各国で延びる「平均寿命」と「老後資金」の問題
日本社会は長期の経済停滞、少子高齢化など、さまざまな課題を抱えています。その一方で、日本人の平均寿命は延び続け、2019年7月に厚生労働省が発表したところによると、2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、ともに過去最高を更新しました。
寿命が延びれば延びるほど、生涯に必要な生活費も金額は増えますが、その分、リスクに直面する機会も増えるのです。人生100年時代ともいわれる今、「長生きのリスク」が金銭的な面で増加しています。だからこそ、人生の最期まで困らずに楽しく生活を続けるためには、綿密な資金計画が必要です。
世界の平均寿命を見てみると、女性の第一位は香港で87.56歳、続いて第二位が日本、男性の第一位も香港で82.17歳、続いてスイスの81.4歳、日本は第三位でした。世界的に見ても、日本は長寿国といえます。今後、医療技術の進歩によって、がんや心疾患、脳血管疾患などの死亡要因の多くを占める疾患の予防・治療の効果が上がれば、さらに寿命が延びるでしょう。
しかし、寿命が延びた場合、当然生涯の生活費は余計にかかることになります。高齢になっても働くのか、資産を運用するのか、それとも年金を含んだ公的扶助を受けるのか、何かしらの方法で、収入を得る必要があります。
生命保険文化センターが発表した平成28年度の生活保障に関する調査結果によれば、男女ペアの無職シニア世帯の生活には、最低でも月額22万円が必要とされ、ゆとりのある生活を望むのであれば、月額34万8,000円が必要とされています。寿命が延びた分だけ、この資金をどう確保するかが問題になるのです。寿命の延びと高齢者の老後資金の問題は多くの先進国が抱えており、これは世界的な問題ともいえます。
進行する超高齢化社会…年金は本当にもらえるのか?
多くの人にとって老後の生活費は、年金を基本に考えることになります。ともすると、本当に年金はもらえるのか、もらえるとしてもいくらになるのかという点が大事になってきます。
そもそも日本の年金制度は、20歳以上の国内居住者全員が加入する国民年金(基礎年金)と、会社などに勤務する人が加入する厚生年金の「2階建て」を基本としています。そして、国民年金は掛け金も受給額も定まっており、現在は月額1万6,340円を負担し、65歳から月額約6万5,000円を受け取る制度となっています。
一方、厚生年金は雇用主が半額負担しますが、月額給与の18.3%を定率で負担し、掛け金に応じた金額を65歳から受給します。その平均は15万円前後といわれており、個人事業主など国民年金のみの人の受給額は月額5万6,000円、厚生年金加入者は月額が合計14万7,000円です。
この年金制度が、そもそも破綻するのか否かということですが、年金制度は、それ自体の掛け金のほかに、国からの税金でも支えられており、超大規模な自然災害や戦争級の異常事態が生じて、日本そのものが滅ぶということにでもならない限り、完全に破綻する可能性は低いでしょう。
しかし、すでに年金の受給開始年齢は60歳から65歳に引き上げられており、今後もそういった受給開始年齢の引き上げや、受給額の減少などが起きないとは限りません。むしろ、景気が今よりも冷え込んだり、少子高齢化がさらに進んだりした場合は、そうなる可能性は高くなります。
「副業」や「投資」で収入を得ていくことが大切
厚生年金加入者の方の場合、年金受給額は本人が14万7,000円であり、専業主婦などの配偶者がいれば、その方は5万6,000円を受給できるので、世帯収入は20万3,000円となります。この場合、ある程度の生活は営めると思いますが、余裕のある生活とはいえません。夫婦共働きの場合は、月額29万4,000円の受給になりますが、現在の水準の受給額が、今後も維持されるとは限りません。
いずれにしても、年金は期待しつつ、余裕のある老後生活を営もうと思えば、副業や投資などによって、収入を得ることが大切になるでしょう。
その点から、不動産投資は資産形成のひとつの手段だといえます。ローンを組んで不動産を購入した場合、返済があるため、当初はそれほど多くの収入を得られませんが、ローン返済後は経費など差し引いた残りの家賃が、そのまま手元に入ります。管理や入居者との交渉ごとなども管理会社に一任できるため、代表的な不労所得といえる不動産投資は、長期化する老後生活の資金不足を補うための選択肢のひとつになるでしょう。
しかし投資というからには、リスクは付きものです。絶対に「資産形成ができます」といえるものではありません。どのようなリスクがあるのか、しっかりと把握し、自身がそのリスクを許容できるか否か、きちんと検討することが重要です。