就職や転職、結婚、住宅の購入、そして定年退職など人生にはターニングポイントがあります。そうした時期に自分のその後の人生について考えると思います。
日々の生活を過ごしていても、将来のことを考える機会は多くはありません。しかし私たちの将来は日々の生活の延長線上にあります。将来といっても数年先から数十年先まで、人によって違いはありますが、生活をしてくためにはお金が必要となります。お金に不安のない生活ができるようにはどうしたらいいのか、今回は、まずは第一歩。変わりゆく社会とお金について考えていきましょう。
このままの生活で将来は大丈夫なのか?
社会人として働き出した人、結婚して家庭を持った人、住宅を購入した人、子育てに奮闘している人、子どもが独立した人、退職して老後の人生を歩み始めた人など年齢や身の回りの環境によってお金の悩みや必要な金額も変わります。
日本労働組合総連合会によると77%の人が将来を不安に感じていると言われています(日本の社会と労働組合に関する調査2017年8月を参照)。なぜ、将来を不安に感じる人が増えてきているのでしょうか?
原因1:働き方の多様化
従来、日本の多くの企業では終身雇用が当たり前であり、賃金も年功序列型で常に上がり続けていました。しかし現在では、終身雇用を行う企業は減少し、非正規社員も年々増加の一途をたどっています。トヨタ自動車のような世界的な大企業でも、社長自らがメディアを通じて終身雇用の限界を訴えている以上、私たち一人ひとりが会社に頼らない人生設計が求められています。
原因2:老後の不安
世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進む日本において、以前のように定年後は年金だけで悠々自適に暮らすといったことは非常に難しくなっています。そのため第二の人生を有意義に過ごすには、自分で資金を準備しておかなくては大きな不安が残ります。日々の生活だけでなく老後という将来も考えなければならなくなっています。
原因3:ライフサイクルに大きな変化
私たちの平均寿命は年々延びており、その影響もあってライフサイクルは大きく変化をしています。特に人生100年時代と言われるほど老後が長くなってきました。そのため、これから老後は健康面も考えて生活をしなければ長期間の病院通いや高齢者同士の介護生活(いわゆる老老介護)問題が起きることになります。そして、これらの問題に直面するということは、お金がさらに必要となる可能性が高くなってしまいます。
お金のことをどう考えたらいいのか分からない
人生にはさまざまなターニングポイントがありますが、一般的には「結婚(子育て)」「住宅購入」「定年退職」という、3つの大きなライフイベントがあると言われています。これら3つのイベントは、「子供の教育資金」「住宅購入資金」「老後の生活資金」と、どれも数千万円の資金が必要となります。この3大イベントにかかるお金を考えておく必要があります。
だからと言って収入を増やすことは簡単ではありませんし、節約をしようにも生活水準を下げることや手間がかかるようなことだと、やったほうが良いと分かっていてもなかなか行動することができないのが人間です。
そもそも私たちは日本に住んでおり、日本の社会保障制度(社会保険・福祉・公的扶助等)や公的年金制度(20歳以上の全ての人が共通して加入する国民年金と、会社員・公務員等が加入する厚生年金)に加入しています。公的年金制度では、加入対象者の6,740万人のうち約98%が保険料を納付しており、将来年金を受取る権利を持っています(平成29年度末の状況、厚生労働省年金局・日本年金機構作成の公的年金制度全体の状況・国民年金保険料収納対策について《概要》を参照)。
つまり、私たちは普段の生活の中で税金や社会保険料を支払うことで、万が一の保障や老後の資金をある程度は国が担保してくれています。それらの制度の内容を知らなければ、将来が不安だからと何が備えとして不足しているのか、知ることはできないでしょう。
難しいことを考える必要はありません。私たちの身近にある制度やお金の考え方を身につけることから始めましょう。
現状把握と将来シミュレーションをしよう
誰もが自分がどんな人生を歩むかは分かりませんが、お金の準備をしておくことで、将来への不安を減らすことができるはずです。
お金の相談者といわれるファイナンシャルプランナーが実際に行っているお金と向き合う方法をご紹介します。人生は一度きりですが、ライフプランのシミュレーションは何度でも可能ですから、さまざまなパターンを作成することで、自分の将来に対するイメージや対策を考えることも可能です。
ライフプランを設計する際には、まずは現状把握から始めます。現状把握というと何か大げさに聞こえますが、考えることはたった2つです。
(1)自分が1年間に得る予定の収入がいくらか
(2)自分が1年間に使う予定の支出がいくらか
この2つの差額が、自分が年間で貯蓄できる金額となります。これで自ずと自分が今と同じ生活をしていると将来どのような資産推移となるかが分かります。ここから想定される収支の変化や将来のイベントでかかる支出を計算していれば、簡単なシミュレーションは完成です。簡易なシミュレーションは無料で行えるサイトもありますので、ぜひ試してみてください。
大切なことは楽観的に考えず、むしろ「悲観的に計画を立てる」ことです。20~30代の方なら選択肢が豊富になるでしょう。また60~70代の方なら大きな支出は終わっている可能性が高いので、配偶者や子どもがいるなら贈与や相続を考えることになります。シミュレーションは自由ですから、さまざまなパターンを想定しておけば将来への大きな備えとなってくれます。
備えあれば憂いなし、正しいお金の知識を身につけよう
厚生労働省が2019年9月に「人生100年時代構想会議」を設置するなど、至る所で人生100年と言われるようになってきました。それはこれまで以上に将来、特に老後について備えが必要になることを意味しています。
当たり前ですが人生は一人ひとり違う道を歩んでいます。そのためお金の計画も一人ひとり違います。しかしながら、お金の計画を立てる基本はみんな同じです。私は10年以上資産に関するアドバイザーとして多くの方とお会いしてきました。その中でお金に困らない生活ができている方々は、お金の基礎知識を身につけており、今後必要になるお金を把握している方がほとんどでした。
収入を増やす、節約をするということも大切ですが、まずはお金の知識を身につけて効率的な資産形成、効果的な資産運用を行えるようになることが大切です。
西崎 努
リーファス株式会社
※本記事は、2019年5月31日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。