米中制裁関税の報復合戦における市場の注目点

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米中貿易戦争は報復の連鎖に終わりが見えない展開となっています。米国が8月月初に発表した対中制裁関税(第4弾)に対し中国が報復、この直後に米国が従来公表してきた関税税率を引き上げる形でさらなる制裁関税を課しました。当然ながら市場は事態の悪化を反映した動きとなっていますが、一部に冷静さも見られます。

米中貿易戦争:緊張悪化、米中双方が追加関税に対する報復措置を発表

米中両国政府は2019年8月23日、追加関税を発表する展開となりました。中国国務院(政府)は米国が9月から発動する予定の対中制裁関税「第4弾」への報復措置として、米国の主要輸出商品である大豆などの農産物や原油など約750億ドル分への5~10%の追加関税を公表しました。

 

中国の発表に米国は即座に反応しました。米通商代表部(USTR)は中国の輸入品約2500億ドル(第1~3弾)の税率を10月1日に25%から30%に引き上げると発表しました。

 

また、9月と12月に分けた第4弾の関税税率を当初予定の10%から、共に15%に引き上げると発表しました。

どこに注目すべきか:報復措置、制裁関税、人民元安、中国副首相

米中貿易戦争は報復の連鎖に終わりが見えない展開となっています。米国が8月月初に発表した対中制裁関税(第4弾)に対し中国が報復、この直後に米国が従来公表してきた関税税率を引き上げる形でさらなる制裁関税を課しました。当然ながら市場は事態の悪化を反映した動きとなっていますが、一部に冷静さも見られます。

 

まず、為替市場を見ると、人民元安が進行しました。特に、取引の柔軟性が高いオフショアの人民元は、1ドル=7.2人民元に迫る人民元安が見られました(図表1参照)。

 

日次、期間:2018年8月27日~2019年8月26日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国人民元と日本円(対ドル)レートの推移 日次、期間:2018年8月27日~2019年8月26日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

 

反対に、リスク回避局面で買われる傾向がある日本円は円高が進行しました。改善が見られない米中通商交渉に比べ、日米通商交渉は、日本車への関税は現状維持(2.5%)にとどまる見込みです。懸念されていた数量規制も回避の運びで、円売り材料に乏しい(皮肉な)結果となっています。

 

なお、中央銀行である中国人民銀行は26日、人民元の中心レートを予想より高め(人民元高方向)に設定しました。

 

 

真意は不明ですが、週末に米国との貿易摩擦が一段と激しくなった中、基準値を人民元安に設定すれば非難の応酬も想定されただけに、市場をやや落ち着かせたと見ています。

 

次に、株式市場を見ると、中国の報復措置と、トランプ大統領のツイッターによる対抗措置の警告(具体策は市場引け後)を受け米国株式市場は3%近く下落しました。円高が進行した日本株式市場も大幅に下落しました。

 

一方で、中国市場では、デモの影響が懸念される香港市場は3%前後と大幅な下落となったのに比べ、上海などの本土株式市場の下落は比較的小さくなっています(図表2参照)。中国の劉鶴副首相が、米中貿易戦争を巡る米国側のエスカレートに「断固反対する」と表明し、「冷静な態度で協議や協力を通じた問題解決の用意がある」とも説明したことが伝えられたことなどが市場に安心を与えた可能性はあります。

 

期間:2018年8月27日~2019年8月26日(日本時間正午)  出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国上海総合指数と香港ハンセン指数の推移 期間:2018年8月27日~2019年8月26日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、トランプ大統領は米企業に中国からの撤退を強制する権限(国際緊急経済権限法)まで示唆するなど、手法については報復の連鎖に終わりが見えない印象です。当面市場の高い変動が想定されると共に、今後の展開を占う上で、9月上旬といわれる米中協議は実施の有無を含め一層注目度の高いイベントとなっています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米中制裁関税の報復合戦における市場の注目点』を参照)。

 

 

(2019年8月26日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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