「西高東低」だった東京の不動産に変化が
東京は不動産投資をする人、特にこれから不動産投資を始めようという人にとって、投資対象として、とても重要なエリアです。もちろん全国的に視野を広げても、外国人観光客が増加している地域や、その地域内で人口集約が進んでいる地域など、投資対象として有望なエリアは東京以外にも存在します。しかし、そういったエリアでの不動産投資は、地元のことを知り尽くしている人でない限り難しく、初心者向きではありません。
その一方で、東京は全国からの人口流入が続いており、賃貸需要も旺盛で、その上、東京の不動産会社が、積極的に情報発信しているので、不動産投資初心者の方でも取り組みやすいといえます。そこで今回は、最近の東京の不動産動向と、行政による都市計画の方向性から、今後の不動産投資で成功するためのポイントについて考えていきましょう。
東京の住宅市場や賃貸不動産市場は、西高東低と呼ばれていました。西高東低は冬型の気圧配置に関する天候用語ですが、東京では世田谷区や杉並区、また武蔵野市など西部が、江東区や江戸川区、墨田区など東部に比べて、不動産価格や家賃が高い傾向にあったため、その状況をもじっていわれるようになった言葉です。関東大震災以後の都市計画や戦後の住宅政策で、東京西部の郊外が住宅地として重要視された影響で、このような状況が生まれ、近年までその状態が続いていました。
しかし、東京の中心といえば、丸の内や大手町などのビジネス街と、永田町や霞が関など政治と行政の中枢を揃える千代田区ですが、東京23区の東部は、千代田区などへのアクセスも悪くなく、むしろ地理的には利便性の高いエリアです。そうした利便性やポテンシャルが評価され、この10年は東側の開発が進み、東京の西部から東部へ、人口が移動しています。
念のためですが、決してこれは、西部が廃れていくという意味ではありません。ただ、全国から人が集まり続けている東京において、人口増加を吸収するためにも、東部の開発が重要になっているということです。
少子高齢化とコンパクトシティ志向が与える影響
また、今後の不動産開発に対する行政の方針も押さえておきましょう。特に重要なポイントは、行政がコンパクトシティを志向するようになってきているということです。
コンパクトシティとは、高度成長時代のような郊外への都市拡大ではなく、都市中心部の効率化と活性化を図り、生活に必要な機能をあるエリアに集約させることです。人口が拡大し続けているような局面では、郊外への都市拡大に合理性がありました。しかし、現在のような人口減少局面においては、各種インフラを維持する負担が重く、居住空間を一定のエリアに収めて、インフラのコストを抑制したいのです。
このコンパクトシティという考え方に基づく街づくりは、世界では、オーストラリア・メルボルンやカナダのバンクーバー、アメリカのポートランドなどが有名ですが、日本では富山市が世界先進モデル都市に選出されています。計画では、LRT(=次世代型路面電車であるLight Rail Transit)などの公共交通を再整備し、駅前や中心街を再開発によって活性化しながら、散らばった居住エリアをゆるやかに中核拠点に寄せていくことを目指しています。
このコンパクトシティのコンセプトで東京を見てみると、千代田区、中央区、港区などの都心や、そこに近い範囲に集約されていく可能性が高いといえます。実際、子育てが終わった世代を中心に、郊外の庭付き一戸建て住宅から、都心の駅近マンションに引っ越す世帯が増えてきており、今後の重要なトレンドになるでしょう。
「リノベーション」や「リフォーム」が不動産投資の鍵
しかしながら、都心に近い物件を探そうとしても、そういったエリアの物件は、価格が高かったり、利回りが低かったりと、初心者には難しい投資になる場合が少なくありません。
そのため、都心に近いけれども、これまで不人気で、まだ割安な物件が残っている東京の東部への投資が狙い目かもしれません。こうしたエリアは、下町と呼ばれる地域と重なるため、物件の種別も、新築にこだわるのではなく、築古で割安な物件を購入し、リフォームやリノベーションを行って、住宅そのものを生まれ変わらせて人気を高めるような手法が取られています。