中小企業では、経理作業の大半が経営者の仕事であることも多いでしょう。なかには、「もっと優先すべき仕事がある」と、経理を後回しにしている方もいるかもしれません。しかし、経理作業を疎かにしてしまう中小企業は、思わぬ「潜在的リスク」を抱えている可能性があります。そこで本記事では、税理士法人中央会計の辛島政勇氏が、経理体制を整えることの重要性を解説します。

中小企業の経営者は「経理作業」を疎かにしがちだが…

◆経理の役割って?

 

経理の役割とは何でしょうか? 経理は「単なる記録のための作業」ではありません。その役割とは、「経営管理」だといわれています。経営陣が的確な経営判断をするための情報を提供する機能を有するものです。

 

経理からあがってくる試算表などの経理資料は、経営者にとって最高の参謀となります。ですから、経理はとても重要なポジションといえます。

 

◆社長は経理を疎かにしがち?

 

中小企業では経理作業の大半が経営者の仕事であるということも多いでしょう。経営者のなかには「経理事務に人を雇うのはもったいない」という方や、「経理なんて後回しでとりあえず売上を!」という話もよく耳にします。

 

確かに売上を上げることは大事です。また、経理というのはやらなくてもそれなりに会社は動いていきますし、直接売上を生まない部門であることから、必要性は認識していても、なかなか敬遠されがちです。

 

しかし、会社の経営活動の結果というのは数字に表れてきます。この数字が正確なものでなければ正しい判断ができません。最悪の場合、間違った判断をしてしまい、取返しのつかないことになってしまうかもしれません。客観的に自社の数字を把握することは、とても重要なのです。

 

◆経理体制の構築、正確な経理資料の作成…的確な経営判断の材料となる

 

経理体制の構築ができている会社が必ず儲かっているわけではありません。しかし儲かっていなくても、きちんと経理処理ができていれば、会社の数字を把握でき、経費節減等の対策を打つことができます。逆に利益がでている場合は、早い段階から税金対策をたてることができます。十分な対策ができずに無駄な税金を払ってしまうことはなくなるはずです。

 

また、会社を経営する上で会社の経営成績と財政状態を的確に把握するために経理体制の構築は欠かせません。

 

会社の今を知ることで、将来の経営判断の糧となります。問題点を早く見つけることができれば、すぐに手を打ち、より安定した経営を行うことが可能となるでしょう。

「経理体制」が整っていない場合に起こる問題

◆疎かにすると大変! 内部だけじゃなく取引先や金融機関の信用も…

 

●取引先

 

社外で起こる問題も見てみましょう。経理体制がきちんとしていないと取引先とのお金の動きも把握できなくなります。売掛金の回収漏れや買掛金の支払漏れなどで、信用を失くし、大問題になってしまう場合もあります。

 

取引先の倒産などに関しても、取引先とのお金の動きを把握できていれば、ちょっとした変化を見逃すことなく、与信管理にも役立ちます。

 

●金融機関

 

経理体制をきちんと構築していないと、決算申告前に行う作業が増え、ばたばたしてしまい、きちんとした申告書ができないというようなケースがよくあります。いい加減な財務諸表を作成してしまうと、それだけ銀行や信用調査会社からの評価も低くなります。

 

特に融資の際には、会社の経営成績を「いつでも/正確なもの」が出せるかということで企業の評価も変わってきます。昔のように「長いお付き合い」だけでは融資をしてくれません。

 

●税務署

 

税務調査の時には必ず原始記録(領収書等)の確認をされます。その際に調査官に与える印象も、書類整理などがきっちりできている会社とそうでない会社とでは税務調査官に与える影響はずいぶん違ってきます。調査官に厳しく指摘され、多額の税金を追徴されるようなことも考えられます。

 

 

辛島 政勇

中央会計株式会社/税理士法人中央会計 税理士

 

本記事は、『中央会計株式会社』ホームページのコラムを抜粋、一部改変したものです。

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