人口減少の局面になり、厳しさが増す不動産投資。今後、どこが投資エリアとして有望なのか。不動産投資には欠かせない要素である「人口」や「不動産取引の現状」などをもとに、検討していく。今回紹介するのは、大阪市北区「梅田」。

「LINKS UMEDA」オープン…再開発はまだ続く

JR大阪駅北側の再開発地区「うめきた」に、11月16日、ヨドバシカメラによる複合ビル「ヨドバシ梅田タワー」が開業する。高層階は「ホテル阪急レスパイア大阪」が入り、高速バスターミナルも整備されるが、目玉なのが大型商業施設「LINKS UMEDA(リンクス ウメダ)」。地下1階~8階で構成され、延べ床面積は約22万㎡(66,549坪)、売り場面積は9万㎡(27,200坪)と日本最大級。日本初・関西初など約200店舗が出店する。

 

大阪駅北地区には、もともと梅田貨物駅があったが、特定都市再生緊急整備地域(都市再生特別地区の適用可能地域)に指定され、現在、大規模な再開発が進められている。総面積は約24ヘクタールを誇り、「大阪最後の一等地」と言われてきた。

 

2013年、先行開発区域の7ヘクタールに複合商業施設「グランフロント大阪」が開業。南館(タワーA)と北館(タワーB・タワーC)は、ショッピングモールやオフィス、ホテル、コンベンション・センター、マンションなどで構成されている。

 

それに先立ち、駅周辺の再開発も進行。2011年、JR「大阪」駅を含む複合施設「大阪ステーションシティ」が誕生。サウスゲートビルディングは「大丸梅田店」や「ホテルグランヴィア大阪」で、ノースゲートビルディングは商業施設「ルクア1100」(旧JR大阪三越伊勢丹)」などで構成されている。また、「阪急百貨店うめだ本店」も施設の老朽化もあり建替え。2012年、高さ180mを超えるオフィスビルを有する百貨店へと生まれ変わった。

 

もともとこの地域にはJR「大阪」駅のほか、阪神「大阪梅田」駅および阪急「大阪梅田」駅、大阪市高速電気軌道「梅田」駅、「東梅田」駅、「西梅田」駅、JR「北新地」駅が立地。国内屈指の交通の要所だ。

 

またこの一帯は「キタ」と呼ばれ、「ミナミ」と呼ばれる難波、心斎橋と双璧をなす繁華街を形成。百貨店やファッションビル、ホテル、オフィスビルなどが林立している。都市空間は地下にも発展し、「ホワイティうめだ」や「ディアモール大阪」「堂島地下センター」などの巨大地下街を形成。その規模は「梅田ダンジョン」と称されるほどだ。

 

「うめきた」の再開発は、現在、第2期が進行中。2期の総面積は9万㎡で、「みどりとイノベーションの融合」というコンセプトのもと、北地区と南地区に民間宅地、中央に都市公園が設けられる予定だ。

 

都市公園は4万5000㎡という圧倒的な広さで、北地区の1万6000㎡の敷地にはオフィスやホテル、イノベーション施設などを配置、南地区の3万㎡の敷地にはオフィスや商業施設のほか、MICE施設が配置される。JV9社の発表によると、街びらきは2024年の夏ごろ(民間宅地施設一部開業、都市公園一部開園)だという。

 

さらに「新大阪」と「関西国際空港」を直結する鉄道新線「なにわ筋線」が2023年に開業。「うめきた2期」エリアの地下には「北梅田」駅(仮称)が誕生しアクセスが向上する。

 

この再開発が、どれほどのインパクトをもたらすか、計り知れない。東京・六本木の人の流れを変えたと言われている六本木ヒルズは、来訪者が2億人に到達したのは、開業5年後だった。一方「うめきた1期」で誕生した「グランフロント大阪」は、それよりも短い3年10カ月で達成している。「うめきた」の全面開業の際には、それ以上のインパクトを与えるだろう。

 

「うめきた」は大阪の人の流れを変えた
「うめきた」は大阪の人の流れを変えた
迷路のような「梅田」の地下街
迷路のような「梅田」の地下街

人口が減少する大阪で、「梅田」周辺は人口増加

遡ること江戸時代以前。梅田は下原と呼ばれる低湿地帯だった。泥土を埋め立て、田畑地を切り開いたことから「埋田」と呼ばれるようになり、のちに、字面のいい「梅」が充てられるようになったと言われている。

 

今では西日本最大の繁華街に発展し、勢いでは東京を上回るといっても過言ではない「梅田」だが、不動産投資の視点では、どのようなポテンシャルがあるのか見ていこう。まず直近の国勢調査(図表1)によると、「梅田」のある大阪市北区の人口は約12万人。人口増加率は12%と大阪市平均を大きく上回る。全国的に都心回帰がトレンドになっているが、大阪においても同様の傾向が見られる。

