家具や車などの一般動産の評価額は「時価」で算出
財産には多種多様なものがあります。相続税の計算においても、また相続人が相続税を納めなくてもよい範囲の遺産分割においても、その多種多様な財産の額をいったんは評価しないといけません。それは税法において規定されている財産評価基本通達にもとづいて評価されます。
財産評価基本通達は、相続はもちろん、贈与、通常の取引、担保の設定などで財産を評価することが求められる場合の基準となるものです。一方、世の中には、「評価方法に定めのない財産」もあります。そこで、土地建物・現預金・金融商品のほかの財産について、評価の基本を見ていきましょう。
家具や車などの一般動産の評価額は、基本的には相続の開始日の時価で決まります。なお、この場合の時価というのは、相続の開始時点で同じ程度のものを入手する(車であれば同じ車種、同じ年式の中古車を購入する)ために必要となる金額のことです。
同じものを相続の開始日時点で入手できない動産の場合は、相続開始時における新品の価格から、減価償却相当額を控除した価格で算出します。
書画や骨董品、貴金属などについても、一般動産と同じように相続の開始日時点の時価で評価額が決まります。ただし、書画や骨董品、貴金属については専門家の鑑定が必要です。また、いわゆる金の延べ棒などの地金については相続開始日の取引価格で算出されます。
仮想通貨は「評価方法に定めのない財産」に該当
故人がビットコインに代表される仮想通貨(暗号資産)を保持していた場合、相続人がその電子通貨を正しく使用することができるのであれば、電子通貨はれっきとした財産として評価できることになります。しかし、財産評価基本通達にはその規定などがないので、仮想通貨は「評価方法に定めのない財産」に該当することになります。
仮想通貨の取引によって得た所得については、いくら儲かったか、そのときの所得税は?と考えることもできますが、仮想通貨という財産そのものを評価する方法として決まったものはないのです。
なお、その他の種々のポイントやソーシャルゲームのゲーム内通貨、ゲームアカウントそのものなどについては、現実的に売買されて価値のあるものも存在します。しかし、これらは公式な売買とはいえず、この場合は財産評価できないものになるかもしれません。
「適格退職年金」は雑所得としての扱いに
年金については、未支給年金を相続財産に加えるべきかどうかと考える人もいます。未支給年金とは、故人に対して支払われるはずだった年金が残っている場合に、相続人が代わりに受け取る分の年金をいい、相続人が自己申告を行わなければ受け取れません。
この未支給の国民年金は故人から受け継いだ財産ではありますが、相続人が自己の権利として請求するものとして相続税の課税対象にはなりません。ただ、年金自体にかかる所得税の課税対象にはなるため、相続人の確定申告時に一時所得として受け取った未支給年金の総額を記載する必要があります。国民年金・個人年金ともに、分割・一括での受取りにかかわらず、一時所得として課税対象となります。
では、適格退職年金は財産として評価するのでしょうか。適格退職年金とは、会社が退職金を積み立てるしくみで、生命保険会社や信託銀行などの金融機関を利用して積み立てたもののうち国税庁が承認したものを指します。外部の金融機関に積み立てるので、財産は会社のものとは別に管理されます。
社員側が実際に適格退職年金を受け取った場合には公的年金として扱われるので、雑所得となります。退職金として受け取ったものは退職所得です。ですから、その適格退職年金の相続に関しては、一般の年金や退職金と同じような扱いで評価されることになります。未支給年金は相続税の課税対象ではなく、死亡退職金の場合は「500万円×法定相続人の数」を差し引いた額が相続税の課税対象になります。
みずから特許発明を実施している場合の評価方法は?
特許権はその存続期間内であれば相続でき、相続税の課税対象になります。財産評価基本通達でも、特許権の評価について具体的な方法を定めています。
特許権には、特許を受けた発明を独占的に実施できる権利(実施権)があります。みずから特許発明を実施している場合の評価方法は、その実施をしている人の営業権の価額に含めて評価します。営業権の価額はその事業の超過収益をもとに算定しますが、超過収益には特許発明の実施による収益も含まれていると考えられます。
参考までに、その営業権の評価方法を紹介します。営業権の価額は、
・超過利益金額×営業権の持続年数(原則10年)に応ずる基準年利率による複利年金現価率
で計算します(基準年利率、複利年金原価率については国税庁が発表する個別通達で確認します)。超過利益金額は、
・平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額- 総資産価額×0.05
で算出します。平均利益金額は過去3年間の平均所得とし、将来の不確実性を見込んで0.5倍します。標準企業者報酬額は、平均利益金額が1億円以下の場合は「平均利益金額×0.3+1000万円」など、財産評価基本通達に規定されています。
純資産価額の0.05倍の額を差し引くのは、資産の運用利回りによる利益を除くためです。これらの金額から求めた超過利益金額から複利の金利にあたる額を割り引いた額が営業権の価額ということです。
なお、医師や弁護士などのように、その人の技術や手腕または才能などを主とする事業に関連する営業権は、その人の亡くなることにより消滅するものです。そのため、相続税法上の財産としては評価しません。
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