兄弟仲が悪くなった場合、共有が大きな問題に
預貯金や現金のように金銭であれば、各自の相続分に応じて問題なく分けることができます。たとえば、6000万円の預貯金を3人兄弟で相続したのであれば、2000万円ずつ分ければよいだけです。
しかし、相続財産の中には、このようにきっちりと分割しにくいものもあります。不動産などはその典型例といえるでしょう。そのような財産については、あえて分割せず、複数の相続人で共有したままの状態にしておくという選択肢も考えられますが、絶対に避けてください。
たとえば、マンションとその下の土地をそれぞれ二人の兄弟で共有し、その持ち分を2分の1ずつ持ち合ったとします。兄弟の仲が良い間は、それでも問題ありません。賃料収入は等分に分け合うでしょうし、管理等のために必要となる諸費用の負担についてもそれぞれが等しく負うのでしょう。
しかし、兄弟の仲が悪くなってしまった後はどうなるのでしょうか。あるいは、兄弟の死後、その相続人となったその子どもたちが互いに対立し合うようになってしまったら・・・。
そのような事態となった場合には、兄弟あるいはその子どもたちの間で利益や負担の配分を巡っていざこざが生じるおそれがありますし、また、共有状態となっている不動産の扱いが大きな難問として持ち上がってくることになります(そのまま共有し続けるのか、それとも分割するのかなど)。
さらに言えば、共有状態のまま何世代も相続が繰り返されれば、はじめは二人だった共有者が、4人、8人・・・というようにどんどんと増えていきます。そうなれば、不動産を処分するために、共有者全員のハンコ(同意)が必要となった場合でも、人数が多いために、そのうちの一人とは連絡がとれず、その結果、不動産を売りたくても売れなくなるというような状況に陥る危険があります。
そのような事態を避けるためにも、相続した不動産を共有のままにはせず、たとえば不動産を売ってその代金を分け合うなど、適切な手段によってのちのちの問題の芽を摘み取っておくことが大切となります。
共有状態を続ける場合、家賃原資の預貯金等にも注意
なお、たとえば、兄弟A、Bが共有名義のままマンションを経営していて、家賃の入金口座はAの口座を使っているような場合、その口座から家賃収入以外にも、固定資産税の引き落としや所得税や住民税の納税など様々な出金をしており、共有者各人の個別の用途にも使われているケースがあります。
この場合、Aについて相続が発生したときに、Aの預貯金の相続財産計上額をいくらにすべきかが問題となるかもしれません。
毎月精算していれば、相続のあった月の精算を済ませてから預貯金残高に共有割合を掛ければよいのですが、共有者間で長年精算をしていない場合は預貯金の相続財産計上額を確定させるのが非常に困難となります。
それまで行われてきた数多くの入出金の中身や、領収書や計算書の類いがあるかなどを後から把握するのは不可能といってよいでしょう。結局は、不明金を相続財産に算入せざるをえなくなり、余計な出費が生じるおそれがあります。
もし、何らかの理由でどうしても共有状態を続けなければならないとしたら、適正な申告をするためにも毎月、しっかりと精算しておくことをお勧めします。