健康診断で正常値…それでも「糖尿病予備軍」と言われる理由

健康のために「糖質制限」にチャレンジしたものの、美味しいご飯の誘惑に勝てず挫折してしまった経験はありませんか? 本連載では医師の市川壮一郎氏の著書、『ゆる糖質オフ そうだったのか 食事術!』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、「糖質中毒」のメカニズムや、挫折しらずのゆるい糖質制限の方法を紹介していきます。

何となく体調不良…「糖質中毒」が原因かもしれない

◆食後の血糖値って意識してますか?

少しお腹が出てきて、メタボを気にしている。それでも健康診断の空腹時血糖値は、とりあえず正常範囲内と言われる……。あなたの年齢が、20代あるいは70代であろうと、太めでなくとも、女性であっても、あなたは糖尿病予備軍かもしれません。ただ、それに気づいていないだけなのです。

 

「しっかり食べて、よく眠っているはずなのに疲れが抜けない」

 

「だるくてやる気が起きない」

 

「昼食後しばらくすると眠くなってしまう」

 

こうした自覚があるなら、おそらく、あなたの体の中で糖質(炭水化物)を摂取したことによる「血糖値の乱高下」が起きています。そして、あなたはすっかり「ご飯中毒=糖質中毒」を重症化させているのです。もっとも、いきなり「糖質」だの、「血糖値」だのと言われてもピンとこないかもしれませんね。最初に基本的なことを確認しておきましょう。

 

血糖値は、血液中に糖分(ブドウ糖)がどのくらい存在するかを示す値(血液1dL当たりに何㎎の糖分が含まれているかで表します)です。その糖分は主に食事によってもたらされます。

 

より専門的な話をすれば、食事以外にも肝臓の「糖新生」という働きによって血糖値が上がります。しかし、本書を読み進める上では、基本的に食べたものに含まれる糖質が血糖値を上げると考えてください。

 

ですから血糖値は、空腹時は低く、食事をすれば上がります。それでも健常者は80から140㎎/dLくらいに収まっているとされています。あえて、「されている」と表現したのは、実はそうでないことが多いからです。普段の食事によって、気づかないうちに血糖値は異常域まで上昇し、あなたの体の中で困った事態を引き起こしています。

 

◆食後高血糖は「隠れ糖尿病」

いったい、何が引き起こされているのでしょう。

 

食事をして血糖値が上昇すると、それを察知して膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは、血糖値の上昇をほどほどで収めてくれる役割を果たします。だから、インスリンが出ること自体はいいのです。

 

ただ、血糖値が急上昇すれば、その分、インスリンも頑張って働かねばなりません。そして、働きすぎて、今度は血糖値を急降下させてしまいます(この急激に血糖値が変動する傾向を「血糖値スパイク」と呼んでいます)。グワーと上がった血糖値がドスンと落ちるわけです。この「グワー、ドスン」が体にとって非常に悪いのです。

 

まず、あなたのパフォーマンスを落とす、あらゆる不調をつくりだします。血糖値が高くなっても、よほどのことがないと自覚症状はなく、だるさやイライラを訴えるくらいです。でも、反動で70くらいまで下がると、疲労感、吐き気、震え、眠気など不快な症状が出てきます。

 

あなたが普段から感じている体の不調、疲れやすさ、眠気などの原因が、ここにある可能性が極めて高いのです。しかも、それは「調子が悪い」で済む問題ではなく、気づかぬうちにあなたの体をボロボロにします。

 

血糖値の乱高下は動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中などの血管性疾患を引き起します。もちろん、糖尿病になる可能性も高まります。さらに血糖値の上昇とインスリンの大量分泌は、肥満の原因そのものですし、認知症になるリスクを増大させます。

ご飯好きの日本人…知らず知らずに高血糖状態に!?

◆「糖質」も「血糖値」も誤解だらけ。大多数は何も分かっていない

血糖値が一定の基準を超えると「糖尿病」と診断されることは、あなたも知っているでしょう。でも、多くの人は「自分には関係ない」と思っています。なぜなら、健康診断で「異常なし」という評価をもらっているからです。

 

しかし、健康診断で異常を指摘されていない人でも、たびたびとんでもない高血糖状態になっています。医師である私ですら、食べ物次第では簡単に正常値を超えてしまいます。

 

どうして、そんなことになるのでしょう。それは、私たちが普段から、極めて血糖値の上がりやすいものを常食しているからです。

 

血糖値が上昇する原因は、ただ一つ「糖質の摂取」です。膵臓のインスリンをつくる細胞が壊されてしまう1型糖尿病の患者さんはタンパク質をとることでも若干、血糖値が上がりますが、通常は、脂質やタンパク質はいくらとっても血糖値は上がりません。

 

では、「糖質」とは何なのでしょうか。糖質というと、甘い物を連想する人が多いのですが、ご飯やパン、うどん、そば、ピザ、イモ類など、私たちが普段から口にする炭水化物はほぼ糖質です(食物繊維も含まれます)。ご飯をずっとかんでいると、だんだん甘みを感じてくるでしょう。それは、ご飯が糖質である証拠です。

 

ご飯などに含まれるでんぷんは「多糖類」、砂糖は「二糖類」という分類になりますが、どちらも、食べると分解されてブドウ糖に変わります。そして、血糖値を押し上げます。つまり、ご飯も砂糖も同類です。

 

