グローバル化が急速に進むなか、子どもに英語のみならず、国際感覚を直接現地で身につけさせたいと考える富裕層が増えている。本記事では、数多くの留学サポートを手がける株式会社アエルワールドで海外生活カウンセラーとして親子留学を担当する北原万紀氏が、「家族長期留学」についての最新事情を解説する。今回は、留学におけるキャリア構築の重要性等についてである。

日本人は「教育は投資」という感覚が薄い⁉

日本ではまだまだ、「学校」と聞くと子ども世代が行くものと捉えられがちですが、海外では就労経験を挟んだ大人が学校に行くことは珍しくありません。

 

高卒で働いてお金を貯めて大学に行く社会人がいたり、 やりたいことがわからない場合はギャップ・イヤーを使って就業経験や他の体験を得て進路を決めたり、転職の合間に大学や大学院に行って専門分野を深めたりと、 欧米では日本よりも教育を投資とみなす傾向が強い一面があるのかもしれません。

※ 英語圏の大学の中には入試から入学までの期間をあえて長く設定して(初夏卒業・秋入学)、その間に大学では得られない経験をすることが推奨されています。この時期にアルバイトなどをして今後の勉学のための資金を貯める人も多い一方で、外国に渡航してワーキング・ホリデーを過ごしたり、語学留学したり、あるいはボランティア活動に参加する人も多いようです。

 

例えば、会社が研究のために社員を在職させたまま派遣することもあります。この大きな違いを生み出す理由として、高学歴=高収入である認識が社会に広くいきわたっていること。そして、ひとつの専門性を積みあげるキャリア構築を主流にしていること、就職市場において新卒の価値より専門性や経験の価値が高いこと、などが考えられます。

 

世の中には様々な修士、博士がありますが、MBA(Master of Business Administration:経営学修士)は、日本でも最も認知されている学位のひとつかもしれません。とはいえ、日本国内でも取得できるMBAコースは増えました。果たして、それを海外にまで行ってやるのか、さらには家族もいるのに…となると、ハードルが高く感じられるのではないでしょうか。

 

ただ、修士・博士となると、受験の際にその領域での実務経験が入学の際に問われます。つまり、コースで出会う他の学生は、すでにその領域での経験を重ね、場合によっては専門家であることが多いのです。そうなると海外の修士・博士コースに留学の場合、普段接点のない言語環境(専門用語等)や、その土地にある「専門領域」の知識・ノウハウが、非常にコンパクトに集まってしまう特殊な空間に身を置くことになります。

 

ここでは、共通言語は「英語」+「専門知識」です。名門と呼ばれる大学・大学院では、この専門性という無形の「資産」がどんどんと蓄積されているため、世界中から優秀な教授や学生が集まり、ますますその学校の価値を上げます。そして、さらにそれが次の優秀な学生を呼び込む、という好循環が生まれているのです。

 

留学で親の学業や研究、子どもの教育を同時に実現する

弊社でお手伝いしている親子留学の中には、お父さま(またはお母さま)の方が留学を希望され、ご家族全体のビザのサポートと、お子さまの学校のお手続きをお手伝いすることも多くあります。

 

直近で一番印象的だったのは、英語教授法の修士コースをオーストラリアで履修するお母さまの留学で渡航されたご家族です。旦那さまは高キャリアでいらっしゃいましたが、「妻のサポートに回ります。子どもの海外経験としてもいい経験になるので」と、ご相談から1カ月もない間に仕事場に辞表を提出されました。

 

正直なところ、お母さまが大学・大学院に留学するというケースは、実数ではまだまだお父さまの留学ほど多いわけではありませんが、ご家族の理解と協力があれば十分に可能です。お子さま連れの留学をハードルと感じるのか、教育への投資・好機と捉えるかの違いなのかもしれません。

 

家族で渡航する際、「移住目的の家族」、「潜在的に不法滞在者になり得る家族」と間違われないよう、ビザ申請は慎重に行う必要があります。まずそれらを客観的な書面で証明できるよう、ビザコンサルタントと一緒にお客さまをサポートするのが私たちの仕事になります。滞在中の家族全体の生活費を証明する銀行残高証明や、帰国後の就労受け入れ先の証明、卒業校からの推薦状や、お勤め先のリファレンスレターなど、お客さまの状況によって書類の準備が異なります。

 

また、「研究員としての派遣が決まりました。ビザの種類と料金を教えてください」とういうご相談もよくいただきます。ただ、現在お勤めの大学や研究機関からのお給料の有無や、派遣先の海外研究機関でのお給料の有無、またその書面が適切な形式で発行されるのかなどにより、ビザの種類や申請方法が異なってきます。ご相談をいただくタイミングでは、ご本人もビザの種類の特定に必要な情報がまだわからないことがほとんどです。そのため、状況に合わせてビザの種類や申請方法を変えていく必要があるのです。

 

そういった意味で、ビザ申請は面倒な手続きとなりますが、修士・博士留学にはもちろん大きなメリットがあります。カナダやオーストラリアでは、カレッジ・大学・大学院に通学すると、その扶養者である子どもの公立校の学費が無料または低減される仕組みがあります。

