長い目でみると「武蔵小杉」よりも「大井町」に期待できるワケ

不動産投資において「今後の発展を見極める力」は何よりも大切です。まずは、普段何気なく通り過ぎてしまう町の魅力を知ってみましょう。「地域密着」型不動産のエキスパートである、株式会社小出不動産・徳島雅治氏の書籍『小さな不動産会社の一人勝ち戦略』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して解説します。

なんだかパッとしない土地柄の「大井町」だが…

私の会社のある大井町は、品川と川崎の間にあり、京浜東北線一本で東京につながる便利な場所です。ところが、どうも地味な土地柄で、エアポケットに落ちたように昔からなぜかあまり人気のある町ではありませんでした。

 

海岸側には競馬場や競艇場、工場や倉庫のエリアなどがあり、必ずしも環境が良いとはいえない雰囲気があったかもしれませんが、反対の山側は落ち着いた閑静な住宅街が広がり、代々大井町に住まいを構えるお宅もたくさんあります。ただ、そのような落ち着いた雰囲気が逆に人口の流動を滞らせてきたともいえます。住民はほぼ固定化し、新しく入ってくる人たちはあまり多くないため、大井町住民の年齢層は次第に高くなっていました。

 

しかし昨今、もともと人気だった二子玉川が再開発され、また東急大井町線と交差する東急目黒線沿線の武蔵小杉に高層マンションが立ち並び、人口の流入が激しく土地の価格が急騰、ターミナルとなる東急大井町線の存在が脚光を浴びるようになりました。

 

さらに埼京線が大崎まで延びてりんかい線と連絡し、東京テレポートやお台場方面へのアクセスがよくなりました。海側に向かって坂を下れば羽田空港に直接乗り入れる京浜急行の駅があるため、国内外へのアクセスも以前よりはるかに便利になりました。そのためか、大井町駅前の大井開発が運営する1460室を擁する「アワーズイン阪急」はほぼ常に満室状態と聞きます。

 

更に、駅に隣接していたJRの社宅がすでに取り壊されていますが、JR東日本の大井工場を含めた約8万7000坪の土地が大井町駅前再開発計画として、品川区の中心となるようなスケールで検討されています。

 

これらが再開発されて観光客向けの総合施設が建設されれば、ターミナル駅としての大井町一帯の土地のバリューがより上がることは予測できます。加えて東京オリンピックを控えているため、町の活性化にはかなりの期待が持てます。

 

こうした背景があるうえ、東急東横線、東急田園都市線沿線などの都市開発で成功を収めている東急がまださほど手を付けていない最後のエリア、それが東急大井町線沿線です。

 

都心に近いのにやや出遅れていた大井町という場所を、東急電鉄が出て来る前に、いかにすみやかに開拓していくか。これが、私たちの着眼点でした。また小出不動産としても、この大井町にあまり目を向けて来なかったという事情もあります。

 

賃貸の経営は地元で行っていましたが、土地の売買については業者らから情報をもらい、目黒、大森、蒲田など、大井町以外のエリアの不動産売買を扱い、転売することによって利ざやを得てきました。拠点となる店だけがあり、大井町自体の土地には積極的に手を付けずに経営してきたのです。

 

そこで、新たに会社を立て直すならば、大井町一帯を優先的にビジネスの対象にしようと考えました。創業から67年を経て、初めて地元に手を付ける方向へ舵を切ったのです。振り返れば、これがチャレンジ精神を思い切り発揮し、リスタートにふさわしい門出になったと思います。

 

大井町
大井町

「急行の停まる駅」「停まらない駅」それぞれの価値は

東急大井町線は、品川区大井町から川崎市溝の口までを結ぶ小さな路線ですが、急行は溝の口方面から二子玉川、自由が丘という人気の駅に停車し、さらに大岡山、旗の台と続いて大井町で終点となります。

 

ほかの路線に比べると、東急大井町線はかなり地味な路線のように思われていますが、なかなかどうして、注目の駅があるのです。

 

旗の台から東急池上線に乗り換えれば、よくテレビや雑誌でも取り上げられる日本有数の商店街・戸越銀座があります。また大岡山で東急目黒線に乗り換えると田園調布、武蔵小杉といった新旧高級住宅街へとつながります。京浜東北線に乗れば、東京や有楽町、新橋、品川、かたや川崎、横浜といった繁華街へとアクセスでき、利便性の面でも東京南部の駅としてはかなり優秀なバリューを持った駅なのです。

 

こうした急行の停車駅周辺は、不動産仲介の見地では流動性が高く、注目すべき一帯です。ただ、必ずしも都市の再開発が良いことばかりではないというケースがあります。その例として、最近急激に人気が高まった武蔵小杉を取り上げてみましょう。

 

武蔵小杉一帯は、かつて工場が集まっていたエリアでしたが、それらが閉鎖され、跡地を再開発するために行政が規制緩和を行い、高層マンションが建設されるようになって現在に至るという経緯があります。

 

