子どもの才能を多角的に捉える「モンテッソーリ教育」では様々な知能を伸ばすことを重視していますが、感性に関わる知能は生活の中で伸ばすことができます。本記事は、モンテッソーリ教育を日本人向けにアレンジ・実践する乳幼児親子教室「輝きベビーアカデミー」代表理事の伊藤美佳氏の著書、『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』(かんき出版)より一部を抜粋し紹介します。

モンテッソーリ教育とともに重視する「多重知能理論」

私がベビースクールや保育園を運営するにあたり、モンテッソーリ教育とともに重視しているのが「多重知能理論」です。

 

多重知能理論とは、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱しているもので、人間には8つの知能があるという考えです。長所や短所が個人によって違うように、人によってある知能が高かったり、ある知能が低かったりするという考え方です(『政治家、起業家、学者、作家、俳優、歌手…9つの知能の育て方』参照)。

 

ガードナー氏は、「人の能力は、IQなどの単一のモノサシで測れない」「人間は誰しも複数の知能を持っている」と言い、言語的知能、論理数学的知能、音楽的知能など、人が持つ「8つの知能」をモノサシにしています。

 

私はこの理論をベースにして日本人向けにアレンジし、独自に1つの知能をプラスした「9つの知能」を構築しました。「9つの知能」を通じ、その子どもだけが持つ才能を多角的に引き出すことを目指しています。

 

味の違いに敏感な乳幼児期…自然に近い味を食べさせて

「味覚」からも子どもはさまざまな情報を得ています。

 

乳幼児に離乳食を与えていると、ときどき口からペッと出すことがあります。これは、お腹いっぱいのサインでもありますが、同時に「これは食べたくない」という子どもの意思表示でもあると考えられます。

 

「うちの子どもは、新鮮な野菜しか食べないんです」「不思議と冷凍した食材は口から出してしまうんです」といったお母さんの声をよく聞きます。

 

また、昆布とかつおぶしから出汁をとった離乳食を食べていた子どもが、ファミレスのごはんにはまったく手をつけなかったという話も耳にします。

 

人工調味料の味に違和感を覚えたのでしょう。

 

このように小さな子どもといえども、本物の味をしっかり選ぶことができるのです。

 

味の違いに敏感な乳幼児期は、新鮮な野菜など、できるかぎり自然に近い味を口に入れるよう心がけることが大切ではないでしょうか。

 

「嗅覚」も乳幼児にとっては重要な感覚です。生まれて間もない赤ちゃんは視力が弱いため、「嗅覚」を頼りにします。赤ちゃんがお母さんに抱っこされると落ち着くのは、お母さんの匂いを嗅いで安心するからだと言われています。

 

乳幼児期にいろいろな匂いを嗅いで刺激を受けることで、大人になってからも匂いからさまざまな情報を得ることができます。

 

そのためにも、積極的に匂いを感じとれるような機会を、親がつくってあげるとよいでしょう。

 

たとえば、外に出て、風の匂いを感じてみる。家の窓を開けて、新鮮な空気を入れることを習慣にしてみてもいいでしょう。花や植物の香りをいっしょに嗅いでみるのも効果的。その際、「ローズマリーの匂いだね」「ミントの香りだね」と言葉にすることで、経験と言葉が一致して、子どもはその匂いを認識できるようになります。

 

身近なところでは、料理や食材の匂いもおすすめ。私の運営する保育園では、わざと調理室の窓を開けておき、「あっ、カレーの匂いがしてきたね」と子どもたちに匂いを嗅がせています。食べ物の匂いが食欲につながるという効果もあります。

 

料理が上手な人は味覚だけでなく、嗅覚もすぐれているため、大人になってからも役立つ能力で、また、不快な匂いにも敏感になるので、身のまわりを清潔にするようにもなります。

 

触って実感することで「認識力」がアップする

次は「触覚」です。

 

子どもは、とにかくいろいろなモノを手で触りたがります。でこぼこした壁、スカートの裏地、ペットボトル、草花・・・などなど。子どもたちは実際に手でモノに触れることによって、ザラザラ、ツルツル、熱い冷たいといった情報を得て、自分なりに研究しているのです。また、モノに触れて情報を得ることによって、脳の神経細胞がつながっていきます。

 

特に都会の子どもたちは、自然に触れる機会が少ないので、虫にほとんど触ることなく、成長していくケースが少なくありません。

 

すると、学校の授業の中で「チョウチョウは、卵からかえると、幼虫、さなぎの段階を経て成虫になる」と教わっても、触ったことがないから実感がともなわず、脳にインプットされにくくなります。最近は魚を触ったことのない子どもも多いので、魚料理が苦手という人も少なくありません。

 

お母さんの中には、「公園の砂場は汚いから遊ばせたくない」という人が一定数います。砂場でさえダメなのですから、泥遊びなどはもってのほかです。

 

しかし、砂や泥に触ることなく育つと、大人になってもそれらを触ることに抵抗を感じる可能性が高くなります。

 

もちろん、触れなくても生きていくことはできるでしょうが、それが子どもにとって本当によいことなのか考えてみる必要はあります。

 

なお、子どもが興味をもって何かに触っているときは、「ツルツルだね」「ザラザラだね」などと言葉で表現してあげてください。言葉と感触が一致して、子どもの認識力がアップします。

「音楽」の知能が高い人は、言葉の扱いにも秀でる

「音楽」の知能は、音楽の種類やリズム、音程などを識別する能力のことで、この知能が発達していると、作曲や演奏が得意になります。

 

また、「音楽」の知能が高い人は、聞く力も向上しますから、言葉を扱う能力にも秀でています。

 

音楽に関する才能は、乳幼児期の環境や体験に大きく左右されると考えられています。

 

赤ちゃんの頃からさまざまな音楽を聴いていた人は、リズム感が身についているので、大人になってからも歌ったり、演奏したり、踊ったりすることが得意です

 

反対に、乳幼児期に「音楽」を楽しむ機会がなかった子どもは、将来、リズム感が悪かったり、音楽に苦手意識をもったりする傾向が強いようです。いわゆる音痴も、乳幼児期の体験が影響していると考えられます。

 

「音楽はあまり得意ではない」というお父さん、お母さんもいるかもしれませんが、そういう家庭こそ、育児に音楽を取り入れて、子どもの「音楽」の知能を伸ばしてあげてください。

 

音楽の知能を伸ばすといっても難しく考える必要はありません。

 

朝は落ち着いたクラシックの曲を流し、片づけや掃除をしているときはポップな音楽を流すというように、生活に音楽を取り入れるだけでも身近な存在になります

 

曲はお父さん、お母さんにとって心地よいものでもかまいませんが、できることなら長い年月を経て多くの人に聴かれているクラシックの名曲がよいでしょう。

 


 

伊藤美佳

「輝きベビーアカデミー」代表理事

(株)D・G・P代表取締役

 

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