子どもの才能を多角的に捉える「モンテッソーリ教育」。9つの才能のひとつ、「社会性」に関わる能力を伸ばすには、様々な人と交流する経験が大切です。本記事は、モンテッソーリ教育を日本人向けにアレンジ・実践する乳幼児親子教室「輝きベビーアカデミー」代表理事の伊藤美佳氏の著書、『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』(かんき出版)より一部を抜粋し紹介します。

モンテッソーリ教育とともに重視する「多重知能理論」

私がベビースクールや保育園を運営するにあたり、モンテッソーリ教育とともに重視しているのが「多重知能理論」です。

 

多重知能理論とは、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱しているもので、人間には8つの知能があるという考えです。長所や短所が個人によって違うように、人によってある知能が高かったり、ある知能が低かったりするという考え方です(『政治家、起業家、学者、作家、俳優、歌手…9つの知能の育て方』参照)。

 

ガードナー氏は、「人の能力は、IQなどの単一のモノサシで測れない」「人間は誰しも複数の知能を持っている」と言い、言語的知能、論理数学的知能、音楽的知能など、人が持つ「8つの知能」をモノサシにしています。

 

私はこの理論をベースにして日本人向けにアレンジし、独自に1つの知能をプラスした「9つの知能」を構築しました。「9つの知能」を通じ、その子どもだけが持つ才能を多角的に引き出すことを目指しています。

 

仕事や人生を円滑にする「コミュニケーション能力」

「人」の知能とは、他人の感情や意図、動機、欲求を理解して、他人とうまくやっていく能力のことで、この知能の高低がコミュニケーション力や人間関係の構築に大きく作用します。

 

幼稚園には、必ず他の子からも慕われる人気者がいます。ある子どもは人と関わるのが大好きで、登園するとカバンを放ったまま玄関で友だちがやってくるのを待っているほど。みんなで何か作業に取り組んでいるときも、絶えず友だちとお話をしているので、先生によく注意されていました。こういうタイプの子は、人に興味があるので、初対面の相手でも臆せずに話ができます。

 

こうして小さい頃から他人と関わる経験を重ねてきた子どもは、コミュニケーション力が高いので、大きくなってからも人間関係でトラブルを抱えることが少ない

 

それどころか、多くの仲間に囲まれて楽しい時間を過ごしています。

 

他人とうまく付き合っていく能力は、仕事に就いてからも重要です。

 

たとえば、営業の仕事は、人に興味を持ち、相手の感情や要望にうまく対応できる人のほうが結果は出ます。

 

もちろん、他人とあまり関わらずに済む仕事もありますが、組織で働く以上、ある程度のコミュニケーション力は求められます。

 

また、起業家やフリーランスとして働く場合も、人間関係やコミュニケーション力が仕事につながるケースが少なくありません。いずれにしても、一般的には他人とうまく関わりをもてる人のほうが、結果を出しやすいのは事実です。

 

だからこそ、子どもには乳幼児期から「人」の知能を伸ばすような体験をさせましょう。具体的には、同年代の子どもだけでなく、さまざまな年代の人とコミュニケーションをする機会をたくさん持つことです。

 

私自身の話をすると、私はキリスト教の家庭で育ったので、小さい頃から毎週日曜日は教会に出かけていました。教会には小さい子からお年寄りまで老若男女が集まります。

 

また、実家は両親の仕事柄、お客さんが多くやってくる家庭だったので、お手伝いをしながら多くの人と関わりをもちました。そのため、自然とさまざまな年代の人と話をし、他人と関わることが大好きになっていきました。

 

自分自身の経験からも、子どもたちはさまざまな年代の人と接点を持ったほうがいいと感じた私は、子どもといっしょに地域のミュージカルサークルに毎週参加することに。両親以外の大人、上級生や下級生と触れ合う経験をしたことで、娘たちは他人と関わりをもつことに苦手意識をもたなくなったように感じます。

両親以外の世代に触れると、「人」の知能が伸びる

私の家もそうでしたが、今の日本はどんどん核家族化が進んでいます。平日は同級生や先生といっしょですが、土日は両親としか関わりをもたない子どもも少なくありません。

 

家庭に閉じこもっていると、子どもは両親の価値観にしか触れられません。それは、子どものためを思えば決して好ましいことではないでしょう。

 

社会にはさまざまな価値観があります。さまざまな年代の人とコミュニケーションをとることで、多様な価値観を知り、視野を広げることができます。

 

また、大人との接触が少ないと、子どもは必要以上に大人を恐れるようになってしまいます。

 

両親以外の世代の人と触れ合うこと機会があると、大人とも臆することなくコミュニケーションがとれるようになります。

 

「人」の知能を伸ばすのであれば、乳幼児期からさまざまな年代の人が集まる場に参加することをおすすめします

 

子どもといっしょに地域のコミュニティーや趣味のサークルに顔を出したり、親子キャンプツアーなどに参加するのもいいでしょう。

 

おすすめは、親子で海外留学すること。短期間でもいいので、異国の環境で海外の人と触れ合う体験は、子どもの対人関係力に大きなプラス効果を生みます。

 

もちろん、保育園や幼稚園なども子どもにとっては、「人」の知能を伸ばす絶好の場となります。

 

入園したばかりの子どもにとって、自分よりもいろいろなことができる年上の子どもは「憧れの存在」です。尊敬のまなざしで見つめ、ぴたっと寄り添うと、そばから離れません。そうすると、年長さんが年少さんに、遊び方を教えてあげます。

 

このようなコミュニケーションを体験すると、自らが年上の立場になったとき、自分がしてもらったときと同じように、年下の子に接することができます。

 

しかし、年上の子から何かを教わるという体験をしてこなかった子どもは、年下の子が「教えて!」とやってきても、うまく相手をできなかったり、「なんでこんなことができないの!」と相手を責めたりしてしまうことがあります

 

保育園や幼稚園は、人間関係やコミュニケーションを学ぶ絶好の場ととらえることが大切なのです。

 

観察眼と洞察力…企業家適性にも繋がる「自分」の知能

「自分」の知能は、自分自身の長所や短所などを理解したうえで、目標達成や動機づけなどを自律的に行う能力です。

 

この知能が発達している人は、いわゆる「妄想タイプ」が多く、人の話を聞かずに、頭の中で深く考え、妄想が膨らんでいくようです。

 

特に、起業家は、この「自分」の知能が突出しているタイプが多いとされています。

 

起業家として成功するためには、人から言われたことをこなすだけではダメで、自分自身の頭で起業プランや戦略を考える必要があるからでしょう。

 

「自分」の知能が発達している子どもは、内省的なのでとらえどころがない印象を持たれることも多々あります。

 

私が勤めていた幼稚園にも、いわゆる〝問題児〟がいました。ボーッとして行動が遅いので、担任の先生にいつも「〇〇くん、早くして!」と注意されていました。

 

先生の間では、「全然思い通りに動いてくれない」「何を考えているかわからない」という評価になっており、特に、担任の先生にはまったく心を開かず、1年間ひと言もしゃべっていない状態でした。

 

ある日、いつものように1人でボーッとしていたその子をそばで観察していると、彼がぼそっとひとり言を言っているのが聞こえました。近づいて「どうしたの?」と話しかけてみると、「〇〇ちゃんと〇〇くんは仲がよくて、〇〇くんと〇〇くんはいつもケンカしている」といった情報を教えてくれました。

 

その男の子は一見、何も考えずボーッとしているように見えたのですが、実は、まわりのことをよく観察して、自分なりにいろいろと分析していたのです。

 

こういうタイプの子でも、成長するにつれて活発な子になることもよくあります。みなさんも心当たりがあるかもしれませんが、長い人生では内省的な時期もあれば、活発的な時期もあるものです。

 

9つの知能がバランスよく伸びていれば、何かのきっかけで違う才能が開花して、性格や好きなことが変化することは十分考えられます。

 

「自分」の知能が突出している人は、自分勝手で、コミュニケーションが苦手というイメージを持たれがちですが、実際には、その反対のほうが多いもの。

 

内省的によく考えているので、自分自身を客観的に理解することができ、自分の気持ちをきちんと表現できます。また、自分の感情に敏感である分、他人の気持ちも汲み取ることもでき、人間関係もうまくいきます。

 

以上、本連載を通じて「9つの知能」の概要を説明してきました。

 

乳幼児期にこれらの知能をバランスよく伸ばすことを心がけると、子どもはどんな環境変化の中でも才能を引き出すことができ、人生も豊かになっていきます


伊藤美佳

「輝きベビーアカデミー」代表理事

(株)D・G・P代表取締役

 

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