新聞は費用対効果が悪い…ボルボは広告費を何に集中させたか?

若者のクルマ離れやカーシェアの普及で国内の新車販売数が伸び悩んでいる。そんな中、2015年からの4年間で売上1.6倍を達成、2018年には日本カー・オブ・ザ・イヤーを2年連続で受賞するなど、絶好調といえる自動車ブランドが「ボルボ」である。どのようにして無骨なイメージからプレミアムカーブランドへと進化を成し遂げ、大躍進を果たすことに成功したのか。本記事では、ボルボ・カー・ジャパン株式会社代表取締役社長・木村隆之氏が、ブランド再構築のために取り入れた手法を解説する。今回は、「広告費」の投資戦略等である。

オプションだった安全装備を「全車標準化」

商品戦略として最初に取り組んだのは、先進的な安全装備の全車標準化です。ボルボは安全性の評価が高いブランドですが、私が社長に就任した当初は、ぶつからないための先進装置がオプションになっているケースがまだまだ少なくありませんでした。

 

特に安全性をコアにしてブランド価値を上げていかなければならない日本では、安全装置が標準装備でないということはありえません。

 

そこで2014年12月に新安全・運転支援システム「IntelliSafe10(インテリセーフ10)」を全モデル、全グレードに標準装備しました。

 

それまでボルボでは、オートブレーキやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)など、先進の安全・運転支援システムを「セーフティ・パッケージ」と呼んで、各モデルに標準装備またはオプション設定していました。

 

そのパッケージに新たに「リアビューカメラ」を追加し、合計10種類以上の先進安全装備および運転支援機能をインテリセーフ10としたのです。ボルボでは「2020年までに、新しいボルボ車において、交通事故による死亡者や重傷者をゼロにする」という目標「ビジョン2020」を掲げていましたので、標準装備はその実現に向けた取り組みの一環でもありました。

 

V40のエントリーモデルは300万円を切る価格設定でしたから、インテリセーフ10を標準装備にすることは、社内でも反対意見が少なくありませんでした。しかしそれでも私は踏み切りました。

 

最近は安全だけでなく、安心の向上にも取り組んでいます。

 

2018年9月にV60を刷新した際に、走行距離無制限の新車5年保証を導入しました。輸入車では初めてのことです。

 

[図表]近年の先進安全機能導入の歩み
[図表]近年の先進安全機能導入の歩み

 

新聞広告は費用対効果が圧倒的に悪くなった

2014年10月にポリシーを明確にして、広告宣伝も戦略的に実施しました。クルマの販売は、毎月の締めがある一方で、さまざまな取り組みは四半期ごとにテーマを決めて実施していきます。

 

予算も四半期で決めて使っていきます。その意味では四半期ビジネスでもあるのです。

 

2014年10月から、3カ月に一度はお客様に気づいてもらえるようにテレビCMを放映しています。メッセージは基本的に毎回同じです。安全性とスウェーデン生まれであることをアピールしているのです。そのときによって取り上げる車種は異なりますが、お客様に伝えることは変えません。

 

ボルボオーナーの中心は50歳代です。この層は比較的多くの方がテレビを見ています。ですから、四半期毎にテレビCMを打ち続けることによりショールームに来ていただける人の数を安定化させることができています。一方、ボルボより販売台数が少ないブラドは安定的にテレビCMを継続できる予算規模がないため、来客数が不安定になりがちです。

 

既存のオーナーは、メンテナンスなどでショールームを訪れる機会がありますから、その際に買い換えを勧めることができます。

 

しかし、まったく接点のない新規のお客様には、アプローチの仕掛けが必要なのです。

 

テレビCMを含めてさまざまな接点をつくることによって、ショールームに来てくださる方の人数は過去2年で1.5倍程度に増えています。

 

商品が良くなったこともありますが、マーケティング戦略が結果に表れているのです。

 

一方で雑誌など紙媒体の影響力は確実に落ちています。特に新聞広告は費用対効果が圧倒的に悪くなっています。何かメッセージを届けたりするときには広告を掲載しますが、基本は利用していません。

 

レクサスにいたころは、まだそれに気づいていませんでしたので、全国紙全紙に全面広告を出して億単位のコストを支払っていました。今にして思えば、もったいない話です。

 

新聞折込チラシも同様に効果が薄れています。今でも地方では独自に折込広告を入れていますが、全国版のチラシはストップしました。

 

削減できた広告費はテレビとウェブに集中投資しています。

 

ウェブで展開しているのは、単純な広告ではありません。「バレンタインフェアで赤いV40が1名様に当たる」、あるいは「軽井沢に2泊3日で2名様をご招待」など、イベントを絡めています。

 

こうしたものには、懸賞マニアも多く申し込んできますが、ボルボに興味を持っている人も応募してくださるのです。

 

応募の際には、いくつかの質問にも回答していただいています。それによって、車検の時期などが分かるので、買い換えのタイミングなどが判断できます。それを分析して、ディーラーに送り、営業スタッフがお客様をフォローします。

 

100人にアプローチすると、平均して4人ほどが新規のオーナーになってくださいます。

 

2018年の受注台数は2万台を超えましたが、その半分が新規のお客様でした。そのうち4分の1弱、2200人のお客様はウェブ経由でキャンペーンなどに応募してくださったお客様です。それほどウェブには力があるのです。

 

優秀なディーラーの場合、100人のお客様を1年間フォローすると、7人が買い換えてくれます。一方であまり優秀でないディーラーの場合は4人程度です。つまり、ディーラーの場合は、1年間フォローを続けて、100人のうち4~7人が買い換えてくださることになります。

 

ウェブはどうでしょうか。100人のうち4人が買ってくれることはすでに話をしましたが、おおよそ3カ月で決着が付きます。ウェブでの集客は、店頭よりも非常に効率がいいのです。

ボルボ・カー・ジャパン株式会社 代表取締役社長

1965年生まれ。1987年、大阪大学工学部卒業。同年、トヨタ自動車株式会社へ入社。海外の商品企画を担当し、トヨタに勤めた20年のうち16年間は海外営業を中心に活躍。2003年にはノースカロライナ大学でMBA(経営学修士)を取得。後にレクサス国内営業部に移籍。2007年、株式会社ファーストリテイリングに入社。ユニクロの営業副本部長を務める。2008年、日産自動車株式会社入社。翌年、インドネシア日産で代表取締役社長を務める。その後、アジア・パシフィック日産自動車会社、タイ日産自動車会社の代表取締役社長を務め、2014年にボルボ・カー・ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任。社員にもわかりやすい方針と定評がある長期計画を遂行している。

著者紹介

連載日本法人社長が明かす…最高の顧客が集まる「ボルボ」のブランド戦略とは?

最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか

最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか

木村 隆之

幻冬舎

経営は「データ」「アイデア」「ストーリー」だ!4年間で売上1.6倍!大躍進の鍵を日本法人社長が自ら明かす。ボルボ・カー・ジャパンを再生させた敏腕社長の経営ノウハウを詰め込んだ一冊。

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