この仕組みを知らずに、「俺は甘い物は食べないから大丈夫。しっかりご飯を食べて間食はしないから」なんて言っている人が一番、危ないのです。

 

ご飯大盛! がリスクを増大させる
ご飯大盛!がリスクを増大させる

糖尿病、肥満、認知症…知られざる高血糖のリスク

◆なぜ、肥満も血糖値次第なのか。そのカギはインスリンにある

先ほども触れたように、肥満の原因も血糖値の上昇にあります。

 

血糖値が上がると、インスリンが分泌されて上昇をほどほどに抑えるのでしたね。そのときに、インスリンの作用でブドウ糖は細胞にとり込まれ、グリコーゲンに変えられ体に保持されます。それでも余ったブドウ糖は、中性脂肪に変えられ体に貯蔵されます。

 

つまり、ご飯などの炭水化物をたくさん食べることで血糖値が上がり、それを抑えようとするインスリンの働きで体に中性脂肪が増えあなたは太ってしまうのです。

 

肥満は、見かけ上の問題には終わらず、あらゆる生活習慣病を引き起こします。太った人が医者から「やせなさい」と言われるのは当然のこと。そういう状況にあなたを追い込むのは、脂肪の多い食事ではなく(脂肪は血糖値を上げません)、ひとえにご飯などの糖質です。

 

一方、私たちが活動するときに必要なエネルギーとして、まずはグリコーゲンが使われます。グリコーゲンが尽きると中性脂肪から切り離された脂肪酸やケトン体がエネルギーになります。だから、あなたの体に蓄積した中性脂肪を燃やしたかったら(すなわち、やせたかったら)、まずはグリコーゲンを使い尽くして中性脂肪を燃やす方向に持っていかねばなりません。

 

ここで、糖質の多い食事をしていたらどうなるでしょう。新たにグリコーゲンがつくり続けられるので、とても中性脂肪の出番はありません。それどころか、グリコーゲンの容量は満杯になって、どんどん中性脂肪が増えてしまいます。

 

逆に、糖質の少ない食事に変えたらどうでしょう。グリコーゲンはあまりつくられないために、エネルギー源として体の中性脂肪を使うようになってやせていきます。肥満や、肥満を原因とする生活習慣病と無縁でいたいなら、ご飯などの糖質は控えたほうがいいわけです。

 

血糖値を上げていると、認知症を発症しやすくなる

血糖値を下げるためにインスリンを大量に分泌させていると、肥満ばかりか認知症も誘発しやすくなると考えられています。どういうことか簡潔に説明しましょう。

 

認知症の患者さんの脳には、βアミロイドタンパクという物質が蓄積されていることが分かっています。この物質がたまることが認知症の原因と考えられているのです。そして、この物質を分解する酵素は、インスリンを分解する酵素と一部ダブっています。血糖値が上がってインスリンがどばどば出ていれば、その酵素はインスリンを分解するのに手一杯になります。結果的に、βアミロイドタンパクの分解がうまくいかずに蓄積してしまい、認知症を発症しやすくなると考えられているわけです。

 

では、「俺はやせ型だから、インスリンもあまり出ていないのだろう。ということは、認知症にも無縁だな」などと安心していいのでしょうか。

 

それはあまりにも短絡的です。

 

実は、日本人は欧米人と比べ、もともとインスリンがたくさん出る体質ではないため、血糖値は上がっているのに太らないだけというケースが多いのです。逆に、インスリンが出やすい欧米人は太りやすく、とくに、糖質の多いファストフードを多食しているアメリカ人の肥満ぶりは半端ではありませんね。

 

血糖値が上がっているのにインスリンがあまり出ない人の場合、余ったブドウ糖を中性脂肪に変える力が弱いので、確かに太りません。その代わり、血糖値を下げることが難しくなります。つまり、重篤な糖尿病になりやすいということです。

 

私のクリニックには、若い女性の患者さんも多くいます。彼女たちはたいていスマートです。あまりインスリンが出ないタイプなのだと思います。甘い物をたくさん食べても太らないため、自分の食生活に問題があるなんて思わずに過ごしてきて、「何だか体調が悪い」と病院を訪れ、血糖値を測定して大ショックを受けるわけです。

 

重篤な糖尿病になると、最初はインスリンが出ていた患者さんも、それが枯渇して、まったく血糖値のコントロールができなくなります。だから、注射でインスリンを投与する必要が出てきます。

 

インスリン注射は、自分で打つ煩わしさがあるだけでなく、低血糖を引き起こしたりと、なかなか扱いが難しい薬です。血糖値に無関心でいれば、やがてそういう道が待っているということです。

循環器専門医、日本糖質制限医療推進協会提携医

1975年生まれ、東京都出身。千葉大学医学部を卒業後、循環器専門医として救急医療に邁進する中で、病気となってから受診するのではなく、その前に予防できればより多くの方が毎日を健やかに過ごすことができると確信。2018年に生活習慣病を中心とした診療をするため、千葉県船橋駅前に「いちかわクリニック」を開業(https://ichikawa-cl.com)。日々訪れる数多くの患者さんに、食生活を含めた生活習慣の改善を行っている。特に糖質制限については、遠方からの受診を希望される患者さんも多く、糖質の取りすぎを無理なく是正することで、数多くの糖尿病患者さんの改善に成功している。

著者紹介

連載無理をせずに体質改善!「ゆる糖質オフ」食事術

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