二極化する日本のクルマ市場…「ボルボ」のブランド戦略とは?

若者のクルマ離れやカーシェアの普及で国内の新車販売数が伸び悩んでいる。そんな中、2015年からの4年間で売上1.6倍を達成、2018年には日本カー・オブ・ザ・イヤーを2年連続で受賞するなど、絶好調といえる自動車ブランドが「ボルボ」である。どのようにして無骨なイメージからプレミアムカーブランドへと進化を成し遂げ、大躍進を果たすことに成功したのか。本記事では、ボルボ・カー・ジャパン株式会社代表取締役社長・木村隆之氏が、ブランド再構築のために取り入れた手法を解説する。

国内クルマ市場でも進む「消費の二極化」とは?

日本の市場を振り返ってみると、格差が広がっているといわれます。しかし、米国やインドネシアと比較すれば、日本の格差などないに等しい状況です。では、何が起きているのか。それは、消費行動の二極化です。

 

こだわるところにはお金を使うが、そうでないところはとことん節約する。日本には100円ショップもありますし、ドン・キホーテもある。安くていいものがどこでも手に入りますから、消費の二極化が進んでいるのです。

 

これは世界でも同様です。同じ人のなかでもこだわるモノ、こだわらないモノを使い分けるようになっています。しかし、日本が世界のなかでも先行しているのは間違いありません。

 

日本のクルマ市場を見ると、ここ7~8年は軽自動車が4割近くを占めています。二極分化の下の層が物凄い勢いで増えてきました。

 

しかし、二極化の上の層はあまり顕在化していなかったのです。

 

例えば、日産が展開するプレミアムブランド「インフィニティ」は国内で扱っていませんし、ホンダもプレミアムブランド「アキュラ」を投入していません。これまで二極化の上の層をターゲットにしていたのは、ドイツ車とレクサスくらいしかなかったのです。

 

 

プレミアムブランドが圧倒的に限られていたため、上の市場が育たなかった。それだけに伸びる潜在力は持っているのです。そう考えると、ボルボの課題は明確になります。これまでのボルボの位置づけは、中途半端でした。代表的なブランドのクルマの位置づけを表すと[図表1]のようになります。

 

[図表1]代表的なブランドの位置づけ
[図表1]代表的なブランドの位置づけ

 

横軸はいわゆる良いクルマ。走って、曲がって、止まるという性能面の評価です。縦軸はなんとなくカッコいいし、欲しいという情緒的な価値観です。両方を兼ね備えているのがプレミアムブランドと定義できます。

「安全性とスウェーデンの魅力」を伝え続ける

機能的価値と情緒的価値の両方のバランスで成り立っていないユニークなブランドは、世界に二つしかありません。

 

1つはVW(フォルクスワーゲン)。みんなが良いクルマだと認めますが、「カッコいいか」、「欲しいか」という情緒的なアピールはそう強くないという分析結果です。逆に品質を中心とした性能的な評価では「どうかな?」と思う人は多いけれど(現在はそんなことはありませんが)そんなことはお構いなしに「カッコいい」、「欲しい」と思ってもらえるブランドはアルファロメオです。

 

ボルボはちょうど危ないところに位置付けられていました。上質・頑丈というイメージがありますが、プレミアムとは言い切れない。準プレミアムのような場所にいたのです。

 

これは二極化の時代において、最も危険な位置づけです。

 

真ん中にいては生き残れません。ボルボといえばプレミアムブランドであり、「同じサイズのドイツ車と同じくらいのお金を出したい」と思われるブランドでなければダメなのです。そうしなければ生き残れません。これは私が社長に就任以来、社内で言い続けてきたことです。そのためには、まず社内の意識を変える必要がありました。

 

横軸はメーカーに努力してもらうしかありませんが、ここ最近はネジ一本から新しく作った新プラットフォームをベースとしたさまざまな新しい車種が投入されて、環境が整ってきました。

 

では、縦軸をアップさせるにはどうすればいいのか。私たちインポーターにできることは何かを考えなければなりません。これまでボルボ・カー・ジャパンの社長は30年弱、外国人が務めてきました。すぐに交代になるので、方針やテーマがコロコロ変わってしまう。中・長期的な戦略が立てにくい状況だったのです。

 

まず変えたのが広告戦略です。英語で宣伝広告はフィックスド・マーケティング・エクスペンスといいます。エクスペンス(expenses)=費用です。これをインベストメント(投資)にしなければいけないと考えました。

 

投資であれば資産として、ブランドイメージとして、お客様の頭に残らなければなりません。そのためには、伝えることを統一する必要があります。

 

広告宣伝として、さまざまな角度から発信をしますが、常に同じことを伝える。それは安全性とスウェーデンの魅力です。「それしかやらない」と決めて5年弱が経過しました。

 

もう一つはお客様にエモーショナルな体験をしていただかなければなりません。それはモノだけでは困難です。ショールームに行ってみたらキレイだったとか、接客が素晴らしかったとか、(自分が)レクサスでやってきたことをボルボでも進めてきました。

 

ボルボとレクサスは競合ではありません。ボルボはあくまでも輸入車ブランドですから、その中でCS(顧客満足)ナンバーワンを目指せばいいのです。

ボルボ・カー・ジャパン株式会社 代表取締役社長

1965年生まれ。1987年、大阪大学工学部卒業。同年、トヨタ自動車株式会社へ入社。海外の商品企画を担当し、トヨタに勤めた20年のうち16年間は海外営業を中心に活躍。2003年にはノースカロライナ大学でMBA(経営学修士)を取得。後にレクサス国内営業部に移籍。2007年、株式会社ファーストリテイリングに入社。ユニクロの営業副本部長を務める。2008年、日産自動車株式会社入社。翌年、インドネシア日産で代表取締役社長を務める。その後、アジア・パシフィック日産自動車会社、タイ日産自動車会社の代表取締役社長を務め、2014年にボルボ・カー・ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任。社員にもわかりやすい方針と定評がある長期計画を遂行している。

著者紹介

連載日本法人社長が明かす…最高の顧客が集まる「ボルボ」のブランド戦略とは?

最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか

最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか

木村 隆之

幻冬舎

経営は「データ」「アイデア」「ストーリー」だ!4年間で売上1.6倍!大躍進の鍵を日本法人社長が自ら明かす。ボルボ・カー・ジャパンを再生させた敏腕社長の経営ノウハウを詰め込んだ一冊。

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