などと、相手をけなすようなことを口にしていました。このような状況に、夫である長男、次男は何も言うことはできず、次第にお互いの妻ができるだけ顔を合わせなくてもいいようにと、家族同士の交流も少なくなっていったといいます。
そんなある日のことです。兄弟の父が病に倒れ、介護が必要になりました。年老いた母が父の介護をするのは大変そうです。ちょうど長男の子どもたちは学校の寮に入っていたので、長男は妻と二人暮らし。そこで、会社に相談し、実家のある街の支社への異動を願い出ました。
「お前には、迷惑かけないから」と妻を説得。実家近くにマンションを借り、長男は妻と引越し。長男は頻繁に父の介護を手伝うようになりました。
それから5年後、父が亡くなりました。そこで大騒動が起きるのです。ひと通りの法事が終わった後のこと。母と兄弟で遺産分割の話をしているときのことです。
「お父さんからの遺言書は特にないから、決められている通りでいいかしら」と母。
「そうだね、お母さんに1/2、俺らに1/4ずつ、ということで」と長男と次男。
「不動産はどうしましょうか?」と母。
実家のほか、マンション一室を保有していました。
「実家はそのままお母さんが住むから、マンションをどうするかだね。持っていても仕方がないから、お母さんがいいなら売ってしまえば?」と次男
「俺もそれがいいと思うよ」と長男
「そうね、じゃあマンションは売って、それも3人で分けましょうか」と母が言ったとき、長男の妻が話に入ってきました。
「ちょっと待ってください。その分け方、不公平じゃありませんか?」