高層マンションは人気が高く、膨大な数の家庭を抱え込みますから、新規住民があっという間に増加し、武蔵小杉のある川崎市中原区は同市内でもっとも人口の多い区となっています。ただ、高層マンション群がそそり立ち、人口が増えると、想定外の新たな問題が出てきます。

 

たとえば、古い昔ながらの住民と新規住民との交流が、必ずしもうまくいっているとはいえない状況にあると聞きます。また人口が増えすぎて、朝のラッシュ時に武蔵小杉駅にはキャパシティーを超える乗客が集まり、駅の改札を通過するために外まで行列ができるようになったり、強いビル風に悩まされたりしている点、さらには学校や幼稚園、保育園の不足などが問題視されています。

 

マンション建設はそれぞれの建設会社の案件ですが、そのビルが属する地域を俯瞰した都市開発がなされていたかどうかとなると、若干怪しいところです。武蔵小杉は、立地的に便利な地域が、便利すぎるゆえにむしろ不便になったという典型例だといえるでしょう。

 

この武蔵小杉は特殊な例ではありますが、特急停車駅は利便性の点から人気が高く、それに伴って地価や家賃が高騰している人気エリアだということは間違いありません。

 

それでは、急行の停車しない駅はどうでしょうか。やはり人気でいうと急行停車駅より劣るのは確かです。しかし、東急大井町線自体がそれほど長距離の路線ではないですから、1駅、2駅乗れば、人気の急行停車駅に行くことができます。

 

そのわりに、不動産価格はまだ若干低く抑えられています。こうした各停しか停車しない駅周辺に地価が安く人気面でも出遅れて空洞化したエリアがあれば、その土地のバリューは十分に高くなります。不動産業者としてはなかなか攻め甲斐のある土地です。

 

規制緩和を受けた武蔵小杉は特例で、東急大井町線沿線は依然、低層重視エリアと条例で定められており、環状八号線に沿って低層の住宅地が並んでいます。将来的にはわかりませんが、少なくとも現時点では高層マンションが立ち並ぶ予定はなく、昔ながらの閑静な住宅街として生き延びているのです。そのため一旦注目されれば、あっという間に地価が値上がりしてもおかしくない地域です。

 

東急線沿線では、大手建設業・不動産業の目線は高層住宅に向いているため、まだ低層住宅エリアはそれほど手をつけられていません。沿線開発の得意な東急電鉄も、東急大井町線には本腰を入れていない状況です。

 

時間の問題かもしれませんが、都市開発に出遅れた地元を持つ町の不動産屋は、一足早く低層向けの住宅やアパートの売買や賃貸に特化すれば、有利に攻めていくことができます。このようなニッチな部分を攻めて先回りができることも、町の不動産を扱う業者としての醍醐味です。

 

その点でいえば、東急大井町線沿線にある私の会社が、たまたまいい場所を地元として持っていたという幸運があったことは確かです。不動産仲介業として流動性を重視するなら、急行停車駅のほうがメリットはありますが、賃貸の場合、人の入れ替わりが多くなるので常に空室を埋める努力をしなければなりません。

 

どちらかというと、大手は流動性を取る傾向にあります。一方、急行の停まらない駅の場合、流動性は低いかもしれませんが、格安でも安定した利回り重視で長く借りてくれる人がいて満室にすることができれば、オーナーとしては空室の心配で胃を痛めることはありません。

 

最終的に、オーナーの目的意識がどこにあるのかという点が重視されます。相続をするうえで換金性の良い土地にアパートを持ちたいというのであれば急行停車駅を狙うべきでしょうし、コストを落としてもずっと安定した利回りで回収率を高め、年金代わりの収入を得られるようであれば、急行が停車しない地域が向いています。私たちも売買をするうえでさまざまなアドバイスをしますが、オーナーがどうしたいのかという考え方次第で方向性が決定します。

株式会社小出不動産 執行役員

バブル隆盛期に不動産業界に入り、数多くの販売実績を上げた後、その経験を生かして企業の経営再建・承継コンサルタントに転身。数多くの企業や商店街の再建に取り組む。机上のアイデア提案に留まらず、その企業に自ら飛び込んで経営を主導し、内部から再建を図る行動派コンサルティングが持ち味。その実績を携えて2014年に小出不動産に入社。従来の不動産仲介業の常識を覆す経営戦略と営業活動を導入し、新しい「地域密着」型不動産仲介業を展開中。

著者紹介

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本記事は書籍『小さな不動産会社の一人勝ち戦略』(幻冬舎MC)を一部抜粋したものです。最新の情報には対応してない場合がございますので、予めご了承ください。

小さな不動産会社の一人勝ち戦略

小さな不動産会社の一人勝ち戦略

徳島 雅治

幻冬舎メディアコンサルティング

株式会社帝国データバンクの調べによると、2016年度の不動産代理・仲介業者の倒産は93件で前年度の75件を24.0%上回り、3年ぶりの増加となった。負債額別では負債5000万円未満の小規模倒産が68件を数え、全体の7割を超えている…

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