廃業という選択肢すら検討したケースだが・・・
前回の続きです。
ここで大事なのは、相続だけまたは経営だけと分けて考えるのではなく、トータルで考え解決の道を探ることです。一般に相続が絡む場合には相続税に意識がいってしまいがちで、相談先としては税理士を選ぶことが多いと思いますが、問題を矮小化してはいけません。
経営者の場合、相続だけ、経営だけのどちらかがうまくいけばよいというものではなく、双方が円満に解決する意識を持たなければなりません。相続税は払えたけれど、経営がうまくいかなければ、結局、資産も承継できなくなってしまいます。
廃業という選択については、Aさんご自身も考えていたそうですが、収益が出ている事業を清算するまでの道のりの大変さ、廃業後の収益確保がネックとなって思い切れなかったようでした。
自社株を「不動産」に換えたことで評価減を実減
しかし、そうした問題をサポートしてもらえるならと廃業を決断され、提案から1年ほどで筋道を立てることができました。
当然、それにあたっては各行程で必要な支援を行いました。たとえば廃業に関しては、スムーズに廃業にこぎつけるまでの取引先や従業員、金融機関などへの対応を支援し、事業用地売却にあたっては土壌汚染対応を含め、最高値で売るための売却を支援しました。
収益物件購入にあたってはAさんの意向を踏まえたうえで、収益性の高い物件を選定・購入し、運営までをバックアップしています。
その結果、
①取引先、従業員の円滑な他社への移行
②廃業までの資金繰りシミュレーションを行ったうえでのスムーズな既存借入金の清算
③好立地不動産の購入による安定した収入の確保
④取締役間でのトラブル回避
を実現することができました。さらにはAさん個人の相続税についても自社株を不動産に換えたことで大幅な削減を実現したのです。
自社株の価額をそのまま不動産に置き換えて賃貸にした場合、貸家建付地に該当するため、15%の評価減が受けられます。これは自分の土地の上に自分で建物を建てて貸し付ける場合には、貸家建付地となって評価が下がることを利用したものです。今回のケースでは約3000万円の評価減に成功しました。