近年、都市開発の新時代を担うエリアとしてベルリン東駅が注目を集めています。今回は、そのベルリン東駅を中心として進められる、さまざまな不動産の開発プロジェクトについて見ていきます。

大々的な開発が進む「ベルリン東駅」周辺地域

ベルリン観光スポットとして不動の人気を誇るイーストサイド・ギャラリー(壁画として保存された『ベルリンの壁』の一部)から徒歩10分。鉄道環状線上に位置するベルリン東駅が現在、都市開発の新時代を担うエリアとして大きな注目を集めています。

 

ベルリン中央駅はこの5月に開業10周年を迎えました。それまで西部のベルリン動物園駅と並び、東部の主要なターミナルとして活躍してきた、ベルリン東駅。中央駅開通後は経由する長距離列車数が減り、南側にシュプレー川が流れる以外、特に賑わいのない駅でした。

 

[図表1]ベルリン周辺の路線図

 
 

 [図表2]ベルリン東駅の現在の様子

 
(左)ベルリン東駅の外観
(右)ベルリン東駅の構内

 

このベルリン東駅ですが、近年、旧操車場エリアや周辺の大々的な開発が盛んになってきています。

 郊外への移住は収束、街の中心で暮らしたい人々が増加

暮らし、働き、余暇を楽しむ――。このすべてを、ひとつのエリアで完結することは可能でしょうか? 郊外へ向かう人々の大規模な移動(移住)が収束し始めた現在、都市計画は新たな課題を抱えています。それは、街の中心へ向けて住処を動かしたい人の数の増加に、どう対応していくか、ということです。

 

都市内部に、新しくハイグレードな環境を創り上げること。それには、ビジネスが盛んに行われることに加え、住宅エリアという役割も担うことが求められます。現在ベルリンでは、まさにこのような都心部のスペース開発に、新たなスタンダードが姿を現し始めています。

 

2008年、まだ周囲に空き地が広がるベルリン東駅旧操車場の真っ只中に、巨大なイベント・アリーナが完成しました。完成当時『O2アリーナ』と呼ばれていたこの施設は、2015年に『Mercedes-Benz-Arena』と改名され、現在年間を通じて約150ものスポーツ競技会や、世界的に有名な歌手のコンサートなどが開催されています。

 

[図表3]イベント・アリーナ「Mercedes-Benz-Arena」の外観

 

実はこの施設、米国に拠点を持つアンシュッツ・エンターテイメントグループが、この地を賑やかで活気溢れる、現代的でメトロポリタンなエリアにしようと、15年も前から温めていた計画の一部でした。

 

同社はさらに2億ユーロを投じ、ベルリン東駅周辺を、都心部の一大エンターテイメントエリアへ変貌させるべく計画を進めています。この大規模な建設プロジェクトでは、14のスクリーンと2,500席を装備した複合シネマ、4,000人の観客が入るアリーナ等が計画されています。それに加え、28レーンのボーリング場や、カフェ、レストランなど多種店舗で賑わう予定です。

 

[図表4]ベルリン東駅周辺の開発プロジェクト

 
 

[図表5]施設の完成予想図

 

大手企業の進出で雇用創出にも期待

ドイツ最大手の自動車会社がその営業センターを開業したことで、その他の企業も続々とこのエリアへ進出しています。その一例として、ヨーロッパのほぼ全域で巨大なセールスを誇るeコマース会社Zalandoは、新たな本社ビルをこのエリアに建設します。オフィス開業後は、約3,500名の社員の職場となる予定です。

 

また、大きなホテルと多数のオフィスが入った商業ビルが既に完成し、そのすぐ近く、“これぞベルリン”的な雰囲気で有名なワルシャワ橋(Warschauer Brücke)のふもとに、大型ショッピングセンターEast Side Mallの建設が開始されました。

 

延べ面積25,000平米の建物内には、100以上のカフェやレストラン、小売店や娯楽施設が入ります。2018年の開業を目指して進められるこのモールを基点に、20,000人もの雇用創出が予想されており、ベルリン現市長も、このエリアの将来的な雇用数に言及するほど注目度が高まっています。

 

娯楽だけではなく、ベルリン市民の働く場としても、ベルリン東駅は街の新たな潮流を生み出してゆくでしょう。

 

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