しばしば相続争いの原因となってしまう「遺留分」ですが、きちんと対策すれば相続争いを回避することができます。今回は、「遺留分」の概要と、その「放棄」のための具体的な手続きを見ていきます。

特定の相続人に必ず相続財産の一部を与える「遺留分」

特定の相続人には、法律上、必ず相続財産の一部を与えなければならないことになっています。これを「遺留分」といいます。遺留分は割合の形で定められており、その割合は誰が相続人になるかによって異なります。

 

まず、両親や祖父母などの直系尊属だけが相続人の場合は、相続財産の3分の1が遺留分となります。それ以外の場合は、相続財産の2分の1が遺留分となります。遺留分権者、すなわち遺留分権を持つ者が複数人いるような場合には、これらの遺留分の割合に法定相続分の割合を掛けます。

 

なお、兄弟姉妹については、遺留分が認められていません。

 

このような遺留分の定めに反する形で遺贈や贈与が行われた場合、それによって自らの遺留分が侵害された遺留分権者は、「本来、自分に与えられるはずだった遺留分相当額の財産を渡せ」と請求できます。この権利を、遺留分減殺請求権といいます。

 

農家などでは、本家の跡継ぎ以外の相続人が、この遺留分を強硬に主張することが、しばしば相続争いが生じる原因の一つになっています。

遺留分の「放棄」で相続争いを回避できる

もっとも、遺留分は所定の手続きをとることによって、消滅(放棄)させることが可能です。すなわち、遺留分は相続が起こる前に、家庭裁判所に申し立てることによって放棄することが認められています。

 

そこで、後日、相続でもめるおそれがある場合には、遺留分の権利を持つ相続人に、相続の発生前に遺留分を放棄しておいてもらうのが、相続対策として有効な手段となります。手続きは非常に簡単で、用意されている定型の書面にその旨を記載して家庭裁判所に提出するだけです。

 

具体的な手続きの概要について説明しておきましょう。まず、申立人は、遺留分を有する相続人になります。申し立ての時期は、相続開始前つまり被相続人の生存中です。

 

申立先は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。申し立ての際に必要となる費用は、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。

 

また、申し立ての際に提出する資料は、申立書と被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)と申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)、財産目録です。事案によってはこれら以外の資料の提出を求められることもあります。

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    本連載は、2013年12月2日刊行の書籍『地主のための相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    土田 士朗

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