富裕層も「税逃れ」できない時代に…国外財産調書制度の衝撃

2019年7月、大阪国税局に会社役員が告発された事件が世間を騒がせた。海外口座に所有する預金7,300万円を国外財産調書に記載していなかったのである。現在、国税庁は特に国外財産を持つ富裕層への税務調査を強化しているようだ。本記事では、国税庁が提出を求める「国外財産調書」について解説する。

5,000万円超の国外財産を所有する国内居住者に義務

国外財産調書とは、日本国内の居住者が、その年の12月31日時点において、5,000万円を超える国外財産を所有している場合に提出しなければならない調書です。近年、国外に財産を所有する方が増え、その申告漏れが指摘されるようになったことを背景として、平成25年分より提出が必要となりました。

 

国税庁の報告によると、平成29年分の提出状況は9,551件、財産の合計額は3兆6,662億円となっています。その内訳は、有価証券1兆9,252億円、預貯金6,204億円、建物4,038億円と、金融資産の割合が高くなっています。

 

◆自ら作成・報告する調書…その優遇措置とペナルティ(加重措置と罰則)

 

この調書は、提出する必要のある人が自ら作成し、報告をする調書です。したがって、その適正な提出を促すために、優遇措置とペナルティが設けられています。

 

期限内に国外財産調書を提出した場合には、調書に記載した財産について所得税等または相続税の申告に漏れが生じた場合であっても、その国外財産に関する部分の過少申告加算税等については5%減額されます。

 

期限内に国外財産調書を提出しなかった、または記載すべき国外財産の記載がなかった場合において、所得税等について申告漏れに係る部分の過少申告加算税については5%加算されます。

 

※亡くなった方の所得税(準確定申告)と相続税については、優遇措置のみで加重措置の適用はありません。

 

さらに、調書に虚偽を記載、または正当な理由なく期限内に調書を提出しない場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

 

◆日本の金融機関の在外支店に預けた預貯金は報告対象、仮想通貨は報告対象外

 

国外財産調書に記載すべき国外財産は、その年の12月31日において国外に所有する財産が対象となり、次のそれぞれの所在により内外判定を行うよう例示されています。

 

●土地建物等の不動産、その他動産:その不動産、動産の所在

 

●金融機関に対する預貯金等:預貯金等の受入れをした営業所、または事務所等の所在

 

●有価証券:管理口座等が開設された金融機関取引業者等の営業所等の所在

 

●貸付金債権:債務者の住所又は本店等の所在

 

●保険金:その保険の契約に係る保険会社等の本店等、または主たる事務所の所在 

 

例えば、日本の金融機関の海外支店に口座を開いて預貯金の預け入れをし、その預貯金に対して現在も利息がついているという場合には、その預貯金は国外財産調書の記載対象になるとともに、利子所得の申告漏れがないかについても確認が必要となります。

 

また、海外赴任中に外国の生命保険会社(国内に営業所等はない)と満期返戻金のある保険契約をしている場合、その返戻金相当額が記載対象となります。

 

そのほか、国外にあるリゾート施設の会員となるために支払った預託金(直ちに返還を受けることができるもの)や、国外赴任した際に加入した確定拠出年金で、将来年金として受け取る予定のものについても記載の対象となることがあります。

 

なお、国外の仮想通貨取引については、財産を有する人の住所等により内外判定をするため、国外財産調書の記載対象にはなりません。

 

調書に記載する金額については、その年の12月31日における「時価」、または適正な「見積価額」とされています。「時価」は、鑑定評価額や証券市場相場など通常成立すると認められる取引価額であるため、実際には「見積価額」を記載することが多いと思われます。外貨表示の国外財産は、その年の12月31日時点の為替相場(TTB)により円換算をします。

国際的な「課税逃れ」への対策を強化

2019年7月、海外口座の預金7,300万円を国外財産調書に記載しなかったとして、会社役員が所得税法違反とともに国外送金等調書法違反の疑いで、大阪国税局に告発されました。この事件はニュース等でも大きく取り上げられ、記憶に新しいところです。

 

国税庁は、富裕層の申告漏れの所得や資産について監視や調査を強化しており、特に海外投資をしている富裕層への税務調査が増加しています。

 

また、CRS(共通報告基準)の導入により、海外の金融機関の預貯金等の残高、利子・配当の受取額等の情報を102ヵ国の地域の税務当局と交換できるようになり、実際の税務調査でもこの情報が利用されているといわれています。

 

国際的な「課税逃れ」への対策を強化
国際的な「課税逃れ」への対策を強化

 

◆確定申告の時期に財産債務調書の提出についても検討を

 

今年も年末が近づき、年明けには確定申告の時期となります。海外に財産を所有する方は、今一度その内容等を確認し、必要であれば国外財産調書の提出を検討しましょう。国外財産調書の提出期限は、その年の翌年の3月15日です。確定申告書の提出義務がない方も、国外財産調書の提出義務がある場合には提出が必要ですので、ご注意ください。

 

 

古沢 暢子

税理士法人田尻会計 税理士

 

税理士法人田尻会計 税理士

平成28年3月税理士登録 日本FP協会AFP 登録政治資金監査人

横浜国立大学教育学部卒業。一般企業の経理部を経て、平成15年税理士法人田尻会計入社。
法人及び個人のお客様の監査・決算業務とともに、現在は相続・事業承継業務を多く担当する。
毎月お客様を訪問し丁寧に話を聞くことで、適切なアドバイスができるよう心掛けている。

著者紹介

連載相続専門税理士が事例で解説!「相続・事業承継」の進め方

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