毎年110万円まで非課税…「連年贈与」に関するよくある勘違い

少しずつ相続財産を減らしていくことができ、なおかつ贈与税も回避できる「暦年贈与」と呼ばれる相続対策が一般的にも知られるようになりました。受贈者1人あたり1年の非課税枠110万円を活用した贈与ですが、やり方を間違うと税務署からペナルティが与えられるともいわれています。本記事では、相続・事業承継を専門とする税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士、天満亮税理士が、「連年贈与」について解説します。

「連年贈与」で税金をたくさん払うことはないが…

みなさん、暦年贈与による節税対策は活用されことはありますか。

 

非常に手軽に行える反面、贈与の成立要件を満たしているかといった注意点は細かく問われることがあるので気をつけましょうと他の記事でもお伝えしました(関連記事「孫のために…で課税!? 赤ちゃんへの「贈与」が認められないワケ」参照)。

 

今回は、暦年贈与の中での注意点のひとつとしてよく言われている、『連年贈与』について説明させていただきます。

 

連年贈与は、贈与に関するセミナーやインターネットの記事で注意点としてよく見かけることがあるかと思います。

 

筆者も、外部の金融機関さんのセミナーでお話をさせていただく際には、参加者の方から連年贈与についてご質問を頂き、非常に心配されている方が多くいらっしゃるのだと実感することが多いです。

 

そもそも連年贈与とはどういったものでしょうか? これは単純にいうと、『毎年繰り返される贈与』のことをさします。この言葉の定義からすると、節税対策として毎年コツコツと決まった額である110万円をお子さんやお孫さんの誕生日に実行されている(毎年贈与をおこなう)、そういった例がわかりやすいのではないでしょうか。

 

それでは、「連年贈与には注意」とはどのようなことなのかご説明します。

 

 

まず最初に、曖昧な説明でいたずらに不安を煽るような表現を多く見かけますが、結論としては、連年贈与で税金をたくさん払うことはないので安心して下さい

 

順を追って説明します。

 

皆さんの混乱の原因は『連年贈与』と『定期贈与』の認識の違いだと思われます。連年贈与は既にご説明しましたが、これとは別に『定期贈与』というものがあります。これは、定期的な給付(支払い)を目的とする贈与をさし、一定期間で、一定額の給付(支払い)を行う贈与(契約)となります。

 

両者の違いを整理しましょう。

 

『連年贈与』・・・毎年その都度ごとに、その都度ごとの金額を渡す贈与

『定期贈与』・・・贈与契約時に、贈与金額を決めますが、実際に渡すタイミングは複数年・複数回にわたって実行する贈与(毎年贈与という取り決めをする)

 

つまり、連年贈与としてその都度贈与をしていたが、結果的に定期贈与のような形式となることで税金がたくさんかかるのではないかという勘違いをしているということになります。

 

定期贈与は、贈与実行時に、父から子へ、毎年110万円ずつ、10年間にわたって贈与(合計1,100万円)を行うという契約書を作成し、その契約に基づき贈与した場合に限り、契約時点での全額が課税対象となります。

 

ここで不安に思われる方、例えば、節税計画を考える際に、今後の贈与の大まかなスケジュール(10年間で1,000万くらい渡す)を考えた上で連年贈与を行ったとすると、『定期贈与』と同じになってしまうのでは? とお考えになってしまうということではないのでしょうか。

「定期贈与」とみなされないためには?

しかし、安心して下さい。『定期贈与』は、今後の贈与金額を最初から確定し、契約書という書面を残している贈与となります。そのような贈与契約書を作っていなければ、全額課税されるなんてことはありません(今までこのような贈与契約書を作っている方は見かけたこともありませんし、連年贈与を行っている方が税務調査で、全額課税になるのではというようなことを税務職員が指摘しているのを私自身も、他の税理士からも聞いたことはありません)。

 

では、なぜこのような連年贈与についての勘違いが生まれたのでしょうか? 私の考えでは、国税庁の贈与の質疑応答事例がホームページ(http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402_qa.htm)にあり、そこを見た方が少し勘違いして紹介されたのが原因ではないかと考えています。

 

HPには次のように記載されています。

【質問】“親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。”

 

【回答】”定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。”

 

“毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。”

ここからも分かるように、贈与契約書という形で贈与契約が(定期贈与として)客観的に成立していなければ、連年贈与という言いがかりだけで課税されることはありませんので心配は無用です

 

連年贈与を行うにあたって、毎年同じ日に、同じ金額を贈与するのではなく、金額を変えたり、日にちを変えたりしたほうがいいですか?という質問をよくいただきます。

 

その都度ごとの贈与を行う際に毎回贈与契約書を作っていれば、毎年同じ時期、同じ金額でも全く問題ありません。

 

連年贈与と定期贈与をよく理解していないまま無用な不安を煽られないように注意し、贈与を行う際には、銀行間取引を行った記録を残すだけでなく、書面として残しておくことで万全の準備を行っておきましょう(定期贈与とみなされないために)。

 

税理士法人ブライト相続 税理士・公認会計士

東京都国立市出身。2006年、監査法人トーマツ入社。上場企業の財務諸表監査、内部統制監査、上場支援、M&Aアドバイザリー業務等に従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件以上の相続税申告、生前の相続対策、事業承継対策、家族信託・遺言作成コンサルティングなどの資産税業務に従事。2019年に税理士法人ブライト相続を開業。

著者紹介

税理士法人ブライト相続 税理士

東京都江東区出身。2004年、金井公認会計士事務所入所。中小企業者の法人税、所得税及び消費税申告業務を中心に、資産税業務、月次経理業務、給与計算業務その他幅広く従事。2012年、税理士法人レガシィ入社。200件超の相続税申告、相続税還付、遺言その他相続対策コンサルティング業務、相続セミナー講師、税制改正プロジェクト等に幅広く従事した後、2019年税理士法人ブライト相続開業。

著者紹介

連載相続専門税理士が教える!今すぐできる相続税対策~「生前贈与」の安全な進め方

本連載は、「贈与のススメ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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