耳の発達が違う?ロシア人の「外国語習得」がやけに早いワケ

海外では、第二・第三の言語を身につけることは少なくありません。子どものうちに「英語耳」を育て、多くの言語に触れさせることで、子どもの力になります。本記事では、幼児英語教育研究科である著者が、子どものうちに耳から言葉を覚える重要性について解説します。

動画やアニメで、子どもは自然に外国語を覚えられる

私が中学・高校時代を過ごしたカナダは、英語・フランス語を公用語とするバイリンガルの国でした。私自身は、カナダ在住のころは英語と日本語で生活し、フランス語は日本に帰ってから習得したのですが、自分の娘にもできるだけさまざまな言語に触れてほしいと、赤ちゃんのころに子守唄をフランス語で聞かせていたりしました。

 

インターネットでは英語のほかフランス語やスペイン語の動画を見ることも容易なので、娘は最初のころ英語とフランス語、スペイン語の区別なく、おもしろいものは好んで見ていることがありました。そして、英語の動画を見てキャラクターたちが言っていることをまねするのと同様、フランス語やスペイン語のセリフもまねていて、いつの間にかスペイン語で数を10まで数えられるようになっていました。

 

英語圏でDora(ドーラ)というヒスパニック系の子どもを主人公としたアニメが人気があり、日本でも吹き替え版が放送されています。英語のフレーズを学ぶという学習要素もあり、オリジナル版では登場人物たちはスペイン語と英語の両方を話しています。

 

子どもはこういった番組を見ているうちに、英語やスペイン語の言葉を自然に覚えることができるのです。何カ国語も同じようなレベルで話せるというわけではありませんが、こうして各国語に親しんだ経験は、成長して英語以外の言語を身につけたいと思うときに、必ず生きてくるはずです。

日本語とほかの言語には、決定的な違いがある

日本では第二、第三の言語を身につけるのは特別なことのように思われているかもしれませんが、シンガポールやフィリピンといった国では、複数の公用語と自分の地域の言葉を自由に操る人たちがいます。ヨーロッパでは自分の国の言葉のほか英語・フランス語・ドイツ語など数カ国語を話せる「マルチリンガル」も少なくありません。

 

こういった国では一つの国の中に複数の民族がいたり、近隣諸国と交流したりする機会が多く、「日本は島国でほかの国と接する機会が少ないから、英語を身につけるので精一杯」と思われるかもしれません。しかし、実は外国語を身につけるのを困難にしているのは地理的要因だけでなく、日本語そのものにある可能性があります。

 

それぞれの言語には、主に使用する「周波数」があり、自分の母語の周波数からはずれたところにある音は、聞き取りにくい音、発音しづらい音となります。

 

図表に挙げたように、日本語の周波数は125〜1500ヘルツと、比較的低いところに位置しています。一方、イギリス英語は2000〜1万5000ヘルツと、はるかに高い周波数を持っています。日本語だけに慣れて育った耳には、この英語の周波数になじむのは大変ですが、逆に日本語と英語両方の周波数に慣れていれば、フランス語やイタリア語など、ほかの言語になじむのも容易になってくるのです。

 

出典)『トマティス流最強の外国語学習法─英語を話すには「英語の耳」が必要だ』(日本実業出版社)
[図表]各言語の周波数(パスバンド) 出典)『トマティス流最強の外国語学習法─英語を話すには「英語の耳」が必要だ』(日本実業出版社)

 

注目すべきは、ロシア語の周波数。125〜8000ヘルツと、非常に広いエリアをカバーしています。ロシア人は外国語を習得するのが早いとされるのは、このためなのかもしれません。

 

私は大学の英語アドバイザーとして活動した経験から、日本で数多くのロシア人留学生に会ったことがありますが、日本語をきれいな発音で話す人がとても多かったのを覚えています。とある学生は「ロシアで日本のアニメを見て勉強した」と言っていたので、日本に来てから学校で学んだのではなく、アニメを見ながら耳で日本語を覚えていったようです。

 

一つの言語の中にも周波数帯の違いはあり、一般にアメリカ英語よりもイギリス英語のほうが周波数帯が広いとされています。イギリス英語の音に慣れているほうが他言語を聞き取りやすくなるのかもしれませんが、イギリス英語とアメリカ英語では語彙や表現にも違いがあるので、一概にイギリス英語を習得したほうが得であるとは言い難いでしょう。参考までに、ネイティブやバイリンガル同士でも、聞き取りやすい英語とそうでない英語があることを知っておいてほしいと思います。

 

人は生まれたばかりのときは2ヘルツ〜2万ヘルツ聞こえているという研究説もあります。もしこれが本当だとすると、5〜8カ月の短い間に、母語に合わせた耳ができあがり、聞こえる周波数帯が狭まってしまうのです。外国語の習得が難しいと感じているのは何も日本人だけではなく、「聞こえない音は発音できない」という研究は海外でも進んでおり、耳を鍛えることを目的とした語学スクールも数多くあるほどです。

子どもをマルチリンガルに育てる土台となる「英語耳」

日本在住の子どもが自然に外国語を覚える場合、日本語と英語に第三の言語を加えるのは負担が多いと思えるかもしれません。しかし、ひとまず「英語耳」を育てることで、日本語と英語両方の周波数帯に対応することができるようになり、将来多数の言語を習得するのに合った聴覚を養うことができます。

 

「ドーラ」のようなバイリンガル番組を見ることで自然にスペイン語に触れることができるように、小さいころは子どもの興味に合わせ、家庭の中にいろいろな言語に接することができる環境をつくることが大切です。インターネットの動画を検索すれば、一つの番組を英語、フランス語、ドイツ語など各国語のバージョンで見ることも可能です。

 

英語以外の言葉を習得するところまでいかなくても、子どもは世の中には日本語や英語のほか多彩な言語が存在すること、国や民族によって言葉だけでなく文化や習慣も異なることを理解することができるでしょう。成長してから第三の言語を身につける場合、そういった知識があるだけでも大いに役立ちます。さらに、「英語耳」があることで、第三言語の音になじむことが容易になるのです。

 

 

三幣 真理

幼児英語教育研究家

幼児英語教育研究家

ヒューストン生まれ。4歳で日本に帰国したのち、12歳でカナダへ。慶應義塾大学理工学部入学後、環境情報学部へ転籍。フランス語(第一外国語)、イタリア語(第二外国語)を学び、語学への理解を深める。卒業後は、日本アイ・ビー・エムシステムズ・エンジニアリング株式会社勤務、フリーランスで翻訳・通訳の仕事に携わるほか、日本の英語教育学者の第一人者である東京大学名誉教授の岡秀夫教授に師事。
現在は、敬愛大学でSkype英会話の講師を務めるほか、幼児英語教育研究家として子どもたちの英語教育に携わる。日本人男性との間にもうけた一女をバイリンガルに育て上げた。

http://life-produce.jp/

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