ヨーロッパの優良投資先の1位に選ばれた「ベルリン」
第17回の連載では、2016年のベルリン不動産市況を予測しました。今回は、着実に高まるベルリンの不動産市場への注目度を、各業界エキスパートの観点から見ていきます。
2015年に続いて今年も、ヨーロッパ諸国の不動産投資先としてどの都市よりも熱い視線を集めているベルリン。関連業界の専門家達は、この動向をどう見ているのでしょうか?
不動産業界で高く評価され、広く参照されている報告書に、世界最大規模のコンサルティング・サービス会社PwC (PricewaterhouseCoopers)と、非営利の調査・教育組織ULI (Urban Land Institute) が共同でまとめた「ヨーロッパ不動産市場における最新動向2016年」(Emerging Trends in Real Estate Europe 2016)というものがあります。これは、国際市場における様々なエキスパート550名に対して行われた詳細なアンケートに基づいて作成され、ヨーロッパ不動産市場の新たな動向、そして今後の発展予測などが盛り込まれています。
報告書には、2016年の投資および発展の好機が見込まれる不動産市場は、昨年に続き、ベルリンが堂々の第一位を獲得したという結果が掲載されています。ベルリンには過去何年にも渡り、クリエイティブな精神を持つ人材が世界中から集まってくるという動きがあります。
大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの調べでは、ドイツのスタートアップ企業に対する2015年の投資額は約31億ユーロ(約3900億円)となり、その前年比較で2倍となりました。中でもベルリンのスタートアップ企業に対する投資額が特出しており、全体の3分の2以上(約2650億円)に達しました。この額はヨーロッパ他都市を凌駕する規模で、2位ロンドン(約2140億円)に大きく差を付けています。新しい企業が続々と設立され、スタートアップシーンも活発なのです。観光産業も成長を続けていることを背景に、人口増加も着実に進んでいます。
ベルリンが2016年の投資および発展の好機が見込まれる不動産市場に選ばれたのは、特に国際不動産のエキスパートが、メディアとテクノロジーの分野で “ホットスポット“となっているベルリンに着目していることが結果に反映された形です。さらに、投資家、ファンド・マネージャー、デベロッパー、不動産会社、金融会社、仲介業者、コンサルティング会社など多岐にわたる分野のエキスパート達も、ドイツの首都が持つ不動産市場の動きを注視しているのです。
【2016年の投資および発展の好機が見込まれる不動産市場】
長期に渡る「多様な投資機会」も高く評価
ドイツ国内の他都市、例えばミュンヘンを見てみると、その不動産マーケットの物件は既に、投資には高すぎるレベルに達しています。そのため、今後、不動産価値に顕著な成長を見込むことは実質的に無理である、というのが投資家達の意見です。ベルリン不動産マーケットでも物件価格の上昇は顕著ではありますが、不動産エキスパート達は引続き、ベルリン市場に期待を寄せています。そのポイントは大きく3つに集約されます。
①若い労働力・人材が豊富
②テクノロジー関連分野の成長を押し上げる魅力的な環境
③プレミアムな不動産物件プロジェクトに対する大きな可能性
さらに、長期に渡る多様な投資機会という視点から市場を観察した場合、ベルリンは他のロケーションに比べてオファー数が多いです。また、この判断を共有するエキスパートも数多くいることが報告書から分かります。
では、報告書作成に協力したエキスパート達は、不動産投資の観点からベルリンをどのように評価しているのでしょうか? 下記に、いくつかご紹介します。
“不動産開発という面から見ると、持続的な発展の可能性を秘めている街”
“ベルリンには、まだまだ豊富なチャンスが存在している ”
“クリエイティブな分野に関連する業界は全て、例外なくベルリンに流れている。この街のテナントは驚くほど多岐に渡っていて、ダイナミズムが感じられる。それに、ベルリンのインフラはどんどん新しくなってきている”
“「ヨーロッパで今一番ヒップな街」、ベルリン。その評判は観光客数増加をもたらし、商業地区中心であるCity West(注)エリアの活性化を押し進めている”
(注)City West : 旧西ベルリン中心地で、現在最も賑わう商業エリアのひとつ。第2回コラムでご紹介した「完全リフォーム」物件の好例、ヨーロッパ最大規模を誇る高級百貨店KaDeWeも、このエリアに位置しています。