金融庁は、「FinTech実証実験ハブ」の支援第1号案件の結果について報告した。ブロックチェーン技術を用いて、本人確認プロセスを金融機関共同で実施する。利便性の大幅向上が期待されるシステム構築が検討された。

金融庁、フィンテック実証実験ハブ結果を公開

金融庁は8日、「FinTech実証実験ハブ」の支援決定第1号案件の実証実験が終了し、実験結果について報告した。

 

金融庁は2017年6月、閣議決定された「未来投資戦略2017」において、フィンテックを活用したイノベーションに向け、チャレンジを加速させる観点から、フィンテックに係る実証実験を簡易化するための措置を講じる方針を示していた。

 

今回の「FinTech実証実験ハブ」は、フィンテック企業や金融機関等が、前例のない実証実験を行おうとする際に抱きがちな躊躇・懸念を払拭するために設置したものだ。

 

FinTech実証実験ハブでは、フィンテック企業や金融機関等が、実験を通じて整理したいと考えている論点(コンプライアンスや監督対応上のリスク、一般利用者に向けてサービスを提供する際に生じうる法令解釈に係る実務上の課題等)について、個々の実験ごとに庁内に担当チームを組成して継続的な支援を行うとしている。

 

◆実験内容

 

今回の実験では、ブロックチェーン技術を用いて、顧客の本人確認手続き(KYC)を金融機関共同で実施するシステムの構築を検討した。

 

本枠組みに参加する以下の金融機関のいずれかで、本人確認済みの顧客がほかの参加金融機関との間で新規取引を行おうとする際に、「再度の本人確認」を実施しない仕組みを検討するという。

 

●参加金融機関等

・株式会社みずほフィナンシャルグループ

・株式会社三井住友フィナンシャルグループ

・株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

・デロイト トーマツ グループ

・SMBC日興証券株式会社

・大和証券株式会社

・株式会社千葉銀行

・野村證券株式会社

・株式会社福岡銀行

・みずほ証券株式会社

・三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社

 

顧客が、金融機関Aで「共同運営機関(コンソーシアム)」に必要な本人特定事項を登録する。その上で、コンソーシアムは、経済制裁対象者リスト等に照らしてフィルタリング/スクリーニングを実施。該当がない場合、その旨をブロックチェーン上に記録する。

 

顧客が別の金融機関Bで取引を実施しようとする際、コンソーシアムから顧客情報を引渡し、コンソーシアムを介して顧客が金融機関Aで本人確認済みであることを確かめる(ブロックチェーン上に記録された当該顧客の取引履歴を参照し、なりすましのおそれがないかどうかを検証)。

 

◆結論

 

実証実験におけるブロックチェーン技術を活用した本人確認方法は、今回要件として定義したレベルの本人確認に対して、技術的には十分に運用可能であることが確認された。

 

一方で、コンソーシアムのあり方(担い手・組織など)やコンソーシアム職員の陣容・必要なスキル水準といった業務面における課題も残った。

 

なお、今後は、一般社団法人全国銀行協会に新たに設置された「AML/CFT態勢高度化研究会」(平成30年6月設置)において、本実証実験の結果も参考にしながら、本人確認事務等の共同化に関し、幅広く研究が行われる予定だ。

 

メガバンクにおけるKYCの通常業務でこのようなブロックチェーン導入が実現すれば、混雑しがちな金融機関の本人確認プロセスが大幅に簡略化され、待ち時間の短縮につながることが期待される。

 

※本記事は、2019年10月8日に「CoinPost」で公開されたものです。

 

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