平成27年、平成28年と、空き家に関する税制が改正されました。以前は、空き家の固定資産税についても住宅用地の特例が適用され、税制優遇の措置がありましたが、現在、「特定空家等」に該当すると、税額が上がってしまいます。では、この「特定空家等」は、どのような条件だと認定されるのでしょうか。税理士法人中央会計の辛島政勇氏が解説します。

過去は空き家でも固定資産税の優遇措置があったが…

まずは空き家の固定資産税について解説します。平成27年度より、地方税法349条の3の2第1項の規定に基づき、空き家のうち「特定空家等」に該当すると、固定資産税に対して、住宅用地特例が適用されなくなりました。

 

◆固定資産税について

 

そもそも固定資産税は、3年に1度見直される固定資産税評価基準に基づき、計算が行われます。しかし、事業用の建物と同じ税額では、通常の住宅の税負担が重い、ということを鑑みて、住宅並びに住宅が建てられている土地に関しては、固定資産税の優遇措置が設けられています。

 

●住宅1戸につき200平米までの小規模住宅用地:課税標準の1/6(都市計画税は1/3)

●住宅1戸につき200平米を超えた部分である一般住宅用地:課税標準の1/3(都市計画税は2/3)

 

◆特定空家等の固定資産税の税制について

 

過去、住んでいない住宅であっても、「建っている」という理由だけで固定資産税は優遇されていました。しかし、放置されている家屋は、倒壊で人やモノへ被害を与えたり、景観を損ねたりする等、周辺環境への影響を与えかねないため、一定の空き家については、税制優遇の対象から除外され、通常の固定資産税を賦課することになっています。

 

平成27年以降は、一定の状態になっている空き家を「特定空家等」と呼んでいます。こちらに該当すると、通常の空き地と同じ税金が課されることになります。

「特定空家等」に該当する要件とは?

◆特定空家等について

 

平成27年2月26日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」において、「特定空家等」というものが定められました。該当用件は以下のとおりです。

 

●そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

●そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

●適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

●その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 

実際に「特定空家等」に該当するかどうかは、市町村が判断することになりますが、唐突に「特定空家等」になることはないとされています。該当するまでの流れとして、市町村は以下の手順を踏む必要があります。

 

① 調査

② 助言又は指導

③ 勧告

④ 命令

 

市町村から助言又は指導を行っても応じない所有者の住宅用地のみが、税制優遇を受けることができなくなります。もし、所有している土地に関して市町村から指導等があった場合には、補修や整理等の対応をする必要があります。

 

◆空家譲渡の税制優遇について

 

ただし、補修や整理等の対応を行うにも、費用がかかってしまいます。

 

そこで平成28年税制改正大綱において、一定の空き家に関しては、その家屋や土地を譲渡した際の所得(譲渡したことで得られる利益)の3,000万円の特別控除が認められています。

 

譲渡所得の特別控除の要件は①「家屋又は家屋と土地を売る場合」と②「家屋を解体した後の土地を売る場合」で異なります。

 

●譲渡所得の特別控除の前提条件

・平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に譲渡をしているもの

・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること

・区分所有建物登記がされている建物でないこと

・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと

・相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡していること

・譲渡の対価の額が1億円以下であること

※詳しくは国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご覧ください

 

①家屋又は家屋と土地を売る場合

・相続時から譲渡時まで、事業や不動産の貸付け又は居住用に使用されていないこと

・譲渡時において地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合するものであること

 

②家屋を解体した後の土地を売る場合

・相続時から解体時まで、事業や不動産の貸付け又は居住用に使用されていないこと

・相続時から譲渡時まで、事業や不動産の貸付け又は居住用に使用されていないこと

・取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと

 

上記は代表的な条件です。このほかにも、確定申告書に地方公共団体の長等が要件を満たしていることを確認した証明が必要になるなど、控除を受けるための条件は細分化されています。

 

心当たりがある方は、譲渡所得の特別控除を利用するための条件に合致しているかどうか、注意をお願いします。

 

◆まとめ◆

本記事では、空き家に関する税制のなかでも、大きなものをピックアップして制度のポイントを解説しました。このような制度を使い、無駄な税金等を払うことのないように対策をしてもらえれば幸いです。

 

ただし、制度を使うために親族等の関係を壊してしまい、「争族」に発展しないよう、気を付けてください。

 

 

辛島 政勇

中央会計株式会社/税理士法人中央会計 税理士

 

本記事は、『中央会計株式会社』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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