※本記事は、2019年5月14日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。

あなたの人生に「貯め時」「増やし時」が何回あるでしょうか?

資産運用を考えるとき、あなたが「運用の原資」をどう作り出すかは重要なテーマです。そして、運用原資を捻出するチャンスは人生にそう何度もあるわけではありません。

 

今回は、資産運用に臨む前段階で「いかに多くの運用原資を確保するか」というテーマについて話してみたいと思います。つまり「貯め時」や「増やし時」があるというテーマです。

 

「貯め時」や「増やし時」はある意味、家計にちょっぴり余裕がある時期でもあります。しかし、気がつかずに浪費し続けていると、10年後に振り返った時「あのとき、貯めておけばよかった!」となるわけです。

 

「貯め時」は、投資に若干のリソースをかけて集中することもできる「増やし時」でもあります。例えば子育てに忙しい時期や、受験の前後にできる投資は限定的になります。学費資金はむしろリスクを落としておきたいところで、運用面でもインデックスベースにしておかないと管理の手間が必要になるからです。それでは人生に3回ほどある(かもしれない)「貯め時」「増やし時」を考えてみましょう。

1度目:独身時代を楽しんでいる期間

最初の「貯め時」「増やし時」は、社会人になってから独身時代の間です。最近では、初婚平均年齢がおおよそ30歳といわれているので、一般的には20代ということになります。

 

「20代なんて貯める余裕ないよ」という声が聞こえてきそうですが、20代に貯められる収支のバランスを身につけておくことが一生の財産になります。そして結婚前に貯められたお金は投資資金にもなるし、結婚時の資金や結婚後の安心を作る財産となることでしょう。

 

もちろん結婚が遅くなった場合、30代にしっかり貯めておくことは、その後の結婚生活での出費を支える大きな資産になります。婚期に関わらず、まずは貯めてみてください。

 

そしてその資金は一部を投資へ回し、少額から投資経験を積みたいところです。長く投資をしたほうが経済成長の回復を待つチャンスが生まれるし、若いうちに何度か騰落(とうらく)を経験することも大きな宝となります。

2度目:結婚して最初の子どもが産まれるまでの期間

次の「貯め時」「増やし時」は、結婚をしてから子どもが産まれるまでの間です。

 

子どもが産まれると確実に生活コストは増えます。2人ではなく3人家族になるのですから当然です。自分たちが使っていた予算をある程度は減らして、子どもに回しますが、貯蓄余力が下がることは避けられません。

 

一方で、「将来の学費準備を考えるともっと貯めていきたい」という苦しい時期がスタートします。おめでた婚(できちゃった婚)で、結婚後すぐに子どもが産まれる場合でなければ、結婚後の数年間はガッチリ貯めまくる時代にしてほしいと思います。新婚時期だし少しぐらい贅沢を…と思う気持ちも分かりますが、この時期に生活コストを上げてしまうと、後から生活水準を下げるのがとても辛くなります。旅行などの臨時出費に贅沢は抑えて、できるだけ「貯め時」を活かしてみてください。

 

投資もこの時期に行っておけば、子育て期間中のリスクコントロールも配慮できるようになり、無理のない投資金額設定(一部は預貯金などで残しておく)も行えるでしょう。

3度目:子どもがみんな社会人になり定年退職までの期間

最後の「貯め時」「増やし時」は、子どもが社会人になって卒業する間です。

 

中学3年生あたりから大学の卒業まではお金がかかり続ける時期で、貯めるどころか切り崩し(計画的切り崩しならいいが、予定外の切り崩しやローン設定となることもある)を余儀なくされる時期になります。子どもが2人以上の場合、ダブル大学生になる数年間は相当苦しいことになります。

 

卒業してくれてほっとしたとき、学費に回していた予算をそのまま貯めて増やす予算にシフトできると、一気に老後の財政基盤が膨らみます。しかし緊張が解けたこともあり、旅行などの大型出費に回してしまうことがしばしばです。

 

50代であれば「今使うより15年後に使う」と考えてみましょう。今旅行に使うのも、リタイア後に使うのも同じですが、使う「時期」をずらすだけで、自由時間がたくさんある老後の楽しみが増やせます。この貯め時増やし時を活用し、自分の老後の自由時間を充実する予算にしてみてください。

 

この世代はまだまだ投資にチャレンジしてもいい年代なので、投資を活かして資産の成長を狙ってもいいでしょう。アベノミクスレベルの上昇相場に一度乗れるだけでも、資金増はかなりはかどることでしょう。ただし、リタイア前に投資から一部の資金を退場させることを考えておくことも必要です。

 

逆に、おひとりさま(単身生活)やDINKS(夫婦2人共稼ぎ)の場合、「子どもの卒業」のような区切りがないため、始めるチャンスが見つけにくい問題もあります。できるだけ早い段階から貯めて、投資をすることで豊かな老後に備えるのが近道です。

3回ともガッチリ貯められる人はまずいない! あなたはどのチャンスを活かしますか?

さて、3つの「貯め時」「増やし時」について説明してみましたが、必ずしも全員に3回チャンスがあるとは限りません。

 

独身時間が短く25歳で結婚すれば、第1の貯め時は使えません。おめでた婚となれば第2の貯め時もありません。逆に結婚が遅く子どもの誕生も遅かった場合は、第3の貯め時がほとんど確保できないという人もいます。

 

もちろん、このコラムを読んだときあなたの最初の貯め時はもう終わっているかもしれません。

 

しかし、まだ貯め時のチャンスが残っているなら、ぜひ自分にあるチャンスを活かしてください。65歳を引退年齢とすれば第3の貯め時もまだ残っている、という人もいます。

 

そして、貯め時が確保できないという人は、あえて貯め時に頼らず資産を増やすことを考えていきましょう。私は下の子どもの大学卒業時に65歳になるので、第3のためどきはほとんど期待できません(それでも70歳まで働くつもりではありますが)。

 

そこで、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は満額を積み立てて、「子どもの学費準備と自分の老後準備を同時並行」を心がけています。

 

一般的な「貯め時」を知ることは、自分の人生に応用できることでもあります。ぜひあなたの人生と貯め時に役立ててみてはいかかでしょうか。

 

 

山崎 俊輔

フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー

 

※本記事は、2019年5月14日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。

 

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