 

出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表1]大阪市北区の人口動態 出所:平成27年度「国勢調査」より

 

年齢構成(図表2)を見てみると、7割近くが15~65歳未満という現役世代。また世帯数(図表3)を見てみると、半数以上が現役世代の単身世帯で占める。東京圏に比べて、大阪は職住近接の傾向が強い。居住者の多くが、大阪都心で働く単身者だと推測される。

 

出所:平成27年「国勢調査」より
[図表2]大阪市北区の年齢別人口の割合 出所:平成27年「国勢調査」より
出所:平成27年「国勢調査」より
[図表3]大阪市北区の世帯数 出所:平成27年「国勢調査」より

 

次に住宅事情を見てみよう。大阪市北区の賃貸住宅における空室率(図表4)は8.5%と、大阪市全体の平均11.6%を大きく下回る。また賃貸住宅の建設年の分布(図表5)を見てみると、大阪市全体と比べて、築年数の新しい賃貸物件が目立つ。都心回帰のトレンドによって、このエリアで単身者ニーズが上昇。ターゲットとする単身者向けの賃貸物件が増加した結果だと考えられる。

 

出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より
[図表4]大阪市北区の住宅事情 出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より
出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査
[図表5]大阪市北区における賃貸物件の築年数の分布 出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査

 

駅周辺に絞って見ていこう。さすがに大都会の中心だけあり、「梅田」駅周辺の物件は限られてくる。そこで徒歩20分程度のエリアを対象にして分析していく。

 

大阪市北区では1世帯あたりの人数が1.66人に対して、「梅田」周辺も1.62人と、同程度の数値になった(図表6)。交通の利便性が高く、また大規模な繁華街を形成しているため、家族層よりも単身者層に好まれる傾向がさらに強くなっている。

 

出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表6]「梅田」周辺の人口動態 出所:平成27年度「国勢調査」より

 

この地域一帯のワンルームの平均家賃は、「中津」で11.56万円、「中崎町」で8.5万円、「梅田」には該当する物件がなかった。一方1K・1DKでは「梅田」で6.3万円、「中津」で6.0万円、「中崎町」6.6万円となっている。ワンルームは、昨今、増加する単身者を狙った新築物件が多く、1K・1DKは築年数の古い物件が多いためだと考えられる。(平均家賃はいずれも、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ11月12日時点)。

 

続いて直近の中古マンションの取引から、駅周辺の不動産マーケットの状況を見てみる(図表7)。平均取引価格は3,092万円。平均平米数は44.28㎡。高所得者を狙った平米数の大きなマンションも多いのだろう。ニーズの傾向の割には、取引されている賃貸不動産の平均平米数は広い。また1平米当たりの平均取引価格は大阪市でも北区は高いが、梅田周辺はさらに平均を上回る。大阪都心らしい結果である。

 

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
[図表7]「梅田」駅周辺の中古マンションの取引状況 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

 

大阪市北区の将来人口の推計(図表8)を見ていこう。国立社会保障・人口問題研究所の推測では、大阪市の人口は減少トレンドに入っていると言われている。元々大阪は、昭和40年の国勢調査では約316万人と、300万人を超えていた。しかし都市環境の悪化から郊外へ人口流出が続き、平成12年には260万人に。その後人口増加に転じたとされてきたが、国内の人口減少と呼応するように、人口が減り始めている。

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」
[図表8]大阪市北区の将来推計人口 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」

 

一方で大阪市北区は2040年148,768人でピークに到達すると言われている。都心回帰の流れ、「うめきた開発」による魅力度の向上で、人口流入が続くからだろう。2015年を100とすると、2040年には120にまで達するのだ。

 

さらに「梅田」駅周辺の将来人口推移をメッシュ分析で見ていくと(図表9)、梅田周辺の人口増加の力強さを感じる結果に。黄色~橙で10%以上、緑~黄緑0~10%の人口増加率を表し、青系色で人口減少を表すが、「梅田」周辺は基本的に人口増加が予測されている。特に「うめきた」に隣接する駅北西側は、高い増加率を示す濃い赤が記されている。

 

出所:RESASより作成
[図表9]2015年~2040年「梅田」エリアの人口増減率 出所:RESASより作成

 

国内において、都心部にこれほど大規模な開発ができるところは残っていない。それだけに、どれ程のインパクトを与えるのか、大きな関心が高まっている。その期待感は、不動産にも好影響を与えている。「梅田」エリアでの不動産投資であれば、単身者向けの賃貸物件のほか、オフィスへの投資も選択肢に入るだろう。その空室率は現在限りなくゼロに近い。つまり満室御礼状態というわけだ。

 

大規模な再開発、人口増加の予測……、一方で不動産価格は東京都心部ほど高くなく、割安感がある。不動産投資家にとって、大阪・梅田は、選択肢に入れるべきエリアだと言えるだろう。

 

 

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