●適切な手順でポートフォリオを構築すれば、相場の急騰時や急落時にも落ち着いた行動ができる。
●具体的には、目標リターン、リスク許容度、投資期間を明確に決めて、税金や流動性も考慮する。
●ポートフォリオを構築すれば、各資産の取引判断は、相場変動ではなくリバランスに基づくものとなる。
適切な手順でポートフォリオを構築すれば、相場の急騰時や急落時にも落ち着いた行動ができる
今回のレポートでは、投機筋に振り回されないための投資戦略について考えます。具体的には、相場の急騰時や急落時にも落ち着いて対処できる、個人投資家向けの「ポートフォリオ」の構築方法についてお話しします。ポートフォリオとは、投資対象とする複数の資産(株式や国債など)を組み合わせたものです。また、ポートフォリオを構成する各資産の投資配分を、「アセット・アロケーション」といいます。
ポートフォリオの構築手順は次の通りです(図表1)。すなわち、①「投資目的(目標リターンとリスク許容度)」を明確に決める。②「投資制約(投資期間など)」を明確に決める。③投資目的と投資制約に沿ってアセット・アロケーションを決める、という流れです。その後は、構築されたポートフォリオに基づき投資を実行します。投資期間中は、定期的にパフォーマンスを評価し、必要に応じてポートフォリオを修正することになります。
具体的には、目標リターン、リスク許容度、投資期間を明確に決めて、税金や流動性も考慮する
ポートフォリオの構築手順について、もう少し詳しくみていきます。まず、①の投資目的には、例えば、「今の生活水準を維持する」、「特定の物品を購入する」、などがあると思われます。投資目的が決まれば、それを達成するための目標リターンが決まります。リスクについては、一般にリターンと比例関係にあり、リスク許容度は、投資期間、ポートフォリオの規模、収入の有無などによって決まります。
次に、②の投資制約には、投資期間、税金、流動性などがあります。投資期間の設定は、前述の通り、リスク許容度にも影響するため、ポートフォリオを構築する上で、重要な要素です。税金については、個々の投資家に課される税率を踏まえ、税引き後でリターンを考える必要があります。流動性に関しては、投資期間中の予期せぬ支出などに備え、流動性(換金性)の高い資産をどの程度保有するか、決めておくことも大切です。
ポートフォリオを構築すれば、各資産の取引判断は、相場変動ではなくリバランスに基づくものとなる
そして、③の投資目的と投資制約に沿ってアセット・アロケーションを決定する段階に進みます。ただ、投資目的と投資制約は人によって異なることから、アセット・アロケーションも個々の投資家によって異なります。そのため、図表2のアセット・アロケーションも、あくまで一例にすぎませんが、投資の実行にあたっては、このような配分に沿って、投資信託などの金融商品を購入することになります。
なお、投資期間中、投資資産の価値が増減し、当初の配分比率が変わることがあります。そうなった場合は、ポートフォリオの定期的な見直しの際、配分比率が大きくなった資産を売って、小さくなった資産を買い、各資産を当初の配分比率に戻します。この調整を「リバランス」といいます。つまり、ポートフォリオ構築後、各資産の取引判断は、相場変動ではなく、リバランスに基づくものとなります。そのため、投機筋の売買などで相場が大きく変動しても、落ち着いて行動することが可能となります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『投機筋に振り回されず「ポートフォリオ」を構築するには?』を参照)。
(2019年11月26日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト