不動産、株…日本の富裕層は「大切な資産」をどう守るのか?

生前贈与、資産運用の戦略立案、資産運用の実施、運用結果の継続的なモニタリング、資産のリスク管理…このように、資産防衛にまつわる計画を立てることを「エステート・プランニング」といいます。日本の富裕層たちは、どのようにして資産を守っているのでしょうか? 岸田康雄公認会計士/税理士が解説します。

「富裕層」と一言でいっても、そのタイプは様々

「富裕層」とは、その資産のタイプによって、中小企業オーナー、上場企業オーナー株主、不動産オーナー(地主)、プロフェッショナル、金融資産家に分類できるだろう。エステート・プランニングを行おうとする場合、これらのタイプにわけて考える必要がある。

 

富裕層のタイプ

① 中小企業オーナー

② 上場企業オーナー株主

③ 不動産オーナー

④ プロフェッショナル(開業医師、開業弁護士)

⑤ キャッシュ・リッチ

1:「中小企業オーナー」の資産防衛

中小企業オーナーは、総資産のほとんどが非上場株式(自社株式)だ。富裕層のなかでも「超・富裕層」と別格扱いされる人達のほとんどは企業オーナーである。すなわち、老舗企業のオーナーやその創業者一族、非上場会社のオーナー経営者、大病院の経営者などである。

 

一般的に高所得の職業といえば、開業医、弁護士、大企業の役員などが挙げられ、高額のフロー所得を稼いでいる。この高所得が長期間続けば超富裕層になることが可能であるが、個人の労働時間や働く期間には限界があるため、フロー所得のみで超富裕層のレベルに到達することは現実的には不可能である。それゆえ、高額所得ではなく、株式というストックの価値増大によって財産を増やすことが、超富裕層となるためには必要だ。

 

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中小企業オーナーのエステート・プランニングを考えるうえで、最大の課題となるのが自社株式の取扱いである。自社株式は「経営権」と「財産権」という経営の根幹に関わるものであるため、重大な意思決定が伴う。

 

中小企業オーナーの財産承継では、会社の支配権を明確化させるために、後継者が少なくとも自社株の過半数(できれば3分の2)を保有できるように遺産分割をしなければならない。しかし、後継者だけに自社株を承継させるとすれば、遺留分の問題などが発生する可能性がある。そうはいっても、持株比率を子供に切りわけてしまうと、会社の支配権争いという重大な問題が生じる危険性も出てくる。

 

また、非上場株式は容易に換金できないことから、売却以外の方法で納税資金を調達する必要がある。多額の相続税負担を要する相続の場合であれば、会社が金庫株として買い取ったり、会社から借入れを行い相続税を支払ったりして、納税資金を調達することになるかもしれない。

 

企業オーナーが保有する非上場株式は、相続税評価を引き下げやすく、相続税対策は有効に機能する。しかし、会社の後継者の支配権獲得を考慮した遺産分割において問題となるケースも多く、また、第三者への売却による現金化が困難であるために、納税資金の調達が問題となる。このため、企業オーナーのエステート・プランニングの中心は、遺産分割対策と納税資金対策となる。相続税対策はその次の課題である。

2:「不動産オーナー」の資産防衛

不動産オーナーとは、総資産のほとんどが不動産(土地・建物等)である富裕層のことをいう。不動産オーナーが保有する不動産の課題は、相続時の遺産分割である。

 

分割できない場合に不動産を共有とすれば、今度は売却することが難しくなり、親族間の様々なトラブルの種にもなりかねない。逆に、不動産を単独所有とすると、ほかの相続人の不満や、遺留分の問題などが発生しやすい。それだけに、不動産は相続争いを招く一番大きな原因となる。

 

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また、相続財産に占める不動産の比率が高くなってくると、納税原資の準備が不可欠となる。したがって、不動産オーナーのエステート・プランニングでは、遺産分割対策と納税資金対策が中心となる。このため、遺言書の作成や民事信託の活用を検討することになろう。

3:「金融資産家」の資産防衛

総資産のほとんどが金融資産(現預金、金融商品、生命保険等)であるキャッシュ・リッチの富裕層がいる。

 

プロフェッショナルのように高額所得を稼ぐ富裕層は、手間の掛かる不動産投資は避け、金融資産として財産を蓄積する傾向にある。また、上場企業オーナーが所有する上場株式は、それ自体が金融資産である。

 

一般的にキャッシュ・リッチと呼ばれる富裕層は、たとえば、M&Aによる会社売却で多額の現金を獲得した人、相続で多額の財産を承継した人などである。

 

金融資産の特徴は、不動産や自社株式と比較して相続税評価が高いことである。それゆえ、金融資産家のエステート・プランニングは、相続税対策が中心となる。その手段の代表例は、不動産投資による財産評価の引下げである。金融資産は、相続発生時の時価でそのまま課税されるため、相続税評価が低い不動産への組換えを検討すべきといえる。

 

[図表]富裕層が保有する資産と相続対策の必要性

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

平成29年経済産業省「事業承継ガイドライン改訂小委員会」委員、日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、金融機関に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://fudosan-tax.net/

著者紹介

連載富裕層のための「プライベートバンカー」見極め術

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