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通信装置を備えた気球を成層圏に複数飛ばし、地上との交信を通してブローバンド・ネットワーク網にするというグーグルの「ルーン・プロジェクト」がスリランカで進んでいます。この壮大な計画の概要と、それを導入することのメリットについて、現地での報道を中心にまとめてお送りします。

世界初のプロジェクトが始まるスリランカ

グーグルが進めている「ルーン・プロジェクト」がスリランカでいよいよ始まる予定である。この「ルーン・プロジェクト」では、通信装置を備えたバルーン(気球)を複数飛ばすことにより、上空からブロードバンド・インターネット網を提供しようとするもの。ルーン(loon)とは「正気の沙汰ではない」という意味であり、数多くあるグーグルの次世代技術の中でも、難易度も注目度も高いプロジェクトのひとつだ。

 

スリランカ政府とグーグルは、2015年7月にスリランカでの導入に向けて合意をしており、これが実施されれば、スリランカは世界で始めてグーグルの次世代ブロードバンド網をもつ国となり、またバチカン市国などを除けば世界で唯一、全国土でのインターネットが利用できる国になる。

 

これまでニュージーランドなどでテストされてきたバルーン(気球)だが、今回は南米で打ち上げられ、2月上旬にスリランカ上空に入り、現在はスリランカでテストが行われている。

 

グーグルのバルーンは、成層圏まで浮上し、地上75,000フィート(22,500m)の地点で動作が行われる。40,000フィート以下を飛ぶことが一般的である旅客機の2倍近い高度であって、肉眼で確認するのは困難だという。

「ルーン計画」の2つのメリット

いくつかのバルーンが連携しながら、地上の利用者にネットワークを提供し、また地上のネットワーク同士を結ぶバックホールとしての役割を担う「ルーン計画」には、主に2つの大きなメリットがあるという。

 

ひとつはコストの安さで、地上に基地局を設置するより3分の1も安いという。またこの分野にグーグルが参入することで競争が激化し、インターネットの利用コストの低下も予想されている。

 

もうひとつは、これまで届かなかった範囲まで、サービスが提供できる点である。そもそもグーグルがこの計画を始めたのも、インターネットが利用できる環境にいる人が、全人口の3分の1しかなく、これをもっと広めたいという考えからであった。

 

これまで主流であるセルラー方式のネットワークでは、各エリアを「セル」と呼ばれる区画に割り、それぞれに基地局を設置し、セル内で周波数を調整する方式であって、広いエリアには多くの基地局が必要であった。

 

しかし山岳部などの人口が少ないエリアでは、基地局を設置するコストに収益が見合わないという問題があった。それが上空から幅広いエリアをカバーするバルーン方式なら、この問題を解決することが可能だ。

実は情報インフラに強いスリランカの先進性

1990年代前半に通信事業が民営化してから、スリランカは他の島国と比較して、携帯電話のカバーエリアが広く、かつ都市部においては比較的安い値段で高速の3Gブロードバンドが利用できている。結果、スリランカでは330万台のインターネット接続可能な携帯電話があり、63万のインターネット回線が引かれ、あわせて2,000万人がインターネットを利用しているとされる。しかし山岳部ではインターネットはまだ普及しておらず、また、さらなるコスト低下も望まれていた。

 

もともとスリランカは南アジアの中では、新しい情報技術の導入が早い国でもある。1989年に携帯電話が導入されたのを皮切りに、2004年に3Gネットワークが、2014年には4Gネットワークが、それぞれ南アジアで最初に展開されている。

 

グーグルによれば、ヘリウムで充填されたこのバルーンは、100日間上空に滞在することができるという。薄くて軽い素材で作られており、中のヘリウムが徐々に漏れることで、ゆっくりと地上に落ちて行き、その後、新たなバルーンと交換される。ガスが抜ける速度はとても遅く、地上に落下するスピードもゆっくりなのだが、万が一、急速に落下しても問題がないよう、パラシュートも付いているという。

 

ただ、スリランカ当局は計画的な「着陸」だったと否定しているが、2月17日にバルーンのひとつが茶畑に墜落したという報道もあり、今後、計画通りに進むかどうかが注目される。

 

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    この記事は、GTAC提携のスリランカのニュースサイト「EconomyNext」が掲載した関連記事をGGO編集部にて、翻訳・編集したものです。

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