2025年に「65歳以上の5人に1人」が認知症…「老い支度」を

誰しもが考えなくてはならない、相続問題。大切な遺産の受け継ぎが「争続」にならないよう、事前に知識をつけておくことが大切です。本連載は、円満相続を応援する税理士の会の著書、『ゼロからわかる相続と税金対策入門』(あさ出版)より一部を抜粋し、改正相続法に対応した相続対策をご紹介します。

「認知症」になったら生前対策はできない?

高齢者であればあるほど、遺言書は自分が元気なうちに作成しておきましょう。きちんとした遺言書があれば、相続における多くのトラブルを事前に防ぐことができるといっても過言ではありません。

 

高齢者にとっては、「自分が死んだときの話なんて・・・」とつい避けてしまいたくなる気持ちも理解できます。しかし、財産を残す人の気持ちや考えが伝わっていないと、必ずといっていいほど相続人の間に〝不協和音〟が生じます。そうならないためにも、「誰にどの財産を相続させるか」という考えを、自分が元気なうちに遺言書に残しておくべきです。

 

遺言書は、故人の最終の意思を記載するものですから、考えが変わったら、何度書き換えてもかまいません。遺言書を書くたびに前の遺言は撤回すると書いてもいいですし、撤回すると書かなくても、最新の遺言書の記載と矛盾する部分があれば、その部分に限り、過去の遺言書は撤回されたものと扱われます。考えが変わったら、何度でも遺言書は書き換えたほうがよいでしょう。

 

65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計について見ると、2012年は認知症高齢者数が462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人でした。ところが、2025年には約5人に1人になるとの推計もあります(厚生労働省『2017年版 高齢社会白書(概要版)』より)。

 

(各年齢層の認知症有病率が2012年以降、上昇すると仮定した場合) ※( )内は認知症有病率、『2017 年版高齢社会白書・概要版』より
[図表3]65歳以上の認知症患者の推定 (各年齢層の認知症有病率が2012年以降、上昇すると仮定した場合)
※( )内は認知症有病率、『2017 年版高齢社会白書・概要版』より

 

このデータに見るように、認知症は、多くの高齢者がかかる病気・症状なのです。認知症になってしまったら、遺言書の作成や財産のたな卸、生前贈与といった行為に支障をきたすことがあります。もちろん、遺産分割の生前の話し合いに満足に加わることができないかもしれません。平均寿命は延びているといっても、その当人には判断能力がなくなってしまうので、事実上、相続の生前対策がむずかしくなってしまうのです。

 

十分な話し合いができないのは、本人にとっても家族にとってもつらいもの。ぜひ、自分の〝老い支度〟の一環として、元気なうちに遺産についての話し合いをしてみてください。

成年後見制度の限界

「認知症になってしまったら、成年後見制度を利用すればいいじゃないか」

 

そう考える人もいるでしょう。しかし、成年後見制度は家庭裁判所に任命された後見人が本人に代わって財産の管理や保全をすることを目的としています。すなわち、財産を維持することに主眼が置かれています。

 

そのため、不動産の有効活用を考えたり、生前贈与を活用したり、前述の信託契約の活用などについては、有効な対策をとることがむずかしくなります。

 

それによって多額の相続税の納税負担を強いられるようなことにでもなれば、損な選択をしてしまうことになってしまいます。

 

遺産分割において揉めるモトは何か。それは、高齢者となった親が遺産分割の方針をしっかりと決めておかないことにあります。実際には、細かな分割の方法・指定などについてはすぐに結論を出せないかもしれません。それでも、

 

「私が死んだときは、すべての財産をお金に換え、そのお金を法定相続分で分配してほしい」

「すでに亡くなった二男には子が1人いるので、その子には十分配慮してあげてほしい」

「自宅は居住用として、夫が住み続けられるようにしたい」

「長女には看護や介護、また仕事でもずいぶん苦労をかけたから、多めに財産を渡したい」

「長男の嫁も介護などで苦労をかけたから、法定相続人ではないけれども預金から一定のお金を渡したい」

 

など、「こうしたい」という意思表示を明確にしておくと、残された相続人としても遺産分割協議を進めやすいものです。亡き親の遺志であれば、たいがいの子は尊重するもの。そうすれば、遺産分割をめぐる紛争も少しは減るかもしれません。

 

 

【円満相続を応援する税理士の会】
蛸島 一伸 / 伊藤 惠悦 / 高野 好史 / 田中 久夫 / 加藤 元弘 / 鈴木 秀雄 / 佐藤 純一 /
岡田 誠彦 / 池田 俊幸 / 児玉 洋貴 / 加藤 眞司 / 髙橋 光彦 / 田村 智宏 / 永野 淳也 /
平井 寛子 / 伊藤 由一 / 吉田 勤 / 末吉 英明 / 内芝 公輔 / 光廣 昌史 / 辻本 聡 /
小屋敷 順子 / 坂元 隆一郎

相続税を専門に取り扱う珍しい税理士事務所。年間1000件(累計4,000件以上)を超える相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスを誇り、中小企業オーナー、医師、地主、会社役員、資産家の顧客層を中心に、低価格で質の高い相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策提案等を行なっている。各種メディアやマスコミから取材実績多数有り(※写真は代表社員 荒巻善宏氏)。

税理士法人チェスター http://chester-tax.com

著者紹介

連載円満相続を実現する「遺産分割」の基礎知識

ゼロからわかる相続と税金対策入門

ゼロからわかる相続と税金対策入門

株式会社エッサム 税理士法人チェスター 司法書士法人チェスター CST法律事務所 税務調査を支援する税理士の会

あさ出版

40年ぶりに民法大改正! 改正相続法に完全対応した一冊。この度、相続分野について大きな見直しが行われます。本書は、関心の高い相続法の見直しを巻頭トピックとして紹介しつつ、相続と相続税対策を基本的な内容を解説する入…

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