コロンボ港の傍を埋めて建設される「ポート・シティ」
中断されていた中国によるコロンボでの巨大プロジェクトに、スリランカの大統領が許可を出した。
インド洋周辺に拠点を築くことで、自国の利益を確保しようとしていると批判を受ける中国の「真珠の首飾り」戦略。その一環として、スリランカのコロンボに新たに港湾都市(ポート・シティ)を建設する計画が、スリランカの前政権下で進められてきた。
「ポート・シティ」計画は2014年9月から習近平主席の肝いりで始まった。14億ドルの予算でコロンボ港の傍に埋立地を整備し、233ヘクタールもの施設やF1サーキットの建設が予定されている。それが2015年1月の選挙を経てシリセーナ政権が誕生した直後に、計画は中断させられた。
特に問題点となったのは、大規模開発による環境への影響である。ウィクラマシンハ首相は、コロンボ港での埋め立て工事によって、スリランカ西岸での環境破壊が引き起こされ、観光産業がダメージを受けることに懸念を表明していた。
前大統領と中国のしがらみを解消しようとしたが・・・
2009年5月に長年の内戦が終結して以降、前大統領のラジャパクサ氏は、中国を頼りにして国内インフラの復興を推し進めてきた。その結果、スリランカ最大の支援者となった中国によって、道路や鉄道、港などの建設が進められた。
しかし政権交代によって誕生したシリセーナ大統領は、汚職の容疑で現在、調査されているラジャパクサ前大統領が許可をした大型の開発案件のすべてについて、再チェックをするよう命じた。大統領府は前政権が結んだ中国との契約において、不公平な条項があったと批判をしている。
一方でスリランカ経済の減速懸念が高まり、財政赤字が拡大する中では、成長の起爆剤としてポート・シティ計画に期待も寄せる声もあった。
4月上旬に予定されるウィクラマシンハ首相の訪中のため、中国を訪れていた国際取引担当大臣が、同プロジェクトにおける対立点について中国側と協議を行い、その結果、政府は環境アセスメントの条項に従うことを前提に、同プロジェクトの再開を認めた。しかしどのような条項が盛り込まれるかは具体的には明らかにされていない。
また初期からの懸念点であった埋め立てられた土地の帰属については、中国に与えられるのは完全所有権ではなく99年間の貸与であるとされた。そして埋立地における事業はすべて、中国企業とスリランカ政府の合弁で行われるという。
環境配慮が強化される以外は、中国からの投資受け入れは、以前と変わらないだろうと政府関係者は言う。中国国営企業である中国交通建設による同プロジェクトへの投資は、スリランカがこれまで受けた海外投資のなかで最大のものとなっている。