本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

7月分機械受注(除船電民需)は前月比▲6.6%と2カ月ぶりの減少

 

製造業・前月比は+5.4%と3カ月ぶりの増加、非製造業は2カ月ぶり減少

 

7~9月期見通しは前期比▲6.1%。8月・9月が各前月比▲5.2%で達成

 

3カ月移動平均4カ月ぶり前月比微減。基調判断「持ち直しの動きがみられる」継続

 

 
 

 

●7月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は▲6.6%と2カ月ぶりの減少になった。先月同+13.9%の増加だった反動面も大きいようだ。3カ月移動平均は前月比▲0.6%で4カ月ぶりに微減となった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は+0.3%で2カ月連続の増加になった。

 

●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前々回5月分では大型案件は0件だったのに対し、前回6月分では大型案件は4件(全て運輸業・郵便業の鉄道車両)あり、運輸業・郵便業の前月比は+91.4%の大幅増加になっていた。今回7月分では大型案件は0件だった。

 

●7月分製造業の前月比は+5.4%と3カ月ぶりの増加。製造業17業種中、9業種で増加し、減少は8業種だった。

 

●7月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲15.6%と2カ月ぶりの減少になった。7月分の電力業は6月分が前月比+67.5%増加した反動もあり、前月比▲25.3%になった。電力業を含む、非製造業全体では前月比▲10.4%と2カ月ぶりの減少になった。7月に船舶の大型案件があった建設業は前月比+113.6%の増加、6月分の大幅増加の反動が出た運輸業・郵便業の7月分前月比は▲45.8%であった。非製造業12業種中、7業種が増加で5業種が減少となった。

 

●大型案件は、前回6月分では合計8件。内訳をみると、運輸業・郵便業の鉄道車両の4件の他は、外需の4件(航空機1件、火水力原動機1件、電子計算機等2件)であった。今回7月分では合計2件。内訳をみると、建設業の船舶1件の他は、官公需(その他官公需)の1件(その他産業機械)であった。

 

●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は7月分で前月比+1.7%と2カ月ぶりの増加となった。前年同月比は▲7.2%と3カ月連続の減少になった。

 

●外需は7月分で前月比▲6.0%で2カ月ぶりの減少になった。前年同月比は▲16.1%と4カ月連続の減少になった。

 

●内閣府の基調判断の推移をみると、18年10月分と11月分では「機械受注は、持ち直しの動きに足踏みがみられる」という判断だったが、18年12月分に「足踏みがみられる」に下方修正され、19年3月分まで4カ月連続して「足踏みがみられる」という判断だった。4月分では3カ月移動平均が+3.6%と4カ月ぶりに増加に転じたこともあり、4月分では「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断に上方修正された。5月分・6月分に続き7月分でも「機械受注は、持ち直しの動きがみられる」という判断で据え置きとなった。7月分の機械受注統計は想定の範囲内の動きであったと言えよう。

 

 

●機械受注(除船電民需)7~9月期の前期比見通しは▲0.3%である。7~9月期の前期比実績は見通しに使う達成率の計算方法を変えた09年(平成21年)からの10年間でみると、上振れ8回、下振れ2回であり、上振れしやすい傾向がある四半期である。19年(令和元年)の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率94.3をかけたものである。7~9月期の前期比見通しの▲6.1%を達成するためには、8~9月の各月で▲5.2%以上で大丈夫だ。ちなみに、各前月比が0.0%なら、7~9月期の前期比は▲1.0%になる。世界経済の動向が不透明な中、今後の動向については予断を持つことなく注視する必要がある。

 

●19年6月調査の日銀短観では、19年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+7.4%になった。一方、19年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲9.3%だった。マイナスのことが多いこの時点では過去平均よりも高めの計画となっている。19年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は+2.3%になった。また、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全産業・全規模の設備投資」の2019年度計画・前年度比は、大企業・全産業で+8.2%。一方、19年度の中小企業・全産業で▲4.2%だった。19年度の全規模・全産業では+5.7%と底堅い数字になった。こうした計画調査からみると、設備投資の先行指標が底堅く推移していても不思議ではないだろう。

 

●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIの最近の動きをみてみよう。18年12月分の景気ウォッチャー調査では、設備投資関連・現状判断DIは55.0(同5人)、設備投資関連・先行き判断DIが50.0(同9人)。18年のうちは底堅い動きだった。

 

 

●しかし、19年に入ると変調をきたし、米中貿易摩擦など先行きの不透明材料を受けて、設備投資関連・現状判断DIは5月に36.7(同15人)まで、設備投資関連・先行き判断DIは6月に31.8(同11人)まで低下した。

 

●その後、7月には、設備投資関連・現状判断DIは50.0(同8人)、設備投資関連・先行き判断DIが44.2(同13人)へと一旦持ち直したが、7月には、設備投資関連・現状判断DIは36.5(同13人)、設備投資関連・先行き判断DIが41.7(同12人)へと再び悪化した。

 

●8月調査では「働き方改革の影響などにより、パソコンの需要や関連の設備投資などの動きが進んでいるが、当社の業績は横ばいでの推移となっている。(北海道・コピーサービス業(従業員))、「米中貿易摩擦の影響や先行きへの不安があり、設備投資が慎重になっている。(一般機械器具製造業(総務担当))」、「自動車向けの設備投資について、計画実施の決定が遅れており、延期や中止の連絡も入り始めている。一方、自動車関連以外の設備は横ばいの状況である。(輸送用機械器具製造業(役員))」といった意見がみられる。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年7月分機械受注』を参照)。

 

2019年9月12日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

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