貧富の差がますます激しくなる日本。子どもが将来稼げる人になって欲しい、というのは、親にとって切なる願いともいえますが、「良い仕事に就け」と闇雲に伝えるだけではいけません。まず親自身が、「お金の使い方」を子どもに教える必要があります。そこで本連載では、公認会計士林總事務所代表・林總氏の著書『年収1000万円 「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、令和時代を生きぬく子どもの育て方を解説します。

子どもに「お金を使う喜び」を見せることが大切

子どもを「1000万円稼げる子」にしたいなら、次のふたつは親が絶対に口にしてはいけないNGワードです。

 

×「うちはお金がない」

×「今日はたくさんお金を使いすぎた」

 

どちらもうっかり、誰もが習慣的に口にしてしまっている言葉かもしれません。「お金がない」というのは、大人からすれば「好きに使える余分なお金がない」という意味であって、食うに困るという意味ではありません。でも、子どもにはそれがわかりません。

 

そもそも、「自分が価値を置くものにお金を使う」「一定額を貯蓄する」「収入の範囲内で暮らす」と正しく家計を管理していれば、「お金がない」という言葉は出てきません。

 

「たくさんお金を使いすぎた」というのも、考えてみればおかしな言葉です。お金というと「使う」ことばかりに目が行きますが、「行動して楽しさや満足感を得たい」からお金を使うのであって、お金を使うこと自体が目的ではありません。

 

それなのに「ああ、たくさんお金を使ってしまった……」と自己嫌悪に陥るのは、満足感がないからです。価値の高いことに支出を集中できたら、「最高にいいお金の使い方をした」となるはずです。

 

親が満足度の低い支出を繰り返していると、

 

お金を使う(行動する) → 後悔する

 

といった負のサイクルが子どものなかに刻み込まれます。

 

自分が価値を置くものにお金を使う喜びを知らないまま大人になってしまうと、行動するとお金が減るからと家で寝てばかりいたり、ただひたすらお金を貯め込んだり、やみくもにお金を稼ぐことに執着したり……と、お金に歪んだ思いを抱かせてしまうのです。

 

「お金がない」「お金を使いすぎた」というふたつの言葉が、つい口をついて出てしまうようなら、親自身が自分のお金の使い方を振り返ってみる必要があります。

 

自分が価値を置いている行動をする → そのことにお金を使う → 自分も周りも楽しい、満足

 

といったサイクルをつくっていくことが、子どもに正しいお金の使い方を示す第一歩です。「あれをやめてこっちを買ってよかったね!」「最近、適当に外食するのをがまんしてたから、今日は〇〇シェフのお料理食べられるね。大満足だね!」と、満足度の高い使い方を見せていくことは、非常に大切な教育です。

「フェラーリ君」「土地持ちさん」はお金持ちなのか?

子どもを年収1000万円といわず、もっともっとお金持ちにしてあげたい。そう思う方もいるかもしれません。しかし、「お金持ち」とはそもそもどんな人のことなのでしょうか。

 

年収3000万円以上、フェラーリを乗り回し、高級ワインに詳しいとくれば、「あの人はお金持ちだね」と言われます。一方で、先祖代々の土地に二世帯住宅を建てて住んでいる人などは、年収はそれほどではなくても莫大な財産を持っています。どちらが本当のお金持ちなのか。答えは、「どちらもお金持ち」です。が、「お金持ち」の種類が違うのです。

 

フェラーリ君・フェラーリさんは、収入が多いことにかけてはトップクラスですが、住宅ローンなどの借金を抱えている可能性があります。土地持ち君・土地持ちさんは、資産家ですが年収は人並みです。

 

私が思うに、お金持ちとは「稼げるお金が多い人」ではなく、「使えるお金が多い人」、つまり「手元に使える現金がある人」ではないでしょうか。

 

となると、借金を抱えている可能性のあるフェラーリ君・フェラーリさんは、当然ながら使える現金は少なくなります。住まいにお金をかけなくてすみ、不動産からの家賃収入や株式の配当といった不労所得が得られる土地持ち君・土地持ちさんのほうに、軍配が上がります。

 

ただし、土地持ち君・土地持ちさんのなかには、所有しているのが「お金を生まない不動産」ばかり、という場合もあります。

 

「フェラーリ君」「土地持ちさん」はお金持ちなのか?
「フェラーリ君」「土地持ちさん」はお金持ちなのか?

「幸せなお金持ちかどうか」は、お金の使い方でわかる

自分の子どもに目指させたい「幸せなお金持ち」とは、どういう人たちなのでしょうか。親の土地に住んでいるような「土地持ち君・土地持ちさん」、あるいは親の財産から不労所得を得ていて、しかも本人も稼ぐ力の高い「スーパー土地持ち君・スーパー土地持ちさん」は、〝そういう星のもとに生まれた人たち〞なので、目指そうと思ってなれるものではありません。

 

かといって、いくら稼ぐ力が大きくても、見栄を張るためにお金を使っているかのような「フェラーリ君・フェラーリさん」は、幸せなお金持ちとはいえません。「幸せなお金持ちかどうか」は、お金の使い方にあらわれます。

 

支出=価値観なのです。支出=教養に裏付けされた行動ともいえます。

 

ブランド品を買いあさり、ハワイに愛人を連れてゴルフに行くというお金の使い方をする一部のお金持ちもいるようです。なかには、こうした暮らしにあこがれる人もいるかもしれませんが、私はそれがお金持ちのゴールだというなら、お金持ちとはなんと貧しい精神の持ち主かとがっかりしてしまいます。私は「幸せなお金持ち」をこう定義します。

 

●自らの仕事をもって人々に価値を提供してより多くのお金を稼ぎ、世の中にも貢献できる

●得たお金を、自分の価値を置いているものに集中させて使い、人生を楽しむ

●お金を稼ぎながら、さらに勉強して経験を深め、自分の教養や自分の仕事の価値を高めていく

 

つまり、「よいお金の回し方」をしている人たちです。私がお付き合いのある幸せなお金持ち君・幸せなお金持ちさんたちは、総じて生活そのものは質素です。年収数千万円であっても、3000円のデジタル時計に、量販店で買ったスーツ姿、という人はめずらしくありません。

 

ただし、「選択」と「集中」の意識は人並みはずれています。自分が価値を感じるものやコトを心底自覚し、支出を集中させている。何もかも高級品、贅沢三昧という人は、むしろ少ないのです。

 

アメリカ富裕層研究の第一人者であるニューヨーク州立大学のスタンリー博士とダンコ博士が、1万人以上の億万長者を調査した『となりの億万長者〔新版〕成功を生む7つの法則』(早川書房)には、次のようなことが書かれていました。

 

●億万長者の半分は140ドル以上の靴を買ったことがない

●300ドル以上の靴を買ったことがあるのは、わずか1割

●億万長者の半分は235ドル以上の腕時計も買ったことがない

●1万5000ドル以上の時計を買ったことがあるのは、たったの1%

●億万長者の8割は4万1300ドル以下の自動車しか買ったことがない

●彼らの半分は高級住宅街に住んでいない

 

これらの結果は、私の実感と驚くほど合致しています。お金持ちほど無駄なお金を使わず、これぞというものに支出を集中させることがわかります。ちなみに高級住宅街に住まないのは、「そういう場所に住むと、つい隣近所の人と見栄を張り合ったりして、お金が貯まらないから」だそうです。

 

 

林 總

公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授

 

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

林 總

文響社

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