子どもの才能を多角的に捉える「モンテッソーリ教育」では、知識を詰め込むのではなく、様々な知能を伸ばすことが大切です。本記事は、モンテッソーリ教育を日本人向けにアレンジ・実践する乳幼児親子教室「輝きベビーアカデミー」代表理事の伊藤美佳氏の著書、『モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方』(かんき出版)より一部を抜粋し紹介します。

モンテッソーリ教育とともに重視する「多重知能理論」

私がベビースクールや保育園を運営するにあたり、モンテッソーリ教育とともに重視しているのが「多重知能理論」です。

 

多重知能理論とは、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱しているもので、人間には8つの知能があるという考えです。長所や短所が個人によって違うように、人によってある知能が高かったり、ある知能が低かったりするという考え方です(『政治家、起業家、学者、作家、俳優、歌手…9つの知能の育て方』参照)。

 

 

ガードナー氏は、「人の能力は、IQなどの単一のモノサシで測れない」「人間は誰しも複数の知能を持っている」と言い、言語的知能、論理数学的知能、音楽的知能など、人が持つ「8つの知能」をモノサシにしています。

 

私はこの理論をベースにして日本人向けにアレンジし、独自に1つの知能をプラスした「9つの知能」を構築しました。「9つの知能」を通じ、その子どもだけが持つ才能を多角的に引き出すことを目指しています。

 

「自然」の知能を伸ばし、感受性豊かな子に

「自然」の知能とは、自然や人工物の種類を識別する能力のことです。自然は変化に富み、表情豊かです。名前もついていないような小さな山でも、花や木々が四季によってさまざまな表情を見せてくれます。

 

こうした自然に触れることによって、感性やセンスが磨かれます。

 

敏感期の子どもは好奇心旺盛なので、自然の小さな変化や違いにもよく気づきます

 

たとえば、私のベビースクールに通っているお子さんは、イチョウの葉を拾うことに夢中になっていたとき、葉の形が2種類あることに気づき、お母さんに報告しました。ここではじめて、お母さんはイチョウの葉は雄株と雌株で形が異なるということを知りました(ただ、実は葉の形で見分けられるというのは俗説で、本当は花の形で見分けられるそうです)。

 

実際に、自然を五感で楽しみ、じっくりと観察することで、子どもたちはさまざまな発見をし、刺激を受けます。そうした体験を積み重ねることによって、「感じる心」が磨かれていきます

 

大人になってから美しい風景を実際に見たり、写真で見たりしたとき、「ウワーッ」と心の底から感動する人がいる一方で、同じ風景を見てもあまり感動しない人もいます。こうした差は、「感じる心」の違いから生まれます。

 

もっといえば、乳幼児期に、「自然」の知能を伸ばしてきたかどうかの違いだと考えられます。

 

「自然」の知能が発達している人は、「今日の雲は、ユニークな形だね」「今日は月が明るいね」「雨の降りそうな匂いがする」といった言葉が自然に出てきます。「普通の人が見えないものを感じる力」があります。

できるだけ多くの自然に触れさせ、知的欲求を満たす

「自然」の知能を伸ばすには、敏感期である乳幼児期に、できるだけ多くの自然に触れさせ、知的欲求を満たしてあげることが大切です

 

散歩中に子どもが「アリさんだっ!」といって、アリの行列に夢中になったら、できるだけ付き合ってあげる。道に落ち葉を踏んで「カサカサ」という音を楽しんだり、落ち葉の微妙な色の違いを子どもと観察したりしてもいいでしょう。

 

自然のすばらしさを子どもと一緒に楽しむ。そんな気持ちで外に出かけてみてください。

 

「外に出ると、おもちゃ屋さんに行かなくても、たくさん遊ぶものが見つかりますね。私も『自然ってこんなに美しくて、不思議なものだったんだ!』と改めて気づかされました」などの感想をスクールの親御さんからもらうこともあります。

 

自然は遊びの宝庫。ありふれた景色にすぎなかった木々や花も、見方を変えるとまったく違うものに見えてくるはずです。

「感覚」の知能を磨いて、センスや表現力を身につける

センスのある子を育てるには?―「感覚」の知能


「感覚」の知能は、五感を駆使して、さまざまな情報を敏感に受け取れる能力のことです。この知能だけは多重知能理論の中に該当する項目はなく、私がオリジナルで付け加えたものです(多重知能理論の他の知能と重複する部分は存在します)。

 

これまでの私の経験から、五感でさまざまなことを感じ取る体験をしてきた子どもほど、センスがよく、表現力が豊かな大人に成長する傾向があると強く感じています

 

ほんの一例ですが、絵を描くときの色の組み合わせがユニークだったり、服を選ぶセンスなども優れていたりするものです。

 

いわゆる「センス」というものは、生まれつきのものというイメージがあるかもしれませんが、私は乳幼児期からの経験、つまり五感でいろいろな情報を感じとってきた体験から形成されるものだと考えています。

 

「あの人は何をするにもセンスがあるよね」と評される人は、乳幼児期から五感をフルに使う経験を積み重ねてきたからこそ、まわりの人が一目置くような選択ができるのだと思います。また、「感覚」の能力が秀でている人は、人の気持ちの変化にも気づきやすく、コミュニケーション力が高いという特徴も見られます

 

では、どうすれば、「感覚」の知能を伸ばすことができるのでしょうか。五感をひとつずつ分解して見ていきましょう。

子どもは、実物を見て「目の前のもの」を理解する

「視覚」から情報を得るには、さまざまなものを見ることが大きな刺激になります。外出して自然や風景、人を見たりするのはもちろん、美術館などで本物の芸術に触れたりするのもいいでしょう

 

また、前述したように実物を見ることで、子どもは目の前のものが何であるかを理解します。ですから、絵本などの教材を使うと同時に、実物を見に出かけてみる。たとえば、動物の絵を見せたあとに、実物を見に動物園に出かけると、「これがゾウさんだ!」とイメージと実物が結びついていきます。

 

「聴覚」は「音楽」の知能とも関連してきますが、耳からさまざまな情報を収集することで、音の大小や音色などの区別がつくようになります。また、ヒアリングの力も発達するので、言語能力もアップしていきます。

 

「音楽」の知能のところでも述べましたが、乳幼児期はさまざまな音楽、特にクラシックなど一流の曲を聴くことが大切です。

 

また、音楽をただ流しておくだけでなく、子どもが能動的に音楽に触れられるように、親子でいっしょに歌う体験もしましょう

 

歌やリズムに合わせて手や体を動かす「手遊び歌」などがおすすめです。

 

お母さんといっしょに音楽を楽しむことで、聴覚からさまざまな刺激を得ることができます。

 


 

伊藤美佳

「輝きベビーアカデミー」代表理事

(株)D・G・P代表取締役

 

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