 

一例として、カナダのケベック州では、通学先が語学学校でも、子どもの公立校の学費が無料になり、さらには配偶者が就労可能となるケースもあります。中国・韓国系の移民目的の家族の中は、こうした制度を活用しながら現地に滞在し、家族で永住権申請にチャレンジするケースも珍しくありません。

 

本来、永住権とは特別な権利です。移民を強く希望して、滞在中死に物狂いで努力する中国・韓国系の家族に比較すると、日本人は「何かあれば日本に帰国すればよい」という選択肢を持ったままのケースが多いです。退路を断った覚悟というより、永住権挑戦はあくまで選択肢のひとつとして考えているのが特徴です。

 

目的が「親の学業」にあれば、英語環境で子どもを育てるメリット、それが無料になる(または低減される)メリットは大きいと思います。

 

本来の目的が親の学業や研究である場合、その機会を子どもの教育にも充てたいのであれば、二つの目的を当初よりリーズナブルな費用で達成できるというメリットがあります。また、子どもの数が多い場合には、子どもがそれぞれ単身留学するよりも、生活費や学費がコンパクトに収まるので、費用面でのメリットがさらに大きくなります。

 

もちろん「学費が無料と聞いたので問合せしました」というお母さまも、時よりいらっしゃいます。しかし、学費を無料にするために英語と専門性のある勉強をするということは、当然お母さまの学費が発生しますし、子育てしながらの就学になります。相当な覚悟と努力ができるお母さまでないと続かないのが実情です。

 

また、海外では自宅でも通学においても、一定年齢以下の子どもを一人にすることを法律で厳しく禁じている国がほとんどです。現実的に考えると、両親が渡航する場合を除いて、ベビーシッターなどの人の手を借りる可能性も考えておきましょう。また、実際に学費が無料になったり、軽減されたりするかどうかは、通学する州や学区の判断によります。無料を目的にした場合、万が一制度が準備中に変更された、何らかの理由で利用できない、という場合もゼロではありません。そうした事態も想定しておきましょう。

語学学校で英語力をブラッシュアップ

もちろん「私はまずは英語力からです…」というご相談も多いです。カレッジ進学から大学進学まで、多くの学校では英語力の入学基準としてIELTSかTOEFLを採用しています。カレッジ進学でIELTSは5.5以上、大学や大学院では6.5~7.0が最低求められます(詳しくは受験希望校の受験資格をご覧ください)。

 

「英語」+「専門知識」のうち、「英語」だけが足りないのであれば、現地の語学学校がカレッジ・大学進学に必要な英語を習得するためのコースを持っていますので、渡航後の英語力アップが可能です。お子さまは現地の公立校に通学し、お父さま・お母さまは、語学学校で英語力をブラッシュアップしながら、現地でカレッジ・大学進学を目指していきます。

 

長期の親子留学や、家族の海外長期滞在を検討してみたい方には、まず、家族で通学できる語学学校への短期留学からスタートするのがおすすめです。

 

◆Global College 都市:バンクーバー(https://gcc-canada.com/

お子さまと通学可能な語学学校です。親子のプログラムであれば3歳~参加可能です。5歳から受け入れ可能なEnglish for Young Learnersは、現地の公立校に入る前に準備として通うコースです。ブリティッシュ・コロンビア州のカリキュラム内の主要教科で求められる英語力とスキルを習得していきます。

 

小さいお子さまがいても家族全員で同じ学校に通学出来る、数少ない語学学校のひとつです。世界中から過ごしやすい気候を求めて、夏に滞在者が増えるバンクーバー。日本人が少ない時期を狙うなら、各大型連休や長期休暇の後を狙うのがおすすめです。

 

◆SPLOTT SHAW LANGUAGE COLLEGE(SSLC)都市:トロント(https://studysslc.com/

ビジネスで使える英語を集中的に学んでみたい方は、スピーキング力アップに特化したビジネス英語のコースあり。教師からその場で細かい発音と文法修正の指導が入るのが特徴です。もともと起業家や法人向けに作られたカリキュラムで、クライアントに自然な形で会話に入れるようなスモールトーク術から指導しています。

 

ビジネスの現場で通用するようなプロフェッショナルレベルの会話を目指すべく、例えば現地テレビ局で撮影を見学する機会もあります。電話・メールのアポイントメントの取り方にはじまり、ビジネスマナー、ビジネスプラン作成、ビジネスライティング、会議での交渉、プレゼンやリサーチ力、議論における論述やディベートなど、幅広いトピックをコンパクトにまとめたコースです。

 

短期渡航の際、弊社ではお子さまが通学できる現地校の見学や視察をされる方が多く、中には数年後のお子さまだけの単身留学(ホームステイや寮)を決定されることもあります。旅行のように少し手軽に行ける短期留学で、親子留学、単身留学の可能性を見るのも新しい海外渡航のスタイルなのかもしれません。

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