米ISM製造業景況感指数…二ヵ月連続悪化をどう解釈するか?

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●9月の米ISM製造業景況感指数が予想外に悪化し、米金融市場は株安などのリスクオフで反応。

●ただ米国では経済指標悪化でも利下げの織り込みが進めば、それが過度なリスクオフ進行を抑制。

●米中対立の長期化と景況感悪化は織り込み済み、金融市場が改めて大混乱する恐れは小さい。

9月の米ISM製造業景況感指数が予想外に悪化し、米金融市場は株安などのリスクオフで反応

米サプライマネジメント協会(ISM)が10月1日に発表した9月の米製造業景況感指数は、前月から1.3ポイント低下し、47.8となりました。市場では今回、企業活動の拡大・縮小を判断する境目となる50を回復するとの見方が多かったのですが、結局、2カ月連続で50を割り込みました。貿易を巡る米中対立の長期化などを受け、米製造業の景況感悪化が続いていることが改めて確認されました。

 

同指数の予想外の悪化を受け、ダウ工業株30種平均、S&P500種株価指数、ナスダック総合株価指数は、そろって前日から1%超下落しました。また、米10年国債利回りは、同指数の発表前は1.75%台をつけていましたが、発表後は1.61%台まで大きく低下しました。ドル円もこの動きに連れ、1ドル=108円40銭台から107円60銭台まで、ドル安・円高が進行しました(図表1)。

ただ米国では経済指標悪化でも利下げの織り込みが進めば、それが過度なリスクオフ進行を抑制

弊社は米国経済について、昨年秋口以降続いている製造業の景況感悪化は、足元で雇用やサービス業の景況感にも影響し始めているとみています。しかしながら、消費など内需を大きく減退させるほどではなく、景気後退のリスクは限定的と考えます。目先は、金融市場の安定を維持できるかが1つのポイントとなりますが、米国に金融緩和の余地があることは好材料です。

 

つまり、米国が利下げ局面にある限り、一部の経済指標が悪化しても、利下げの織り込みが進むことで、金融市場の過度なリスクオフ(回避)傾斜を抑制し、企業投資や家計消費への負の連鎖を遮断する効果が見込まれます。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、今回のISM製造業景況感指数の発表を受け、利下げの織り込みが進み、日本時間10月2日の朝方、S&P500種株価指数先物は、上昇に転じています(図表2)。

米中対立の長期化と景況感悪化は織り込み済み、金融市場が改めて大混乱する恐れは小さい

今週は、米国で重要な経済指標の発表が続くため、市場の注目が集まっています。10月2日には米民間雇用サービス会社ADPの全米雇用リポート、3日にはISM非製造業景況感指数、4日には雇用統計が発表されます(いずれも9月分)。予想比下振れとなった場合、株式市場などは素直にリスクオフで反応すると思われますが、前述の通り、米利下げの織り込みが進み、これが一定程度、相場を支える可能性があるとみています。

 

なお、来週は10日からワシントンで閣僚級の米中貿易協議が開催される予定です。協議の行方は予断を許さない状況ですが、通商分野で何らかの合意に至れば、金融市場の安定性は増し、米国など主要国で企業景況感の持ち直しが期待されます。逆に一切進展がなければ、市場に失望が広がり、景況感の持ち直しの遅れが予想されます。ただ、米中の対立長期化と景況感の悪化はすでに織り込み済みと思われ、金融市場が改めて大混乱する恐れは小さいと考えています。

 

 (注)データは2019年10月1日20:00から10月2日5:00。日時は日本時間。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]米10年国債利回りとドル円レート (注)データは2019年10月1日20:00から10月2日5:00。日時は日本時間。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

(注)左図はフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む米利下げ回数。データは2019年9月25日から10月1日。右図はE-mini S&P 500 先物(12月物)。データは2019年10月2日5:00から9:00。日時は日本時間。(出所) Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米利下げの織り込みと米株先物の動き (注)左図はフェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む米利下げ回数。データは2019年9月25日から10月1日。右図はE-mini S&P 500 先物(12月物)。データは2019年10月2日5:00から9:00。日時は日本時間。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米ISM製造業景況感指数…二ヵ月連続悪化をどう解釈するか?を参照)。

 

 

(2019年10月2日)

 

市川雅浩

三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト


株式会社三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介


調査部は、総勢25名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友DSアセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約1,000本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2018年度実績)。

著者紹介

連載【市川雅浩・シニア ストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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